圧倒的な強さでセ・リーグを独走した阪神。藤川監督が率いるチームは、球団史上初の連覇にどう挑むか(C)産経新聞社FA補強に…

圧倒的な強さでセ・リーグを独走した阪神。藤川監督が率いるチームは、球団史上初の連覇にどう挑むか(C)産経新聞社
FA補強に頼らぬ方針が結果として実を結ぶ
2025年に2年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神は、26年シーズンで球団創設90年間でいまだ成しえていないリーグ連覇に挑むことになる。
昨季、史上最速でペナントレースを制した現チームは、黄金期に入りつつある。打線では近本光司、中野拓夢、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔と1番から5番は不動のレギュラーが固定。投手陣も村上頌樹、才木浩人のダブルエースが働き盛りで、守護神・岩崎優を中心に及川雅貴、石井大智らが脇を固めるブルペン陣も抜群の安定感を誇っている。
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特筆すべきは、名前を挙げた選手が全て“自前”の選手ということ。FA補強に頼ることなく生え抜きの育成に大きく舵をきった近年の方針が直近3年で2度のリーグ制覇という形で確実に実を結んでいる。主力はまだ20代から30代前半と来季以降も存分に力を発揮していくだろう。今のところ大きな死角は見当たらず、岡本和真(巨人→ブルージェイズ)、村上宗隆(ヤクルト→ホワイトソックス)がメジャー挑戦を決め、他球団の戦力ダウンが否めない中で阪神の充実度は際立つ。球団の歴史を塗り替える千載一遇のチャンスが訪れているのは間違いない。
ただ、勝負事に「絶対」はないように長いシーズンでは、予想だにしないことが起こるのも常。実際、阪神が最も恐れることは、故障などによる主力選手の離脱だろう。25年も、投手、野手ともにレギュラーメンバーを長期的に欠かずに戦えたのは、ライバルたちを突き放して独走した要因の1つ。その点は、藤川球児監督が就任以来チームマネジメントにおいて最も気を配った部分で、春季キャンプから細心の注意を払って選手のコンディション維持に注力してきた。
いわゆるエブリデープレイヤーが不動だからこそ、替えがきかず離脱となれば大幅な戦力ダウンは免れない。来る新シーズンも万が一、主力が抜けるような事態になった時にどう対処するか。その点も指揮官は抜かりない。
昨季に高卒5年目だった髙寺望夢に内外野で出場機会を与えて経験を積ませ、小幡竜平、木浪聖也がレギュラー候補だった遊撃に30歳の熊谷敬宥を起用。開幕時はベンチだったメンバーに自力を付けさせて起用法に厚みを持たせている。加えて、ドラフトでは大学ナンバーワンスラッガーの立石正広(創価大)、同じく強打が売りの谷端将伍(日大)の獲得に成功。将来を見据えての指名ではあるものの、即戦力野手の増員は有事に備えるという意味でも効果的な補強に見える。
「私の目はごまかせません」――指揮官が厳しい表情で語った決意
投手陣に目を移せば、25年は石井、及川の若手リリーバーがフル回転した。特に後者はフルシーズン1年目となって蓄積疲労が心配されるが、毎年のようにブレークを果たすリリーバーが登場するのが、阪神のブルペンの強き、そして良き“伝統”。実際、24年に70試合登板で貢献した左腕の桐敷拓馬がやや調子を落としたところに及川が台頭してきた。
常々、藤川監督は「顔と名前は関係ない」とニューフェイスの出現を歓迎するスタンスを取っている。昨季はケガが癒えた終盤戦に昇格を果たして防御率0.00でフィニッシュした畠世周や、ルーキーだった木下里都、2年目を終えた石黒佑弥らが一気に飛躍する可能性を秘めている。
先発陣は日本人選手に大きな動きはなかったものの、開幕ローテ入りを果たして驚異的な奪三振率(11.22)を残して6勝をマークしたジョン・デュプランティエが在籍1年で退団(1月5日にDeNAへ移籍)。シーズン後半から先発に転向したニック・ネルソンも1年でユニホームを脱ぐことになった。
そうした中で球団はオフシーズンに入って助っ人の補強に着手。25年にメジャーで3勝をマークしている左腕のイーストン・ルーカス、203センチの長身から落差のあるカーブを繰り出すカーソン・ラグズデールと左右の先発候補の獲得に成功した。デュプランティエの穴は同じ助っ人で埋める算段で、そして、来季は左手首の手術から完全復活が期待される高橋遥人をフルシーズンで起用できれば、これ以上の“補強”はないだろう。
さらに藤川監督は、“ルーキーイヤー”に右肘のトミージョン手術を受けた23年ドラフト1位の下村海翔の復帰にも言及。右腕の出身の西宮市での優勝報告会で「西宮市出身では佐藤(輝明)もいるが、下村が頑張っている。そろそろ故障も癒えてくる。高橋遥人ではないが、来シーズン、夏場前くらいから、1軍で起用できるようなことになれば、来年はここ(西宮市の優勝報告会)に下村がいるんじゃないかな」と期待。先発陣の起爆剤になり得る存在だと見ている。
ベンチに目を向けると、昨季は1、2軍打撃巡回コーディネーターだった和田豊がヘッドコーチに就任。14年に監督として日本シリーズも戦った経験豊富な参謀を据えてタクトを振る。
昨年11月末にあった球団納会で藤川監督は、「慣れなかったからこそ、史上最速のリーグ優勝ができた。そして、ここから2か月のオフが勝負。それだけアスリートというのは厳しい。組織も慣れてはいけない。慣れたら、それは必ず表れる。私の目はごまかせません。期する思いで来年2月を迎えましょう」とチーム内の空気を引き締めるように厳しい表情で決意表明。「慣れ」や「現状維持」に強く首を振る指揮官は、“新生猛虎”にムチを打ち、連覇の偉業を目指す。
[取材・文:遠藤礼]
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