本拠地ベルーナドームのセンター深めを守る西武の柘植世那捕手(28)が「うわぁ~」と頭を抱えた。わずかな時間差で高めの飛球…

本拠地ベルーナドームのセンター深めを守る西武の柘植世那捕手(28)が「うわぁ~」と頭を抱えた。

わずかな時間差で高めの飛球と、低いライナー性が重なって、柘植をはさむように落下した。

打ったのは通算481本塁打の中村剛也内野手(42)ともう1人、育成の是沢涼輔捕手(25)だ。

もちろん打球への出力の違いこそあるが、是沢の飛距離が明らかに伸びた。「この前、中村さんに力の方向のアドバイスをいただいて…」。12月初旬にはセンターフェンスまで2~3バウンド必要だったのに、最近は1バウンドでエンタイトルになることも。

年明け5日に球場開き。そこから5日間連続で朝9時から練習する。育成契約4年目。1人暮らしを始めても寮で朝食→風呂→ウエートをこなし、9時にはグラウンドにいる。たいてい一番乗り。静寂の中で体を動かし始める。

うま年と自身の名字を絡めて「無事是沢名馬」とケガ防止を誓った。5日間も朝から動き、休まないだろうか。「僕は突っ走って、力尽きたら休むようにしてます」とイノシシ気質。「今日はとりあえず午後、休みます」と添えた。

運動成果の効率化も狙い、球団は短時間の昼寝(パワーナップ)を推奨している。前日8日も昼食後、仮眠を取っていた。起きたらビックリ。

「まさに寝耳に水でした。『ええっ!?』って」

チームメートの古市尊捕手(23)がFAの人的補償でDeNAに移籍することが発表されていた。「選ばれた古市、すごいなと思いました。ライバルではあったんですけど、すごいなと思いました」。

目覚めて頭をクリアにしていく。冷静に事象を考える。支配下選手枠が1減、同じ捕手が1減。

「特大のチャンスだなと。巡ってきているものだとは思いました」

そして。

「ここでダメだったら絶対に次の人に(チャンスが)回っていく」

高校でも大学でも控えだった是沢は、育成3年間で球団がその成長ぶりを認めるまでになった。強肩、捕球能力、投手との信頼関係…などなど。

ただ支配下登録の決定は甘くない。誰よりも練習しているだけでは1軍でのプレーは許されない。

課題も含め、球団も首脳陣も是沢の「これまで」は知っている。この先、どうアピールすれば、育成選手は次へ行けるのか。

「全体練習をパッとみた時に、首脳陣の方々はたぶん、レギュラー候補の動きを見るじゃないですか。実績ない人は最初は観察されないと思うので。『おっ』とプレーや動きや姿勢で目に留まらないと、構想にも入らないと思うので」

再現度を高めようと練習を重ねる。いつでも元気よく動けるように、毎日元気よく動く。その頑健さで夢をつかめるか。

だから休むのもそんなに好きじゃない。「休んだ次の日、自分、けっこうパフォーマンスが良くないので」。結局動くし、ベッド上にいるならばだいたい野球動画かデータを眺める。

プロ野球選手の、特に育成選手に与えられた時間は短い。寮で昼食をとって午後1時前。「また練習行ってきます」。荷物整理に来た後輩古市の練習パートナーをしに、ベルーナドームへ向かった。【金子真仁】