【青学大の戦術はわかっていたのに......】 優勝候補だった駒澤大が、まさかの6位で終わった第102回箱根駅伝。11月…

【青学大の戦術はわかっていたのに......】

 優勝候補だった駒澤大が、まさかの6位で終わった第102回箱根駅伝。11月の全日本大学駅伝では、戦略的な区間配置で想定どおりの勝利を納め、藤田敦史監督は「この区間配置ができたのは選手層が厚くなったから」と箱根制覇へ向けての意欲を口にしていた。

 好調だった全日本以降、いったい何が起きていたのか――。


10区で区間新の走りをした佐藤圭汰(右)をゴール後、支える主将・山川拓馬(左)

 photo by Kishimoto Tsutomu

 勝機を逃した要因のひとつは、強力な武器になると自信を持っていた主力選手、4年生4名+2年生2名のうち、3名の体調が万全ではなかったことだ。

 佐藤圭汰(4年)は1カ月前に左大腿部の疲労骨折が判明して練習を1週間休み、2週間の急仕上げで間に合わせたという状態。夏場からチームを牽引し続けていた主将の山川拓馬(4年)も12月に入ってから、ぎっくり腰を発症。藤田監督が来季エースのひとりとして期待する谷中晴(2年)も、背中と腰の状態がよくなく万全ではなかった。

 藤田監督は「(そんな状況)だから12月10日のトークバトルはきつかったですね。あの時はもうダメかもというのはわかっていたので、『これ(トークバトルで話した内容)はどうなるんだろう』という感じでした」と苦笑する。

 今回の箱根に向けて、学生長距離界のエースのひとりでもある青山学院大・黒田朝日(4年)の起用法について藤田監督は、「5区に来るのが他大学にとっては一番嫌だと思います。2区を1時間5分で走っても他大学とは1分差しか付けられないけれど、5区になると、どれだけ差をつけられるかわからない」と話していた。

 青山学院大も前回は、黒田のほかに4区の太田蒼生(現GMO)や5区の若林宏樹、6区の野村昭夢(現・住友電工)と確実に走れる選手がいて、その3人でライバル校から2分以上のアドバンテージは確実に奪えるという計算が立っていた。だが、黒田だけになった今回は2区で使うより、5区で使うほうが大きなアドバンテージを得られると計算するはずと、黒田の5区起用を想定していたのだ。

 それもあって藤田監督は、当初から「5区には山川を起用してしのぐしかない」と考えていたと言う。

「1区の小山翔也(3年)は全日本で1区を走ったあとから使うことを決めて、その準備をさせていました。それに伊藤蒼唯(4年)も本人が区間記録を狙いたいというので、6区の起用を決めていた。だから2区は谷中か佐藤。その2枚を2区と3区に並べ、場合によったら帰山侑大(4年)を4区にして主力6枚を6区まで並べる構想もありました。黒田君の使い方も読めていただけに、なおさら悔しかったです」

 区間エントリーで佐藤と山川、谷中を補欠に回していたのも、ギリギリまで状態を見極めたいという思いがあったからだ。だが、「往路をしのぐなら、体が万全でない限り、今の高速化のレースは耐えられない。だからそこはかなり考えました。でも、復路であれば自分のペースである程度いけるので、そっちのほうがまだいいのではないか、という考えでの配置になった」という。

 大八木弘明総監督も、12月のチーム状況をこう振り返る。

「やっぱり、山川と圭汰は外せなかったですね。ただ圭汰に関しては、能力が高いし、自分が見ていた(指導していた)ので、最終的な状態を見て『まあ走れるだろう』とは思っていました。チームとしては、12月の後半にかけては誰をどこに当てはめるかをパズルのように考えていて。どの選手を外して、誰をどこに持っていくのか。練習の出来具合を見て『この状態ならどの区間がいいか』というのも考えなければいけなかったので、藤田監督は本当に大変だったと思います」

