マンシーもまたドジャースに欠かせぬ選手のひとりだ(C)Getty Images ドジャース打線の脅威として、マックス・マ…

マンシーもまたドジャースに欠かせぬ選手のひとりだ(C)Getty Images

 ドジャース打線の脅威として、マックス・マンシーが与える影響は大きい。中軸の4番を任されることもあるが、主に6番、7番でクリーンアップの直後に控える長距離砲。1発があるだけに、相手バッテリーは気が抜けない。長打に加えて四球が多く、2025年シーズンの出塁率.376は、ウィル・スミス(.404)、大谷翔平(.392)に次ぐチーム3位に相当する。勝負強さもあり、ブルージェイズとのワールドシリーズ第7戦では、8回に1点差に詰め寄るソロ本塁打を放ち、球団初となるワールドシリーズ連覇への流れを引き寄せた。

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 守備力にやや課題がある一方で、攻撃面では欠かせない左の強打者。ロバーツ監督も「彼がいるだけで、その存在感で打線に好影響をもたらす」と評価する。

 だが、シーズン序盤は苦しんだ。長打力が影を潜め、開幕から105打席、本塁打が出なかった。3、4月は打率1割9分4厘と低迷し、待望のアーチが出たのは4月の最終戦。復調のきっかけは打撃用メガネの着用だった。初アーチが出た際には、大谷を含めてナインがバンザイ。長いトンネルから抜け出し、チームメート、監督、コーチら全員から祝福を受けたマンシーは「素晴らしかった。みんなが、互いのことを気にしている。全員が、チームのために勝ちたいと思っている。ロサンゼルス(ドジャース)でプレーするというのは、簡単なことではないけど、こういうプレッシャーの中でプレーできるのは特権だと思う」と振り返っていた。

 徐々に調子を取り戻すと、打線に厚みが増した。5月に打率2割5分、5本塁打、6月に打率3割3分3厘、7本塁打と完全復調したが、7月上旬、守備中に走者と交錯し、左膝の骨挫傷で約1か月離脱。8月上旬に1度は復帰したが、今度は右脇腹痛が再発した。

 マンシー不在の間、チームは失速し、7月3日の終了時点で2位と最大9ゲーム差をつけていたが、8月13日に2位に転落。9月上旬まで、投打がかみ合わない状態が続いていた。同時期に離脱していた正捕手スミスの復帰も大きかったが、9月8日にマンシーが復帰して以降、チームはラストスパートで勝負強さを発揮し、ナ・リーグ西地区を制した。

 攻撃の軸になるだけでなく、臨機応変な状況判断が必要な守備ではポストシーズンで重要な役割を果たした。10月6日、フィリーズとの地区シリーズ第2戦。9回に2点返されて1点差に詰め寄られ、なお無死二塁からイチかバチかのバントシフトを敢行した。三塁手のマンシーが前進し、遊撃手のベッツが三塁ベースカバーに入り、走者をタッチアウトとする「ホイールプレー」。内野手がホイール(車輪の)のようにグルグルと回ってポジションを変える連携プレーで、マンシーは狙い通り三塁側バントを捕球し、正確な送球で三塁タッチアウトとした。

 ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズでは第3戦、2回に同点とされてなお一死満塁から、三遊間のゴロをスライディングしながら好捕した。素早い動きで反転して捕手スミスへ送球。タッチアウトとし、勝ち越し点を許さなかった。「状況をしっかり理解してプレーする必要があった。ランナーが芝生の内側から突っ込んでくるのは分かっていたし、だから素早く投げて、捕手がタッチできる時間を作ることが大事だった」。三塁走者がラインの内側を走ることで、仮にタイミングがギリギリのタッチプレーになれば、送球が走者に当たってしまう可能性がある。それを回避するため、いつも以上に素早く送球を行った。

 1発のある豪快な打撃だけでなく、四球での出塁や勝負どころでの頭脳プレーなど、冷静な状況判断が光る。球団スタッフの一人は「見ていないようで、よく周りを見ている」と証言。存在感はフィールド上だけなく、クラブハウス内でも漂っている。野手ではフレディ・フリーマン、ミゲル・ロハスに次ぐ年長だが、ドジャースの在籍歴で言えば最古参。勝つために黙々とチームをけん引する仕事人として、常勝球団の中核を担っている。

[文:斎藤庸裕]

【著者プロフィール】

ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。

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