ドジャースで大車輪の活躍を続ける山本(C)Getty Iamges関係者からもリスペクトされる山本なら―― メジャーリー…

ドジャースで大車輪の活躍を続ける山本(C)Getty Iamges

関係者からもリスペクトされる山本なら――

 メジャーリーグにおける日本人選手たちの存在感は大きくなる一方だ。3年連続4度目のシーズンMVPを獲得した大谷翔平は、すでに「メジャー最高の選手」との評価を確立した感がある。2年連続世界一になったドジャースのエースとしてワールドシリーズで大活躍した山本由伸も、松井秀喜に次いで日本人史上2人目のシリーズMVPも受賞した。

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 これほど充実した2025年を終え、日本人メジャーリーガーにとって残っている金字塔は、サイ・ヤング賞くらいではないか。これまで同賞を受賞した日本人選手はまだ存在しない。

 過去にダルビッシュ有、前田健太、岩隈久志、山本が最終候補(ファイナリスト)に残り、13年のダルビッシュ、20年の前田、ダルビッシュが2位に入ったのが最高位。昨季の山本もポール・スキーンズ、クリストファー・サンチェスに次ぐ3位に止まり、投手にとって最大の栄誉である同賞は、依然として難関であり続けている。

 とはいえ、すでに最終候補に入る投手が出ていることからも示されている通り、今後に受賞者が誕生する可能性は十分にあるだろう。最もチャンスが大きいのは、やはり今が旬の山本であるに違いない。

 昨季の山本は、ドジャースのローテーションを守り抜き、12勝8敗、防御率2.49、201奪三振という好成績を記録した。その後のポストシーズンでも大車輪の投球を続け、米球界でも一気にビッグネームの仲間入りを果たした。今では多くの関係者からもリスペクトされる存在になったことは、来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でアメリカ代表監督を務めるマーク・デローサのこんな言葉からも明白だ。

「ワールドシリーズの時に本人にも伝えたんだが、ヤマモトはあのシリーズ期間中に、私のお気に入りの選手になった。彼が示した自己犠牲の精神――延長戦でブルペンで投げる準備までしていた。彼は“行くつもりだった”。彼がやったすべてのことに、とてつもなく敬意を抱いたよ」

 年齢的にも現在27歳、来夏で28歳と今まさに全盛期。故障さえなければ、今後しばらくはトップレベルでの働きが期待でき、向こう数年の間はサイ・ヤング賞の有力候補であり続けそうだ。それでは受賞に向け、具体的に山本にとっての鍵となりそうな要素は何になるのか。

25年のサイ・ヤング賞に輝いたスキーンズ。彼と山本の違いとなった要素は何だったのか(C)Getty Images

好投手スキーンズとサンチェスとの違いは何か

スキーンズ 10勝10敗 187.2回 防御率1.97 216奪三振 WHIP0.95
サンチェス 13勝5敗 202.0回 防御率2.50 212奪三振 WHIP1.06
山本 12勝8敗 173.2回 防御率2.49 201奪三振 WHIP0.99

 昨季はスキーンズが見事な支配力を発揮し、サンチェスの数字も総じて上質だった。ゆえに山本の3位は妥当なところだった。上位2人との最も大きな差になっているのは、イニング数だ。彼らは山本よりも2度多い32戦に先発し、より多くの投球回数を積み上げた。

 実は、山本は、被打率、奪三振率などではスキーンズ、サンチェスを上回っていた。となれば、シンプルにイニングが増えれば、奪三振数、WARなどもアップしていく。来季以降、先発数、イニング数を増加させることで、山本は日本人史上初の栄冠に近づくのだろう。

 問題は、ドジャースが常にポストシーズンの戦いを意識し、シーズン中の負担を抑え気味に起用すること。山本、そしてチームメイトの大谷もフル回転はされず、そのおかげでプレーオフに万全の体調で臨めたのだろうが、個人賞という点では難しくなる。その部分はチームが3連覇を目指す来季も変わらないはずで、「最大の障壁」と言えるのかもしれない。

 結論をいうと、山本のサイ・ヤング賞への条件は2つ。まずイニングなどは少なめでも、より圧倒的な投球を見せること。やはり投球回数も重要な要素と考えられているが、それでも21年に167.0回しか投げなかったコービン・バーンズ、18年は180.2回、2023年も180.0回で受賞したブレーク・スネルのような例もある。中でも18年のスネルは21勝、防御率1.89、221奪三振と圧倒的な成績で投げ続け、イニング数がリーグ14位でも大きなマイナスにはならなかった。

 そして、もう1つ。ライバルたちの中から超越的な成績を残す投手が現れないというのも大事な要素になるのだろう。そういった意味で、WBCが控えている来季はチャンスかもしれない。スキーンズ、ローガン・ウェッブはすでにアメリカ代表の一員としての参加を表明し、サンチェスもドミニカ共和国の主戦格として出場の可能性が高い。

 もちろん同じくWBCでの登板が予想される山本がコンディションを保つのが絶対条件。前回大会も経験している背番号18は、これまで通りの安定したパフォーマンスで好成績を残さねばならない。その上で、春から緊張感あふれる舞台で登板する他のエースたちが少々数字を落とすようなことがあれば、山本のサイ・ヤング賞争いへの追い風になる。

「実際に会うと、ヤマモトは思ってるほど大きくはなかった。それこそがベースボールの素晴らしいところだと思う。サイズなんて関係ない。どれだけ大きいか小さいかなんて関係ない。大切なのは、マウンドで結果を出すこと。彼はそれをやり遂げてきたんだ」

 2年連続でア・リーグのサイ・ヤング賞を獲得したタリク・スクーバルは昨季途中に、山本をそう評していた。

 実際に身長175センチと小柄な27歳がパワー全盛の現代メジャーで活躍を続け、投手にとって最高の賞を受賞するようなことがあれば、後世にメッセージを送ることになる。そのための絶好期が訪れそうな来季。ドジャースのエースから目が離せない。

[取材・文:杉浦大介]

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