プレミアリーグ第21節。10位のブライトンは、アーセナルに次いで2位につけるマンチェスター・シティとアウェーの地で対戦…
プレミアリーグ第21節。10位のブライトンは、アーセナルに次いで2位につけるマンチェスター・シティとアウェーの地で対戦した。三笘薫にとっては復帰後、5戦目にあたる試合である。前戦バーンリー戦に続く先発出場だった。
試合は立ち上がりこそブライトンにチャンスは巡ってきたが、その後はマンチェスター・シティが一方的にボールを支配するワンサイドゲームとなった。0-0で推移している間は、マンチェスター・シティが攻めあぐんでいるように見えなくもなかったが、前半41分、アーリング・ハーランド(ノルウェー代表)のPKで先制すると、点差は時間の経過とともに開いていくものと思われた。
三笘のプレーもサッパリだった。相手と1対1になってもファーストタッチが大きくなったり、相手に囲まれるとミスパスをしたり。ボールが足につかないというか、試合に入りきれていないというか、後半14分まで、存在感は極めて薄かった。何度となくドリブルで縦突破を狙ったマンチェスター・シティの左ウイング、ジェレミー・ドク(ベルギー代表)と比べると、著しい差に見えた。
故障明けということもあり、三笘の出場時間は限られている。前戦が後半24分までの出場だったことを踏まえると、ベンチに下がる瞬間が迫っているかに見えた。
まさしく青天の霹靂だった。突如、覚醒したかのような出来事だった。
マンチェスター・シティ戦で貴重な同点ゴールを決めた三笘薫(ブライトン) photo by REX/AFLO
後半15分、右SBジャック・ヒンシェルウッド(U-21イングランド代表)のスローイン。右ウイング、フェルディ・カディオグル(トルコ代表)とのパス交換から、ボールは1トップのジョルジニオ・ルター(元U-21フランス代表)、守備的MFヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)を経て、逆サイドで構える三笘に送られた。
相手の右SBマテウス・ヌネス(ポルトガル代表)と対峙することになった三笘。その瞬間、選択肢は大きく分けてふたつあった。縦か内か。右サイドからの大きな展開だったので、マンチェスター・シティの中央の守備は整っていなかった。三笘は真ん中が手薄と見るや、ボールをずらすようにカットイン。シュートコースを模索しながらボールを操作した。
【精神的なノリを回復】
カバーに来たMFニコ・ゴンサレス(元U-21スペイン代表)が両足を広げた瞬間だった。三笘はインサイドでその股の間を通すように振り抜くと、ボールは弧を描きながらマンチェスター・シティのゴール右隅に吸い込まれていった。
冷酷な殺し屋を連想させる血の気の引くような一刺しだった。名GKジャンルイジ・ドンナルンマ(イタリア代表)の指先をスパッと突くコントロールショットに、相手のホームスタジアムは沈黙した。
直前まではまったく期待を抱けなかったプレーだった。長い眠りから覚めるような、復活を告げる一撃でもあった。
見せ場はその10分後にもう一度訪れた。GKバート・フェルブルッヘン(オランダ代表)のロングフィードを、相手の右SBヌネスとタッチライン際で競り合ってものにした三笘は縦方向に進出した。折り返してもよし、シュートを狙ってもよしというビッグチャンスである。
三笘はお人好しのキャラを全開にパスを選択。中央を走ったディエゴ・ゴメス(パラグアイ代表)に丁寧に折り返した。ところがタイミングはわずかに合わない。こぼれたボールに三笘は反応するも、ゴールポストに弾かれ、逆転弾を枠内に押し込むことができなかった。
同点弾に続き逆転弾を決めればヒーローである。オレオレ系の選手でなくても狙いたくなる絶好のチャンスであるにもかかわらず、三笘はパスを選択。自分のキャラに従順なプレーをした。精神的に乗れている証拠だと見た。
サッカーは精神的なノリが不可欠なスポーツだ。100の力を持っていても、ノリが悪ければ80しか力を発揮することができない。だがノリがあれば100以上の力が出ることもある。
三笘のプレーは今季、ケガをする前から100以下だった。精神的なノリに欠けるプレーに終始していたが、この逆転弾を逃すシーンを見る限り、そのノリは回復したように見える。キャラを全開に、自分で打てるにもかかわらずパスを出す姿に、回復ぶりをうかがい知ることができた。
この日のピッチ上には各国の代表選手の姿が多数、目に留まった。日本がワールドカップ本番で初戦を戦うオランダ代表選手もいれば、32強のトーナメントで戦うかもしれないノルウェー代表選手もいた。イングランド、スペイン、ポルトガル、フランスなど優勝候補に挙げられている代表チームの選手もいた。ワールドカップ本大会を連想させる一戦でもあった。そこで三笘は覚醒し、後半の途中からノリノリのプレーを披露した。
日本代表にとって明るいニュースであることは言うまでもない。