武雄競輪場(佐賀県武雄市)のバンクのスタート位置に自転車をセットすると、屈伸し、車体にまたがった。「コーゾー」というか…
武雄競輪場(佐賀県武雄市)のバンクのスタート位置に自転車をセットすると、屈伸し、車体にまたがった。「コーゾー」というかけ声がいくつも飛ぶ。佐々木浩三さんはハンドルをしっかり握り、号砲を待った。
昨年12月28日午前、競輪選手で現役最年長となる63歳の佐々木さんにとって、このレースが通算3753レース目。引退が決まり、これがラストランとなる。
武雄市出身で、両親も、二人の兄も競輪選手という一家で育った。高校時代は、佐賀市の龍谷高校への通学も往復約70キロの道のりを自転車に乗るなど練習に明け暮れたという。兄が競輪で活躍する姿を見て、「自分もがんばりたい」と高校卒業後にこの道を進んだ。
1982年にデビュー。優勝回数は29回で、そのうち3度はGIIIで優勝を果たした。
「負けたくない」という気持ちを力にし、「他人より練習した方が強くなれる」と年を重ねても練習に励んだ。
迎えた最後のレース。「自分なりに一生懸命走りたい」との思いを胸に佐々木さんはスタートを切った。7人の選手の中には40歳以上年が離れた選手もいる。弟子の選手もともに走った。
ラストランを見届けに来てくれた人たちのことを思うと、どうしても1着を取りたかった。懸命にペダルをこいで前の選手を追い上げ、最後は横一線でゴール。1/4車輪差の2着でのフィニッシュとなった。
レース後には、引退セレモニーがあり、ファンに向け、「43年と2カ月走れたのも皆さんのおかげ。最年長レーサーとして走れたことが自分の自慢です。またゆっくり休んで第二の人生もがんばりたい」とあいさつした。
報道陣の取材にも応じた佐々木さん。「まだやりたかったなという気持ちが強いけど、体もいろんなところが痛くなって、なかなか1着を取れなくなったので、この辺が限界かなという気持ちもある」と心境を述べた。
「自転車が好きで、競輪が好きだったから今までできた」。時折声を詰まらせながら、競技人生を振り返り、「楽しかったけど、やっぱり苦しかった」と語った。(岡田将平)