前評判も高く、30年ぶりの優勝を期待されていた中大は、総合5位に終わった photo by Kishimoto Tsut…

前評判も高く、30年ぶりの優勝を期待されていた中大は、総合5位に終わった
photo by Kishimoto Tsutomu
【青学大の黒田朝日に手も足も出なかった】
「いや、もう悔しいのひと言ですね」
第102回箱根駅伝、総合5位に終わった中央大の藤原正和監督は、悔しさを嚙みしめていた。
往路は、昨年同様に中大らしいスピード感に溢れる駅伝を見せた。1区の藤田大智(3年)は首位の國學院大から9秒差の2位で溜池一太(4年)に襷をつないだ。その溜池は2位をキープし、3区の本間颯(3年)が区間賞の走りでトップに立った。4区の岡田開成(2年)も首位をキープした。
「1区から4区までは、設定をほぼクリアしました。溜池のところでもう20秒早く来てくれればよかったですけど、攻めの走りをしてくれたので、3区、4区につながった」
中大は、前回大会も4区終了時までは首位だった。だが、5区で青山学院大の若林宏樹(当時4年)に区間新の走りを見せられ、2位に落ちた。今回は柴田大地(3年)が5区で首位をキープする役割を担ったが、その前に立ちはだかったのが、青学大と早稲田大だった。
4区終了時点で、5位の青学大(黒田朝日・4年)とは3分24秒、2位の早大(工藤慎作・3年)とは1分12秒の差があった。工藤とはともかく黒田は届かないだろうと、藤原監督に限らず誰もが思ったはずだ。
だが、10km手前で工藤に抜かれ、13km過ぎで黒田にもかわされた。苦しそうな表情を浮かべて走る柴田は、それでも3位の座を守り、往路優勝を果たした青学大との差を1分36秒に留めた。
レース後、藤原監督は「4区までやりたいことがやれた」と言いながらも、悔しそうな表情を見せた。
「柴田は後ろから来る実力者の迫力にちょっと飲まれましたね。事前に黒田君がイイという話を聞いていましたし、当日変更での5区に黒田君が入ったことには相当にインパクトがありました。それに柴田が気持ち的にフッとなってしまった。でも、それはもう仕方がありません。黒田君に1時間07分台で走られると、さすがに手も足も出ない。ただ、1分半ぐらいの差に留めてくれたので、復路に十分につながったのかなと思います」
藤原監督はそう言った後に、つけ加えた。
「明日は、(主将の)吉居(駿恭・4年)を投入するので、全日本(大学駅伝)での(駒澤大の)伊藤蒼唯君(4年)のような走りをしてほしいなと思います」
【本来は吉居を1区に置きたかった】
復路は、6区の並川颯太、7区の七枝直、8区の佐藤大介の2年生3人がなんとか3位を死守。当日変更で9区に入った吉居に襷を渡し、さらなる順位アップを託した。だが、吉居のペースは思うように上がらず、区間8位。10区の吉中祐太(4年)も順天堂大と早大にかわされて総合5位に終わった。
目標の総合優勝には届かず、前回大会と同じ5位。藤原監督はこう振り返る。
「うーん、うまくいかなかったですね。吉居は、10日前に右のふくらはぎとすねの部分を痛めて、負担の少ない区間に回しました。本来であれば1区に置きたかったです。そうすれば他校をけん制することができましたし、調子のよかった藤田を7区に入れ、(7区で好走した)國學院大の高山豪起君(4年)のような走りが期待できたと思います。
アンカーは(当初エントリーの)濵口(大和・1年)のままでいきたかったんですけど、アクシデントがあって使えなかったので、それはマネジメントする私のミスです」
故障やアクシデントがあり、藤原監督が考えるオーダーが組めず、苦肉の配置になったわけだが、1区・吉居、7区・藤田が実現していれば、相当に面白い駅伝ができたはずだ。また、夏頃には2区・岡田、4区・吉居、5区・溜池という並びも考えていたという。だが、いずれも実現しなかった。
そして、それ以上に藤原監督が重要性を再認識したのが山だった。