【4区で予想外の失速】

 2区は帰山か、谷中とともに来季エースと期待する桑田駿介(2年)にするかを直前まで様子を見て、最終的に2区は桑田で3区は帰山に決定。4区と5区には本来なら復路と決めていた村上響(3年)と安原海晴(3年)を起用する形になった。

 そのなかで、1区の小山は区間1位の國學院大・青木瑠郁(4年)に20秒差の区間5位と役割を十分に果たし、2区の桑田も区間8位ながら田澤廉(現・トヨタ自動車)が出した駒大記録に6秒遅れるだけの1時間06分19秒で走り、順位を4位に上げて流れを作った。さらに3区の帰山も、1時間00分51秒の区間2位の走りで3位に順位を上げると、上位で行く流れは出来ていた。藤田監督もこう振り返る。

「3区までは、みんなしっかり走ってうまく流れを作ってくれましたね。特に3区の帰山は最初の5kmを13分35秒で突っ込んで、途中の12kmの浜須賀交差点あたりでは1kmが3分05秒くらいまで落ちたので『もうダメかな』と思ったところ最後まで持ち応えて60分台でつないだのは本当に立派でした」

 だが、そのいい流れは4区で途絶えてしまった。村上がまさかの区間19位とブレーキになったのだ。

「村上ともちゃんと(レース展開の)すり合わせをしていて、10kmまでは一定のペースで行って、そこから上げる。そのあたりからは早稲田大や國學院大が来るから、それに乗ってラスト5kmからの上りで勝負という話をしていました。

 でも、早稲田大の鈴木琉胤(1年)君が来た時に『つけよ』と言っても全然つかないし、國學院大が来てもつかない。それまで2分55秒で行っていたペースも3分10秒くらいかかり始めたので『これは絶対に何かあったな』と思いました。8kmから足が痛くなっていたということで、このアクシデントは痛かったですね」

 そのケガがなければ、村上もあと2分はよかったはずだと藤田監督は言う。

「ただ、区間配置でベストオーダーが組めなかったという時点で負けていました。実際にうちは、4区と5区で青学大に7分負けていたから、それではさすがに無理でした」

【来季エースの成長に期待】

 翌日の往路は、7位スタートから6区の伊藤で6位に順位を上げたが、7区起用の谷中で7位に落ちると、8区起用の山川、そして9区の菅谷希弥(2年)もレースの流れを変えるまでの走りはできなかった。最終10区の佐藤が区間新での区間賞獲得と意地を見せたものの、総合6位という結果で終わった。

「この状況でも3位に入りたかったなとは思いますね。やっぱり3位に入っておけば、来年にもつながるかなというところはあったんですけど、なかなか厳しかった」

 強力な4年生4人が抜ける次のシーズンは「育成しなければいけない1年間になるので、それが大変。新4年生がしっかりしているので、彼らがチームを整えてくれるという感じになると思います」と藤田監督は話す。

 そのなかで、エースとして柱にならなければいけないのは谷中と桑田だ。大八木総監督も来季エースのふたりについてはこう見ている。

「彼らがどこまで『自分たちがやらなければいけない。エースになるんだ』と思ってやれるかですね。今回、桑田が2区を走れたのは大きいし、どこでも走れるくらいまで成長したと思う。谷中にも『来季エースにならなければいけない人間だから、自分の体は自分でしっかり把握し、もっといろんな意見も言いながら自分を高め合っていかなければいけない』と話しました」

 また、桑田自身も「今回は藤田監督に『自信を持って配置した』と言われ、今まで裏切っていた期待に応えなければいけないという思いで走りました。故障者がいなかったら自分が2区を走ることはなかったと思うけど、巡ってきたチャンスのひとつを成功につなげられたのはよかった。ずっと練習自体はできていたのに、結果がついてこなかったなかで、今回はやっと結果を残せました。今後は安定した結果を求めてチームを走りで引っ張れるようになりたいし、留学生とも区間賞争いができるくらいまで、ならないといけないと思います」と意識を高めている。

 駒大復活は来季エース候補のふたりが、今回の悔しい結果を糧にどこまで成長出来るかにかかっている。