NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第4節(リーグ…
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第4節(リーグ戦)カンファレンスA
2026年1月10日(土)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 37-22 静岡ブルーレヴズ
避けてきた場所へ行く。その決断力と積み重ねが導いた逆転劇
埼玉パナソニックワイルドナイツの竹山晃暉選手。オフに徹底した自己分析を行った結果──
前半を終えて8対15。埼玉パナソニックワイルドナイツが今季初めてリードを許した状態でハーフタイムを迎える中、竹山晃暉は一つの決断を下していた。
「前半はチーム全体が受けに回っていました。どうすれば流れを変えられるか考えたんですが、考えているだけでは何も変わらない。だから後半は、まず自分が体を当てに行こうと決めました」
あえてタックルに出る。これまで距離を取ってきた局面へ、自ら足を踏み出す。その積み重ねが、受動的だったチームを動かし始めた。結果、チームは逆転勝利を手にすることができた。
今季の竹山を語る上で欠かせないのが、オフに行った徹底した自己分析だ。
「いまの自分に何ができて、何が足りないのかを考えました」
長く「トライを取ることが仕事」だと信じてきた。
「正直、"取れればいい"くらいの意識だったと思います」
だがその考え方を、自ら手放した。
自分の武器だけで勝負し続ける選択肢もあった。それでも竹山は変化を選んだ。
「リーグ全体のレベルが上がっている中で、それだけをやっていたら、今シーズンはグラウンドに立てていなかったと思います」
必要だったのは、得意分野の強化ではなく、避けてきたディフェンスに向き合う勇気だった。
今季、個人練習のほとんどをタックルに費やしている。「タックルしかしていない」と言い切るほどだ。狙うのは派手なドミネートではない。まず"そこに行く"こと。
「これまでは(タックルに)行かない選択をしてきた。だから今季は、行くことを選びたい。そうすれば『コウキを使いたい』と思ってもらえる選手になれると思っています」
変わったのはプレーだけではない。29歳となり、自然と周囲に目が向くようになった。ミスをした後輩には声を掛け、復帰戦だった山沢京平には「笑顔、笑顔」と茶々を入れ、場を和ませた。デビュー戦だった谷口宜顕にも、一人少ない状況を踏まえ助言を送り続けた。

埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢京平選手(左)と谷口宜顕選手
両ウイングにフルバック、さらにはスタンドオフまで。役割の幅を広げながら、竹山はチームに欠かせぬ存在として新たな光を放ち始めている。
「29歳にして、初めてラグビーをしている感覚があります」
竹山晃暉はこの日も、自分に最も厳しい選択を、迷わず選び取った。
(原田友莉子)
埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツの金沢篤ヘッドコーチ(左)、坂手淳史キャプテン
埼玉パナソニックワイルドナイツ
金沢篤ヘッドコーチ
「試合前、選手たちには毎試合伝えていることですが、『自分たちは試されることになる』という話をしました。まさにその言葉どおりの、非常にタフな展開だったと思います。
特に前半はミスも含めてさまざまなことが起こりましたが、控えのメンバーを含め、後半にしっかりとエナジーを持ち込んで挽回できたことは、勝利という結果以上に、大きな学びになったと感じています」
──佐藤健次選手がナンバーエイトに入り、李錦寿選手がウイングに回るなど、メンバー起用が難しい試合でもありました。強度の高いリーグになっていく中で、こうした試合は今後も続くと思いますが、事前の準備で意識していることや、交替カードを切る際に大切にしている点を教えてください。
「交替カードの切り方は、その時々の状況によるものなので、あらかじめ想定して対応しているわけではありません。一番のポイントは、選手がその瞬間だけでなく、シーズンをとおして自分たちのラグビーを理解できているかどうかです。
今日出場した佐藤健次や李錦寿は、自分たちのラグビーをしっかり理解しています。だからこそ、どのポジションに入っても同じように役割を果たすことができる。その点は、日頃からうまく準備ができている部分だと思います。今回についても、(本来のポジションではない役割を)事前に準備していたわけではありません」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「ヘッドコーチが話したとおりです。非常に難しい試合でしたが、こうした状況の中で、自分たちがどう立ち返っていくかを話し合い、試合の中で修正していくことは簡単なことではありません。それを実行できたことは、大きな自信につながりました。
