◇第102回東京箱根間往復大学駅伝競走復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖スタート~東京・千代田区大手町読売新聞社前ゴール=…
◇第102回東京箱根間往復大学駅伝競走復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖スタート~東京・千代田区大手町読売新聞社前ゴール=5区間109・6キロ)
往路では17位だった帝京大は、復路で猛追を見せ9位に滑り込んだ。往路トップの青学大に12分17秒のリードを許し、復路は他7チームとの一斉スタート。実際の順位がレース中に見えない中で、4分15秒あった10位との差を9区までに13秒に短縮。最後は10区の鎗田大輝(4年)が逆転した。往路17位からのシード権獲得は史上初で、スローガンに掲げる「世界一諦めの悪いチーム」を体現してみせた。
「2秒負けてるぞ! 飛び込め!」―。残り1キロで監督の乗る運営管理車からゲキを受け、帝京大のアンカー鎗田は最後の力を振り絞った。「ラストやばい!と思って、1キロ本当に、全力出し切った感じでした」。復路一斉スタートで見た目の順位と総合順位が異なり、シード圏(10位以内)に入っているのか分かりづらい状況だった。中野孝行監督(62)の言葉を信じ、総合9位で駆け抜けた。復路5位とし、往路17位から最大の逆転劇でシード権獲得に成功した。
復路スタート時点で、10位東海大とのタイム差は4分15秒あった。9区・尾崎仁哉の区間4位の激走を始め、区間ごとに順位を上げた。11位でつないだ10区。中野監督は各選手にシード権までの秒数を伝えなかったというが、アンカー鎗田には電話ではっきりと伝えた。
「13秒だぞ」
タスキを受けると積極的に飛び出し、競る日大と中央学院大を突き放した。「とにかく(前の)創価を目指して走った」。残り1キロ付近で想定外のことが起きた。テレビ中継する日テレが馬場先門(ゴールまで残り2・9キロ地点)の通過タイムで「帝京大11位、10位中央学院大と2秒差」と表示し、放送席もこれを伝えたが、実際は「帝京大9位、11位中央学院大と35秒差」で、すでにシード圏内だった。
運営管理車でも正確な状況を把握していたが「なんか2秒、抜かれたぞとかって」と中野監督は冒頭のゲキを飛ばしたのだった。
往路で17位に終わった2日夜。3年連続のシード権が絶望的な中でもチームは活気づいた。復路へ向けた全体ミーティングを開き「1人1分縮めたら、5分だ」と訴えた中野監督。4年生のミーティングでは、鎗田は「ここからシード取ったらかっこいいよな」と同僚に投げかけた。その強気発言を伝え聞いた同監督は「捨ててないんだ」と感じ、鎗田には具体的な秒数やゲキを伝えた。「2秒差」をうまく使った。
最終的に10位日大を突き放し41秒差の9位でフィニッシュした。「ちょっとは4年生としてカッコいい姿を後輩たちに見せられたのかなと思います」と鎗田。同監督も「ミラクル帝京だね」と言った。前回大会も14位からシード権を獲得したのに続き「復路の帝京」を証明した。「世界一諦めの悪いチーム」とスローガンを掲げる帝京大がその神髄を存分に発揮した。
(古澤 慎也)
◆往路の出遅れからの逆転シード劇 2011年で青学大が往路16位と出遅れ。シード圏内の10位と1分34秒差から、6区小川恭正(4年)の区間5位の好走などで復路5位と逆襲。総合9位で2年連続シードを獲得したのが過去最も往路の低い順位からの逆転シードだった。また、復路で8つ順位を上げてのシード権獲得も、06年大会に往路15位から復路優勝で総合7
位となって3年連続シード
を確保した法大と並ぶ記録
となった。
◆帝京大の箱根駅伝での主な逆転劇
▽14年大会 シード圏内(10位)と2分11秒差の往路12位と出遅れも、7区で蛯名聡勝(4年)が激走。区間4位の力走で「9人抜き」を達成。総合8位で2年連続シードをつかみ、大会直前合宿を行った、台風26号で土石流被害を受けた伊豆大島に勇気を届けた。
▽25年大会 往路はシード圏内の10位と1分25秒差の14位と出遅れたが、6区広田陸(2年)の区間4位など、復路4位と猛反撃。最終10区で1年生アンカー・小林咲冴が東京国際大、東洋大、順大との4校の大激戦の末、総合10位に滑り込んで2年連続のシードを死守した。
◆鎗田 大輝(やりた・だいき)2003年9月25日、千葉県いすみ市出身。22歳。市船橋から帝京大に進学し、25年全日本大学駅伝は5区区間9位。5000メートルのベストは13分57秒81。1万メートルのベストは28分40秒77。179センチ、58キロ。
成功するまで泥臭く
国士舘大出身で、箱根駅伝には4度出走した中野監督は2005年に帝京大の監督に就任した。モットーは「日本一諦めの悪いチーム」と「『やるかやらないか』ではなく『やるかもっとやるか』」。熱い言葉で選手を鼓舞する。「成功するまでしつこくやるっていうことが、今の世の中にものすごい必要。だから、箱根駅伝を通して彼らが学んだことが、国民に浸透してくれたら、もっといい国になるのかな」と大きな目標を語る。
10区の鎗田は春から都庁職員になるといい、中野監督は「おまえがお世話になる東京都だよ」と言って送り出したという。「文武両道の学生で勉強もできるし、スポーツもできて最高の人材です。小池都知事、お手柔らかによろしくお願いします」とたたえた。