復活Vで流した涙の裏に何があったのか。畑岡奈紗は昨年11月、日本開催の「TOTOジャパンクラシック」で3年半ぶりのツア…

畑岡奈紗が2025年に大活躍した日本勢の後輩選手について語る

復活Vで流した涙の裏に何があったのか。畑岡奈紗は昨年11月、日本開催の「TOTOジャパンクラシック」で3年半ぶりのツアー通算7勝目を飾った。歓喜へと至る過程で乗り越えたのは、ボロボロだったルーキーイヤーに迫るほどの苦悩。日本勢の後輩たちがメジャータイトルを次々につかんでいく葛藤すら力に変えて挑む米ツアー10年目の覚悟に単独インタビューで迫った。<全2回の後編>

【前編】「手が動かない」9年目の試練とキャリアハイ

メンタルコーチに「どうやって勝てば…」

手応えを感じた「全英女子」だが、結果は“完敗”だった

ショートパットで“手が動かなくなる”症状に悩まされてきたシーズンの流れが確かに上向く兆しを感じた8月のメジャー「AIG女子オープン(全英女子)」。ただ、通算2オーバー33位で戦い終えた直後の心は波立っていた。山下美夢有の優勝スコアが通算11アンダー。13打差の結果に衝撃を受けた。

「自分の調子が上がってきて、これだけ大差をつけられて、負けて…。ショックでした」。ありのままの気持ちをメンタルコーチに打ち明けた。「どうやって勝ったらいいか分からない」「これ以上、どうやって頑張ったらいいか分からない」――。フィールド唯一の2桁アンダーという数字にただただ圧倒され、冷静さを欠いていたのかもしれないと今なら思う。「スコアしか見ていなかったんです」

<全英女子>リーダーボード&ホールバイホール

発想の転換がゴルフを変えた

メンタルコーチに言われるがままバーディ数を比べてみると、チャンピオンの16バーディ(1イーグル、7ボギー)に対し、畑岡も16バーディ(14ボギー2ダブルボギー)。同じだった。「あの(難しい)環境で美夢有ちゃんはどうやって…と思ったんですけど、数えてみたら、私もバーディ数は優勝スコアに達していたんですよね。それなら今後の努力として、やっぱりボギーをなるべく打たないようなリカバリーショットとかを磨いていったらいいんじゃないかって。反省の仕方とか、次の目標設定の仕方を考え直すきっかけになりました」

全英女子の後、最初の試合だった「CPKC女子オープン」からラウンド中にバーディを数えてスコアカードに書き込むようになったのも、そんな意識の表れ。「ちっぽけなことかもしれないけど、それもいい方向に行ったのかな」。終盤戦で好成績を連発した裏には、取り入れた新たなルーティンもあった。

<2025年スタッツ分析>飛ばない山下美夢有はリカバリー率4位

アグレッシブな若手から気付き「幸せ」

間もなく27歳になる

山下に限らず、2025年は日本勢の後輩たちがツアーを席巻した。竹田麗央岩井千怜岩井明愛もルーキー優勝を遂げ、2年目の西郷真央はメジャー「シェブロン選手権」を制した。自らの悲願を若い選手たちが続々と達成していく姿に葛藤がなかったと言えばウソになる。

「もちろんすごく勇気をもらう部分もあるし、(結果として)ポンと勝って…という気持ちもある。でも、それも考え方ひとつじゃないですけど、そういう刺激をくれる存在がいるっていうのは本当に幸せだなって思います」

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力や技を備え、何より積極的な若手と競い合う

実際、アグレッシブな後輩たちのプレーを通して気付かされた部分がある。例えば、昨季で8年連続の常連選手となった最終戦「CMEグループ ツアー選手権」の1番ホール。池が絡む左ドッグレッグのパー5で、これまでは相棒キャディとともに「7番アイアンで2打目をレイアップ→3打目勝負」が鉄壁のマネジメントと信じて疑わなかった。ただ、飛距離も伸びてきた現状なら風向き次第で池越え2オン狙いのルートも“アリ”ではないのか。もう一度、自らの可能性に目を向けることができた。

よく知るコースで戦う試合が増えるほど、リスク管理は効率化していく。間違いなく経験を重ねてきたからこそのアドバンテージとなる部分だが、自分自身に問い直す。「あまりにもセーフティに、セーフティに…っていう風になっていたのかなって。経験を積んで良い方向に行く場合と、ちょっと悪い方向に行く場合がある。こういう(攻める)気持ちを忘れずにいたいなって思わされますし、そういうゴルフをしていかないと勝てないツアーだと思うので」

節目で悲願へ「ことしメジャーを獲ります」

最高の結果で恩返しを

「TOTOジャパンクラシック」での優勝をもって「完全復活」とは思っていない。「3日間の短縮競技になってしまったので。4日間、しっかり戦って勝ちたい」。序盤でそれを成し遂げ、通算40試合目のメジャーとなる4月「シェブロン選手権」を迎えられれば申し分ない。

岡本綾子が米国でシーズン10試合以上プレーしたのは12年間だった。宮里藍も米ツアー12年目の17年に引退した。いまはステージを移している宮里美香上原彩子が米国で戦ったのは9年間。ことし畑岡が刻む10年の節目は、歴代の日本人プレーヤーを振り返っても価値ある数字だ。

「これまでの9年間、メジャーの前は試合に出ずに練習したり、(逆に)去年はメジャーの前も結構試合に出たりとやってきた。これができない、あれができないって(ネガティブに)考えるより、『これだけやったんだから…』という気持ちで行くことが大事。ことしはスケジュールも踏まえて、うまく調整して、そこに向けた準備を頑張りたい」

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畑岡奈紗のメジャー全成績

間もなく27歳になるタイミングで、時間をかけてつかむビッグタイトルの重みに改めて思いを巡らせる。ひときわ記憶に残るのは、米ツアー2年目だった18年。「ANAインスピレーション(現シェブロン選手権)」を31歳で制したパニーラ・リンドベリ(スウェーデン)は、それをキャリア唯一の勝利として昨年10月「ロッテ選手権」で引退と第一子妊娠を発表した。「エビアン選手権」では40歳のアンジェラ・スタンフォードが76試合目のメジャーで初制覇を飾った。

「いろいろ経験して勝つメジャーっていうのは、やっぱり違うと思う。チームを信じて、自分を信じて、それを達成することだけ。それしかイメージしていないです。ことしは、ホントにメジャーを獲ります」。力強い宣言とともに、新たな1年が始まった。(聞き手・構成/亀山泰宏)

撮影協力/アビームコンサルティング