選手たちに健康の重要性を問いかけ続けた指揮官は、阪神園芸とも密なコミュニケーションを図っていた(C)産経新聞社徹底的に管…

選手たちに健康の重要性を問いかけ続けた指揮官は、阪神園芸とも密なコミュニケーションを図っていた(C)産経新聞社
徹底的に管理されたリスク。細かな配慮はキャンプ地でも
史上最速のリーグ優勝を成し遂げた2025年の阪神の強さは群を抜いていた。投手では村上頌樹、才木浩人のダブルエースがローテーションでフル回転するなど先発陣は質、量ともに充実し、50試合連続無失点の世界記録を打ち立てた石井大智、守護神の岩崎優ら各々が武器を持った個性派のリリーバーたちがブルペンに君臨。野手では森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔の生え抜きドラ1トリオが打線の中軸を担うなど投打ともに主力が円熟期を迎えており、付け入る隙が見当たらなかった。
【写真】こんなの泣くやろ!阪神時代の思い出ショットとともにファンに感謝の気持ちを伝えた実際の文面
「個」の力の結集でもって他球団を圧倒し続けたように見えるが、就任1年目となった藤川球児監督のタクトもまた、独走Vに欠かせぬ要因の1つ。選手が最大限のパフォーマンスを発揮し続けるための“隠し味”を随所に仕込んでいた。
昨秋、選手に「没頭」という言葉を投げかけて野球へ打ち込む姿勢を示した指揮官が、同じように重ね重ね口にしていたのが「健康」というフレーズだった。キャンプでは選手たちがケガなく開幕を迎え、シーズン中は故障離脱することなく1年を戦い抜くことを願うように口酸っぱく言い続けていた。
無論、選手への意識付けだけでなく「健康」に留意した監督のリスクマネジメントは、実に徹底していた。本拠地の甲子園球場だけでなく、キャンプ地のグラウンド整備なども担う阪神園芸の金沢健児(甲子園施設部長)は、24年11月に高知で行われた秋季キャンプのある日を思い返す。
「安芸で前の日に雨が降ってグラウンドの様子を監督が見に来たんです。選手のコンディションのことを凄く気にされていて、その時に監督が『グラウンドのことはお願いしますね』と」
そして25年2月、沖縄での春季キャンプ初日に再び金沢は藤川監督に呼び止められると、ある提案をされた。
「芝をちょっと短くできないですかね?」
沖縄・宜野座村野球場のメイングラウンドの外野芝生は約23ミリあり、甲子園球場(約15ミリ)よりもわずかに長い。監督は甲子園球場の芝に慣れた選手の故障を危惧。違いは1センチにも満たないものの、金沢は「芝が長いと足を取られたりする。ましてや2月の沖縄は夜露もあって滑りやすくなったりね。凄く考えているんだと感じた」と細かい要望にも納得がいった。
その後、金沢の指示で芝を刈り揃えた宜野座村野球場で選手たちは開幕への準備を整え、チームは大きな故障者を出すことなくキャンプを打ち上げ。シーズンに入っても、蓄積疲労を考慮してブルペン陣に積極的休養を与えるなど主力に長期離脱者を1人も出すことなくベストメンバーでシーズンを駆け抜けた。

現役時代に虎の絶対的守護神として活躍した藤川監督。だからこそ、その言葉には「説得力」も生まれる(C)Getty Images
守護神・岩崎が「救われた」と漏らした指揮官の言葉
藤川監督は、“言葉”でも選手をうまく操縦した。
現役時代は阪神の絶対的守護神としてNPB通算243セーブを挙げた藤川監督。百戦錬磨の指揮官だからこそ説得力を持つ“フォロー”が垣間見えたのは、8月に岩崎が痛打を許した1日と23日のヤクルト戦だった。
ともに9回に同点を許したものの、チームは延長戦で勝利(1日)、引き分け(23日)と負けなかった。そんな中で左腕は指揮官からこんな言葉をかけられたという。
「同点で止めたことはそれはOKだから」
追いつかれた事実は確かに痛恨ではあったが、そのまま勝ち越されていれば、2試合ともサヨナラ負けの場面。失点を引きずらずにいれば、試合は振り出しに戻っただけでまだ“生きた”状態だった。
岩崎も「その2試合で白星を消してしまった伊藤将司には謝るしかできませんが、監督の言葉で救われた部分もあったし、前を向くことができた」と振り返っている。何を隠そう、過酷な9回のマウンドに幾度となく上がってきたのが、藤川監督自身。重圧、心情は痛いほど分かるからこそ“同点でOK”という言葉には説得力があったのだ。
タクトを振る指揮官としての目線だけでなく、長年チームの勝敗を背負うマウンドに上がってきた守護神としての目線も織り交ぜながらひたすら勝ちに徹してきた。しかし、同時に藤川監督は、ヘッドコーチ不在、コーチ経験なしでの監督就任といった周囲の不安を、選手の健康、情報管理といった卓越したチームマネジメントの徹底で払拭して見せた。
来季以降を見据えれば、黄金期到来も感じさせる阪神。球団初のリーグ連覇、今秋なし得なかった日本一という目標へ2026年も疾走は止まらない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
【関連記事】「まだこんなもんじゃない」大竹耕太郎が語る“しっくり来ていない”2025年 結果の裏に芽生えた確かな手応え【vol.1】
【関連記事】「成長の跡がみえた」伝統の一戦でプロ初勝利の門別啓人を球界OBが称賛 ホーム3連敗の巨人には苦言も「打線が打てていない」
【関連記事】「ポテンシャルはすごいものがある」阪神24歳ロマン砲の現役ドラフト移籍に球界OBの考察「細川に匹敵するぐらいの活躍はできる」