チーム内のコミュニケーションも密になってきており、バラバラにならずに戦えたこと、一人ひとりが個人プレーに走らなかったことは、自分たちにとって大きな学びであり、良かった点だと思います。今後もシーズンをとおして、こうした難しい試合や時間帯は必ずあります。この経験をチーム全体で理解し、共有しながら、前に進んでいきたいです」
──前半はミスから失点する場面もありましたが、どのような話し合いをして改善したのでしょうか。
「前半も、肌感覚としては変なプレーが多かったわけではなく、ディフェンスは比較的良かったと思います。アタックも、良いところまではいけていました。ただ、そこでの大きなミスがペナルティにつながったり、スクラムで押されたりして、メンタルが試される時間帯が続きました。
その点については、必要以上に落ち込む必要はないと共有し、そこから自分たちがどういうプレー選択をしていくかを大切にしようと話しました。ディフェンスが良かったので、そこをベースに後半も入っていきました。後半の立ち上がりもペナルティが続く場面はありましたが、そこであらためてディフェンスに立ち返り、ボールを奪うことができましたし、そこから自分たちのアタックにつなげることもできました。その点は非常に良かったと思います。
スクラムについては、『ブルーレヴズさんのスクラムだな』という印象です。対応に少し時間が掛かりましたが、レフリーとコミュニケーションを取りながら、どこを狙っていくかを試合の中で修正することはできました。修正がやや遅れた部分はありましたが、その点については堀江(翔太)コーチとも試合後に話し、準備の段階からもう少し想定して取り組めたのではないかと感じています。今後につながる課題として、前向きに捉えています」
静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(左)、クワッガ・スミス キャプテン
静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「前半は、概ねプランどおりに進められた部分もありました。ただ、いくつかのミスでトライを取り切れなかったことや、中央からのゴールキックを外したことなど、細かなミスによって苦しい展開になったという印象です。
イエローカードが出るなど、さまざまな要素も重なりましたが、すぐに次の試合が控えています。しっかりと顔を上げて、次に向かっていきたいと考えています」
──前半には特徴的なラインアウトもありましたが、どのように埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)を崩そうとしていたのでしょうか。
「ラインアウト自体は、ある程度うまくいっていたと思います。ただ、それを十分に生かし切れなかった点が反省です。後半はメンバーの入れ替わりもあり、出てはいけない場面でイエローカードが出てしまいました。そうした小さなミスが、チーム全体のエネルギーを削いでしまったのかなと感じています。
前半は一定の手ごたえもありましたし、後半には(ヴァレンス・)テファレが良い走りを見せる場面もありました。そこでインパクトを与えたかったのですが、想定外のタイミングで負傷者が出て、キャプテンのクワッガ(・スミス)も交替せざるを得ない状況になりました。そうした点で、事前の計算とは違う形になってしまったことが痛かったと思います」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「今日は非常に残念で、悔しい結果になりました。前半はテクニックの部分を含めて、自分たちのミスが出てしまいましたが、それでも選手たちが体を張って戦ってくれたことについては、誇りに思っています。
後半は、自分たちのミスからボールを失いました。埼玉WKさんのような良いチームに対してそうしたミスをすると、失点につながってしまいます。そういう意味では、今日は自分たちのほうにミスが多かった試合だったと思います。
ただ、シーズンはまだ続きます。これからに向けて、しっかりとチームを立て直していきたいです」
──埼玉WKの直近3試合分の失点に相当する22得点を奪いましたが、一方で前半からゲインラインを越えられない場面もありました。相手のディフェンスに苦しめられた部分はありましたか。
「埼玉WKさんは非常にディフェンスの強いチームで、自分たちの勢いを止められた部分はあったと思います。後半は自分たちのミスでボールを相手に渡してしまい、アタックのチャンスを作ることができませんでした。
これからは"試合に勝つ"という点を、より強く意識していくことが大切だと思います。この試合にはポジティブな部分もありましたので、得た学びを、次のゲームにしっかり生かしていきたいです」