<新日本プロレス:WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退>◇4日◇東京ドーム◇観衆4万691…
<新日本プロレス:WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退>◇4日◇東京ドーム◇観衆4万6913人
2021年東京五輪柔道男子100キロ級の金メダリスト、ウルフアロン(29)が衝撃の失神KO勝利でプロレスデビュー戦を飾り、いきなり戴冠した。NEVER無差別級王座戦で王者EVILに12分53秒、逆三角絞めでレフェリーストップ勝ち。日本で初となる五輪金メダリスト出身のプロレスラーが、デビュー戦でいきなりベルトを巻いた。
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入場ゲートに現れたウルフが、道着をむしり取るように脱ぎ捨てた。長髪は丸刈りになっていた。「これから先、もう柔道着を着て戦うことはないというアピール。頭は今朝、丸めた。入門した段階で決めていた」。金メダルの栄光を捨ててゼロから生まれ変わる。その覚悟を最初に示した。
あのアントニオ猪木と同じ黒タイツで、歴戦のEVILに真っ向勝負を挑んだ。ラリアット、パワースラム、棚橋の必殺技ハイフライフローも繰り出した。イス攻撃、白い粉の目つぶし、集団での暴行……手荒い洗礼にも耐え抜いて、最後は逆三角絞めで王者を失神させた。「今日やっとプロレスラーになれました」。ベルトを手に胸を張った。
東京ドームを埋めた超満員の大観衆からウルフコールも湧き起こった。「これだけ大勢が見てくれる中で試合をしたのは初めて。体に力が入らなくなったときに意識とは別のところで体が動こうとする感覚があった」。ファンの期待が心に響いた。プロレスの醍醐味(だいごみ)に震えた。
昨年6月8日の大会を最後に柔道を引退してプロレス転向を発表した。理由は「好きだから」。「大学時代に初めて見た。戦うだけでなく、人に何かを伝えていくところに魅力に感じてのめり込んだ」。その憧れの世界での大きな1歩にも「おごってしまうと足をすくわれる。しっかり地に足をつけて成長する」と、勝ってかぶとの緒を締めた。
入場前に発奮材料もあった。柔道男子日本代表監督の鈴木桂治氏が、会場で和太鼓を打ち鳴らしてゲキを送ってくれたのだ。「柔道界の大先輩が僕のことを送り出してくれたことは力になる。僕のバックボーンは柔道なので」。柔道着こそ脱ぎ捨てたが、23年間の柔道人生も背負ってリングに立った。
くしくもデビュー戦の舞台がプロレス史に一時代を築いた棚橋の引退興行になった。「本当に偶然で運命的なものを感じた。棚橋さんが最後に残してくれるものを目に焼き付けて、これからのプロレス人生の糧にしたい。目標はIWGP世界ヘビー級王座」。プロレス新時代の主役になる。そう心に決めている。【首藤正徳】
○…「ビックリ。もっと伸びしろがあるんじゃないですか」。棚橋が、デビュー戦でベルトを獲得したウルフの才能を絶賛した。入門半年でEVILを失神させたことに「適応能力というか、僕らのプロレスの常識で図れるものをはるかに超えていた」と驚いていた。
○…NEVER無差別級王者だったEVIL(イービル)は、屈辱の締め落としで散った。極悪ユニット「ハウス・オブ・トーチャー」の首領は、目つぶしや股間への攻撃で攻め立てた。前日も「ウルフよ。チャンピオン権限で、お前が負けたら丸刈り、そして柔道着禁止だ。柔道しかない男」と理不尽に要求し、リングでも悪手で苦しめたが、まさかの失神KOで王座陥落という失態が待っていた。