失った「体幹主導」…前ロッテコーチ・大塚明氏が過ごした苦悩の日々 野球を始めた頃は、自然と体幹を使って手足を動かせる能力…

失った「体幹主導」…前ロッテコーチ・大塚明氏が過ごした苦悩の日々

 野球を始めた頃は、自然と体幹を使って手足を動かせる能力を誰もが持っているという。ところが、野球を続けていく中で、体の成長とともに多くの選手が失い、取り戻すのに苦労するそうだ。ロッテで現役生活17年間を含む32年間を過ごした前コーチの大塚明氏は、そのメカニズムを解明しようと“苦悩の日々”を送ってきた。

「僕も同じく、その能力を失って育ってきました。プロに入ってくる選手はフィジカルの能力が高い。でも、プロに入ってから、その能力を取り戻すために悩んでいます。一流選手は最初の能力を失わずにやってきて、フィジカル面と両立して花開くんです」

 子どもの頃は無意識に体幹を使ってプレーできる。しかし、フィジカル面が発達するにつれて手足の力が強くなり、腕力や脚力を優先した強引な動きが出てしまうケースが増える。そこに新たな思考力が加わることで、さらに心と体の反応が一致しなくなるのである。

 これは、生まれたばかりの赤ちゃんが、社会での生存と発達のために欠かせない能力として持っている神経反応の「原始反射」の仕組みと似ている。体に刺激を受けた際に無意識に反応する「原始反射」も、神経系の発達とともに徐々に消失していくものである。

 大塚氏は現役時代もコーチ時代も「体幹主導」の動きを意識してきた。スローイングも打撃も、背骨を中心に右と左に体を振るように動かしながら、そこに手の動きを加える。「回転するのではなく、左右が入れ替わるイメージ」と言い、アスリートにとって全ての動きが体幹主導であるべきだという。

社会人→大学→高校と段階を追ってチェック…小中学生の動きを注視

 そんな中で、失われた能力を取り戻そうともがき続けた。「現役時代は最初の10年は悩みましたね。今も多くのプロ野球選手が悩んでいます」。そして、そのメカニズムに興味を抱いたという。「どのくらいの年齢で、どんな理由で忘れていってしまうのか。それが分かれば取り戻せるかもしれないと考えました」。

 限られた時間の中で、シーズンオフなどに機会を見つけて社会人野球や大学野球、高校野球と上の世代から段階を追って選手の動きをチェック。野球教室などで小中学生を指導する際にも、体幹を自然に使ってプレーできているかに注視した時期があった。

 野球に限らず、スポーツ界には体の動きやバランスの取り方をタイプ別に分けて考える指導法もある。重心が内側なのか外側なのか、かかとなのかつま先なのかなどに分け、それに合わせた強化方法を見つけていくのである。これは体幹主導の動きを意識する中で、リンクする部分があった。

 さまざまな指導法を学びながら試行錯誤を繰り返した日々。無意識に体幹を使って手足を動かせる能力がどの時期に、どんな理由で失われているのかは、まだ答えが見つかっていない。

「これからの1年は、いろいろ勉強の年です」。32年間、着続けたロッテのユニホームを脱いだ今オフ。女子野球を含め、さまざまな世代のプレーに目を光らせていく。特に小中学生には、少しでも体幹を意識してプレーを続けてほしい考えである。(尾辻剛 / Go Otsuji)