指名直後には批判も受けた大山。しかし、不屈のスラッガーはそこから猛虎の顔と言えるまでに成長した(C)産経新聞社完全なる成…

指名直後には批判も受けた大山。しかし、不屈のスラッガーはそこから猛虎の顔と言えるまでに成長した(C)産経新聞社
完全なる成功とは言い難い巨人
ドラフト指名の成果はその直後だけでなく、5年後、10年後にならないと分からない。これは野球界でよく語られており、実際に会議直後に「成功」と見られていた球団の指名選手が思うように成長せず、逆に意外な選手が大化けするケースもある。
そんなドラフト会議時点の評価と10年後の実績を比較してみたいと思う。今回は2016年のセ・リーグ6球団について再評価していく。
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【広島】
ドラフト会議直後:65点
10年後:85点
2016年は1位で2度抽選を外したものの、2位では高校生左腕で評価の高かった高橋昂也(花咲徳栄)を獲得できたこともあって、ドラフト会議直後は可もなく不可もなくという印象。結局、1位の矢崎拓也(慶応大・当時の登録名は加藤)はリリーフで2年間戦力となった後に現役ドラフトでヤクルトに移籍し、高橋は故障もあって伸び悩んだ。
ただ、そんな上位の2人を補って有り余る活躍を見せたのが、3位の床田寛樹(中部学院大)と4位の坂倉将吾(日大三)だ。前者は23年から3年連続で規定投球回をクリアするなど通算57勝をマーク。後者も通算670安打を放つなど中軸へと成長した。5位のアドゥワ誠も1軍の戦力となっており、トータルで見ても「成功」のドラフトと言えるだろう。
【巨人】
ドラフト会議直後:65点
10年後:70点
広島と同様に1位で投手を2度抽選で外して方針転換し、内野手の吉川尚輝(中京学院大)を獲得。2位以降で投手を重ねるという結果となった。当時は広島と同様に大成功ではないものの、悪くはないという程度の採点という印象だった。
そこから加点した大きな要因は1位の吉川の成長だ。プロ入り当初こそ故障に苦しんだが、年々安定感を増してリーグを代表する二塁手となり、チームに欠かせない存在となっている。ただ2位以下の選手は畠世周(近畿大)、池田駿(ヤマハ)、大江竜聖(二松学舎大付)の3人が戦力になった時期はあったものの、主力にまで成長することはできなかった。また、吉川以外は全員が球団を去っており、完全なる成功とは言い難い。
【DeNA】
ドラフト会議直後:55点
10年後:80点
1位で柳裕也(明治大)、佐々木千隼(桜美林大)を外し、浜口遥大(神奈川大)を指名。大学時代の浜口は調子の波が大きく、正直なところ1位は順位が高い印象が強かった。2位の水野滉也(東海大北海道キャンパス)も同様で、ドラフト会議直後の採点は厳しい数字となっている。
しかし、2位の水野は怪我もあって苦しんだものの、浜口はいきなり二桁勝利をあげて新人王に輝くなど通算44勝をマーク。24年オフにトレードでソフトバンクに移籍し、25年限りで引退となったが、ある程度成功したと言えるだろう。
そして、彼ら以上に大きな評価に繋がったのが、9位指名だった佐野恵太(明治大)だ。ファーストの選手で脚力もなかったことから低い評価でのプロ入りだったが、4年目にはレギュラーに定着して首位打者を獲得。6年目には最多安打のタイトルを獲得するなど不動の中軸となった。
惜しかったのは、5位の細川成也(明秀日立)。22年オフに現役ドラフトで中日に移籍して大ブレイクしたが、在籍中に才能が開花していればもっと高い点数となったことは間違いないだろう。

中日に2位指名された京田は、球界でも指折りの名手になるまでに成長した(C)Getty Images
「高校ナンバーワン左腕」が低迷したヤクルトは――
【阪神】
ドラフト会議直後:65点
10年後:90点
会議前に予想された即戦力投手ではなく、大山悠輔(白鴎大)をいきなり1位で指名した当時は、批判の声も多かった。だが、大学日本代表で4番を任されていたように打者としてのスケールは十分で、個人的にはそこまで批判するような指名ではなかった印象があった。ただ2位の小野泰己(富士大)は、正直順位が高く見え、トータルではまずまずの点数におさまっている。
そこからセ・リーグでは最高評価の90点としたのは、やはり大山の頑張りが大きい。1年目の途中から1軍に定着すると3年目以降は不動の中軸へと成長。9年間で1047安打、150本塁打という成績は見事という他ない。加えて大きかったのが3位の才木浩人(須磨翔風)と5位の糸原健斗(JX-ENEOS)だ。
才木は怪我で停滞した時期はあったものの、23年以降はエース格へと成長。25年には最優秀防御率のタイトルも獲得している。糸原もここ数年は代打に回っているが、4度のシーズン100安打を記録するなど内野の一角として活躍した。阪神にとっても大きなターニングポイントとなったドラフトと言えるだろう。
【ヤクルト】
ドラフト会議直後:80点
10年後:65点
1位では、「高校ナンバーワン左腕」の呼び声が高かった寺島成輝(履正社)の単独指名に成功。2位の星知弥(明治大)、3位の梅野雄吾(九産大九産)も150キロを超える本格派で、投手陣の補強という意味では成功した印象を受け、ドラフト会議直後は高い点数をつけている。
しかし、プロ入り後はエースとなることが期待された寺島が低迷。結局1軍では1勝しかあげられずに引退したことで点数を下げた。星と梅野もリリーフでそれなりに成績を残したものの、梅野は現役ドラフトで既に移籍しており、期待通りだったとは言えない結果に終わっている。
4位の中尾輝(名古屋経済大)も2年目に54試合に登板したが、フル回転での起用もあって翌年以降は低迷して21年限りで引退。5位の古賀優大(明徳義塾)が25年にキャリアハイの成績を残したこともあってトータルで見れば、一概に失敗とは言えないが、指名当時の狙いとは異なる結果に終わったために65点とした。
【中日】
ドラフト会議直後:80点
10年後:80点
1位ではDeNAと競合の結果、柳裕也(明治大)を獲得。2位でも大学球界屈指のショートとして評判だった京田陽太(日本大)の指名に成功し、3位以下で将来性の高い高校生を続けるなどトータルで見ても狙い通りの指名だった印象を受ける。
プロ入り後も柳は3年目からローテーションに定着し、5年目には最優秀防御率のタイトルを獲得。ここ数年は怪我もあって少し成績を落としているが、通算51勝は十分に成功と言える。2位の京田も1年目からいきなり149安打を放って新人王に輝くと、5年連続で100安打以上をクリア。22年に大きく成績を落としてトレードでDeNAに移籍したが、期待通りの活躍は見せた。
また、下位指名でも5位の藤嶋健人(東邦)が4年目から5年連続で40試合以上に登板するなどリリーフとして欠かせない存在へと成長。そういう意味ではドラフト会議直後と10年後の結果に大きなブレが最もなかった球団という印象だ。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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