「今回は、山で黒田君にすべてやられたなと。ウチが握っていた主導権を持っていかれたのもありますし、その影響で復路も後手後手になってしまいました。黒田君のような"クラッシャー"が現れて、破壊的な走りをされると対応が難しい。
でも、今後も黒田君のような選手が現れるという考えでいないと対策は立てられないですし、(5区は)1時間9分台が当たり前の世界だと思って(※今回の中大・柴田は1時間12分16秒で区間11位)、ここからの1年はやっていきたい。
まずは練習ですね。青学大の話を聞いていると、すべての選手が上りの練習を定期的に行なっているようで、僕らのウィークポイントはまさにそこだと思いました。(上りの練習が)年間の取り組みに入っていなかったので、そういう部分の弱みを消していくしかない」
そのなかで、平地も速くて山適性も高い黒田のような選手が出てくれば理想だが、さらに一歩踏み込んで、山にだけ特化した選手をつくるのは難しい現状がある。中大は1学年10名程度と部員数が少なく、また、世界で戦える選手の輩出を目指しているだけに、山だけに強い選手をつくろうというのは部のポリシーに反してしまう。
では、どうしたらいいのか。
「青学大の原(晋)監督は、山は『出会い』とおっしゃるんですけど、ウチも青学大や國學院大みたいに1学年15名ぐらいの人数を採って、5区要員との出会いの確率を増やしていかないといけないでしょうね。確率を上げていくために、そういうことを大学にも働きかけていかないといけない段階なのかなと思いました」
これは、単に山のことだけを考えて人数を増やしたいということではない。スカウトする段階では、学生の性格、強み、弱みなどは見えないところもある。タイムでは見えない弱さや、何か課題を抱えた選手を採ると、それを克服できるケースもあれば、できない場合もある。その際、分母が大きれば、そういう選手が出たとしても人数の多さでカバーできることもある。
「今の若い子たちは、勢いともろさの両方があると思うんです。勢いでいけてしまう部分はありますが、少しマイナス要因が入ってきた時のもろさもあって、それを人数でカバーしているのが青学大と國學院大だと思うんです。単純に人数を増やせば強くなるということではなく、戦える人数を増やしていくということですね」
部内の課題ではないので時間はかかるが、中大が1996年以来の優勝、そして、その後も継続して優勝を目指すためには通らなければならない関門のようだ。
【なぜ青学大はあんなに強いのか、勝てるのか】
指揮官が敗戦の分析を進める一方、選手は何を感じていたのか。3区を駆け、2年連続で区間賞を獲得した本間は、選手の箱根に対する熱量の違いを感じていた。
「中大は、(全体練習以外の)補強のトレーニングやジョグなど個人にまかされている部分があるんですけど、その"自分の色に染める余白の部分"をもっと考えてやらないといけない。箱根で勝つんだという欲を前面に押し出しさないといけないのですが、現状はその熱量に個人差がある。1年後にまた箱根がありますが、『長いな』と思っているようだとあっという間に『時間がない』となってしまう。1週間休んだ後、箱根に勝つために全員で熱量高くやっていかないと次も勝てないと思います」
次シーズン、本間は最上級生になる。その自覚も十分だ。
「今回、青学大は強かった。なんで、あんなに強いのか、勝てるのか、聞いてみたいですね(笑)。次のシーズンは最上級生になるので、自分がチームを勝たせたいです。(『2区を走りたい?』との問いに)2区はキツいので、3年連続3区区間賞のほうが響きがいいのかな(笑)。4年生で、終わりよければ......じゃないですけど、勝って終わりたいです」
その覚悟は、全選手に共有されるだろうか。個々の10000ⅿの持ちタイムを見れば、青学大と差はない。本間は「なぜ青学大が強いのか」を知りたいと言ったが、その答えは自分たちの意識にあるような気がする。