ルーキーで唯一規定投球回に到達したオリックス山岡 今季24試合に登板、8勝11敗、防御率3.74の成績を残し、新人で唯一規定投球回に到達したオリックスのドラフト1位ルーキー山岡泰輔投手。広島・瀬戸内高、東京ガスを経てプロ入りした右腕は「社会…

ルーキーで唯一規定投球回に到達したオリックス山岡

 今季24試合に登板、8勝11敗、防御率3.74の成績を残し、新人で唯一規定投球回に到達したオリックスのドラフト1位ルーキー山岡泰輔投手。広島・瀬戸内高、東京ガスを経てプロ入りした右腕は「社会人ナンバーワン投手」との期待を寄せられる中、即戦力として先発ローテを守り続けた。1年目の戦いを経験し、どのような収穫や課題を手にしたのか。右腕に話を聞いた。

 開幕からローテーション入りしたものの、プロ初勝利は7登板目の5月28日の敵地ロッテ戦と、なかなか勝ちに恵まれなった。それでも8勝を挙げ、シーズン前に掲げた7勝という目標をクリアした。

「7」という数字は、1年間怪我をせずローテーションを守り抜いた上でいいピッチングができ、さらに打線の援護に恵まれた場合に達成できる数字として思い描いたのだという。達成できそうな現実的な数字を目標に据えた裏には理由がある。ハードルを高く設定しすぎてシーズン中に到達が難しくなってしまった場合、精神面に影響をきたす可能性があると考えたからだ。

「10勝の目標を掲げていて、残り3試合しか投げられないのに5勝しかしていなかったら、もう無理じゃないですか。数字で『だめ』ってなったら、人は諦める。8勝できたかもしれないのに、5勝で止まってしまうかもしれない。勝ちたい思いは当然あるけど、目標にするには、現状では7勝だと思っていました」

欲しいものは「最多勝」、「リーグで1番多い数を勝ちたい」

 結果、新人王の目安にもなる2桁10勝まであと2勝にまで迫ったが、ルーキーが10勝することは難しいと考えていた。「ルーキーで、何もわからない状態で10個も勝つなんて無理だと思います。チームの柱で、一流選手でも2桁勝利は難しい。それが新人にできるわけがないと思います」。

 また西武・源田壮亮内野手との争いが注目された新人王にも特別な意識はなかったと振り返る。「新人王は人が決めるもの。それに、枠が決められている。その枠には興味がありません。それよりも最多勝が欲しいです。リーグで1番多い数を勝ちたいですね。リーグで1番は嬉しいです」。

 そう熱っぽく語るルーキーは、自身が野球を続けてきた“原動力”について明かしてくれた。それは「楽しさ」だ。

 子供の頃は野球以外にもサッカーや水泳、また、母親の影響でバドミントンも経験したという。それらのスポーツの中で一番上手くできたのが野球だった。以降、「人に勝てると楽しい」という理由で野球を続けてきた。

 東京ガス入社2年目からエースとして活躍した社会人時代は「早くプロに行きたい」と思ったことはない。楽しければ、社会人野球でも、草野球でもいいと思っていたからだ。プロへ進もうと思ったのは「いいバッターと対戦したかったから」。すべては「楽しさ」が基準だった。

辛い練習や自身の課題を「楽しい」に変えてしまう22歳

 そして今は来季に向けて見つかった課題を埋めて行く作業に楽しさを感じているのだという。プロ1年目で7勝という目標はクリアしたものの、チームは優勝を逃し、自身も負けが先行。150イニング登板という目標も達成できなかった。だから、今季の成績には満足していない。

「今シーズン、自分が思っていたより疲れました。もうちょっと体力がいるのか、それとも動く量を減らすのか、投げる球数を減らすのか。考えながら練習をするのが楽しいです」

 来シーズンの目標は今年以上の成績。2桁10勝とチームの優勝だ。

「やっぱり優勝したいですね。甲子園を決めた高校3年の夏しか優勝の経験がないんです。あの時、あんなにうれしかったんだから、プロの一流の選手の中で優勝したら、もっと楽しいだろうなと思います」

 172センチとプロ野球選手としては小柄だが、特に苦にしている様子を見せない。むしろ、その体をいかに万全な状態に保つかを意識しているという。「怪我をして痛い状態で投げるのが一番楽しくない。思うように投げられないと、楽しくないじゃないですか」。山岡にとっては、ここでも「楽しさ」がキーワードだ。

 辛い練習や自身の課題、それら全てを「楽しい」に変えてしまう22歳の右腕。日本一という最高の「楽しい」を経験するため、さらなる成長を目指していく。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)