高校ラグビー界の名門・東福岡高校のキャプテンである福井翔大(18歳)が、11月16日に同校で会見をおこない、来春、ジャパンラグビートップリーグの強豪チーム、パナソニック ワイルドナイツに来季加入することを発表した。大学ラグビー界ではなく、…

 高校ラグビー界の名門・東福岡高校のキャプテンである福井翔大(18歳)が、11月16日に同校で会見をおこない、来春、ジャパンラグビートップリーグの強豪チーム、パナソニック ワイルドナイツに来季加入することを発表した。大学ラグビー界ではなく、高校卒業後すぐに日本最高峰リーグで挑戦する。日本ラグビー界では、高校生がプロ契約でトップリーグチームに加入するのは異例で、福井は先駆者となる。

 トップレベルでの挑戦を意識するようになったきっかけは、今春の高校日本代表アイルランド遠征だった。ツアー成績は2勝2敗だったが、U19マンスターに7-17、U19アイルランド代表には31-50で敗れ、個人の力の差を痛感したという。
「何が違うのかなと考えたんです。で、同じ年代だけど、経験している世界が全然違うなと思って。海外のすごい選手たちは、僕ら世代でもトップの世界で活躍しているので、そこが一番の差だと思う。なので、僕も挑戦できるなら、早い段階で日本最高峰の環境で挑戦したいと思いました」

 福井翔大を育ててきた東福岡の藤田雄一郎監督はこう言った。
「言い過ぎかもしれないですけど、今年の高校ラグビー界での、清宮幸太郎(高校野球で注目を浴び、ドラフト会議でプロ7球団が競合)かなと。各大学から福井翔大、福井翔大、福井翔大……、『うちに来てくれ』と、みんな一番は福井翔大狙いで声をかけてくれました」
 しかし、各大学の監督の話を聞く福井翔大の表情が、なにかしっくり来ていないと藤田監督は感じた。
「それで選抜大会のときに、腹を割って話そうや、と。すると、『高いレベルでチャレンジがしたい』という。セカンドキャリアのことを考えて、大学に行くのがいいんじゃないかと勧めましたけど、福井の一言に自分は考えを変えました。彼のポジション(NO8、FL)でトップレベルでやれるのは10年から15年だと思います。30歳前後。でも、『15年先を考えるよりも、ラグビーをできる15年間を考えたい』と言うので、わかったと。それなら、トップリーグ、なおかつ、トップリーグのなかでもトップのチームに行けと。それで、飯島さん(パナソニック ワイルドナイツの飯島均部長)に飛び込みでお願いをして、本当にご尽力をいただきまして、きょうの日を迎えることができました」

 福井は今春、高校日本代表だけでなくU18日本代表の主将としても欧州に遠征し、夏には高校生で唯一U20日本代表に選ばれワールドラグビーU20トロフィー優勝に貢献した。
 パナソニックの飯島部長は、ラグビープレーヤーとしての福井は、スピード、スキル、リーダーシップなど、どれも群を抜いてすごいと評価する。そして、彼の志の大きさに興奮するような気持ちを抱いたという。
「ぜひその大きな志を大きな花にしたい。それに関わりたい、サポートしたい。それが、私たちが今できる責任というか役割だと思っています。本当に日本代表が世界で勝っていく、実現できるかどうかという問題ではなくて、例えばオールブラックスに勝ったりとか……、そういうところに福井翔大君がキャプテンで立っているような姿を頭の中で想像しながら、これからもサポートしていきます」
 高校生でのプロ契約という、日本ラグビー界で新しい形ができ、飯島部長は第2、第3の福井翔大が出てくることを期待している。
「トップリーグか大学か、ということではなくて、いろんな形が変わってくると思います。私たち(ワイルドナイツ)にいながら、大学で勉強して、もし、私たちの試合に出られないときは大学の試合に出られるかもしれない、とか。そこにはルールの問題とかあるんですけど、そういう大きな流れが変わるきっかけになると思います」

 2年後の9月、福井はワールドカップ開催期間中に20歳の誕生日を迎える。2019年のワールドカップ日本大会、そしてセブンズがおこなわれる2020年の東京オリンピックも、決して不可能なチャレンジではない。
「自分が現役でいる間は行けるところまで行きたいと思っているので、それにはどうしたらいいかなと考えたら、一番強い環境でやるということだと思います。日本代表にしても、サンウルブズにしても、僕が努力し続けて、本当にトップを突きつめていきたいと思います」

 福井の意志の強さと取り組む姿勢は藤田監督が太鼓判を押す。
「彼がどうなるかわかりませんけど、自信を持って言えるのは、彼はどんなところでも努力をし続ける力があると、自分は確信してます」

 福井翔大、18歳。身長186センチ、体重92キロ、足のサイズは29センチ。
「体も全然できていなくて、一発のパワーとかだったら全然ダメだと思うんですけど、僕の特長は運動量だと思うので、グラウンドを走り続けて、どこにでも現れるようなプレーヤーになりたいです」
 そして、目の前の目標に向かって一つひとつ集中していきたい。まずは冬の全国高校ラグビー大会、花園だ。
「今年の目標は去年のチームを超えること。そのためには、花園ではチーム一丸となって圧倒的な連覇をしたいです」