ポテンシャルを開花させて球界屈指の投手へと変貌した山本(C)産経新聞社10年前の総合評価が「12球団最高」だったソフトバ…

ポテンシャルを開花させて球界屈指の投手へと変貌した山本(C)産経新聞社
10年前の総合評価が「12球団最高」だったソフトバンク
ドラフト指名の成果はその直後だけでなく、5年後、10年後にならないと分からない。これは野球界でよく語られており、実際に会議直後に「成功」と見られていた球団の指名選手が思うように成長せず、逆に意外な選手が大化けするケースもある。
そんなドラフト会議時点の評価と10年後の実績を比較してみたいと思う。今回は2016年のパ・リーグ6球団について再評価していく。
【動画】エースの真骨頂、山本由伸の快投シーン
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【日本ハム】
ドラフト会議直後:60点
10年後:65点
1位で2度抽選を外し、最終的には高校生左腕の堀瑞輝(広島新庄)を獲得。2位では東京六大学で活躍していた石井一成(早稲田大)を指名した。2人とも力はあったが、抽選を外したこともあった影響で一つずつ順位が高い印象で、60点としている。
堀は3年目から中継ぎとして1軍に定着して2021年には最優秀中継ぎのタイトルを獲得。石井も1年目から100試合以上に出場すると、その後も1軍の戦力となり、今オフには国内FA権を行使して西武に移籍した。ただ堀は活躍した年数が少なく、石井も規定打席に到達したシーズンはなく、上位指名としては大成功とは言い難い。下位では8位の玉井大翔(新日鉄住金かずさマジック)が中継ぎとして活躍したのはプラスだが、他は早々に退団した選手も多く、トータルではわずかな加点にとどまった。
【ソフトバンク】
ドラフト会議直後:90点
10年後:50点
1位では、この年の“超目玉”で、5球団が競合した田中正義(創価大)の獲得に成功。大学時代の田中はプロの若手相手にも圧巻の投球を見せており、大学野球史にも残るレベルの投手だった。また、2位の古谷優人(江陵)も高校生ながら最速150キロを超える本格派左腕で、3位の九鬼隆平(秀岳館)も高校球界を代表する捕手。支配下での指名人数こそ少なかったものの、総合評価は12球団で最高の値としている。
しかし、田中は度重なる怪我もあって低迷し、ようやく才能が開花したのは近藤健介の人的補償で日本ハムに移籍した後。2位の古谷も自らの不祥事で1軍では1勝に終わり、九鬼も甲斐拓也の壁を越えられず2023年限りで自由契約に。4位の三森大貴(青森山田)が2022年に101安打を放つなど1軍の戦力となったのは救いだが、既にトレードで球団を去っており、10年後の採点は最低点数となった。
【ロッテ】
ドラフト会議直後:75点
10年後:65点
1位で田中を外したが、再抽選では再び5球団が競合した佐々木千隼(桜美林大)を引き当てた。2位では社会人の即戦力候補である酒居知史(大阪ガス)、3位以下も将来性の高い投手を多く指名しており、投手の補強という意味では成功したという印象だった。
しかし、佐々木はプロでは先発として結果を残せず中継ぎに転向。5年目の2021年に54試合に登板して26ホールドをマークしたものの、十分な活躍を見せたのはこの年限りで2023年オフには現役ドラフトでDeNAに移籍。2位の酒居も3年目に54試合に登板したが、FAで獲得した美馬学の人的補償で楽天に移籍しており、ロッテにもたらしたプラスは大きくなかった。6位で指名した種市篤暉(八戸工大一)がエース格へと成長したのは大きなプラスだが、戦力になれなかった選手も多く、ドラフト会議直後の点数からはダウンという結果となった。

日進月歩で進化を続け、今オフにメジャー移籍を決意した今井(C)Getty Images
西武の大きな加点材料となった高卒1位の成長
【西武】
ドラフト会議直後:70点
10年後:90点
1位では単独指名で今井達也(作新学院)を獲得。本格化したのは3年夏と遅かったが、甲子園とU18侍ジャパンで見せた投球は圧倒的で、この指名には納得だった。ただ2位の中塚駿太(白鴎大)は典型的な未完の大器で、正直この順位は高いという印象で、トータルの点数は70点にとどまっている。
そこからの大きく加点となったのは、何よりも今井の飛躍が大きい。プロ入り当初は制球難に苦しんだが、年々凄みを増してリーグを代表する投手へと成長。通算58勝をマークした。加えて大きかったのが、3位の源田壮亮(トヨタ自動車)だ。社会人時代は9番を打つことが多く非力な印象だったが、抜群の守備力を発揮して球界を代表するショートへ成長。5位の平井克典(Honda鈴鹿)も中継ぎとして大きな戦力となり、10年後の採点は12球団で阪神と並んで2位タイとなった。
【楽天】
ドラフト会議直後:65点
10年後:70点
1位では藤平尚真(横浜)を単独指名で獲得。今井や寺島成輝(履正社→ヤクルト1位)と比べると高校時代は少しスケールが落ちる印象だったが、将来性を高く評価したという点では理解できる。ただ、2位以降は5位の森原康平(新日鉄住金広畑)以外は少し順位が高い選手が多い印象で、65点という採点とした。
藤平は1軍定着に時間がかかったが、2024年から中継ぎとして才能が開花し、2025年のシーズン途中からは抑えに定着。森原、9位の高梨雄平(JX-ENEOS)も、すでに退団しているが中継ぎとして戦力になり、10位の西口直人(甲賀健康医療専門学校)も2025年は52試合に登板して防御率1.07という成績を残した。全員がリリーフであるのは少し気になるが、3位の田中和基(立教大)も新人王を獲得しており、わずかながら点数アップという結果となった。
【オリックス】
ドラフト会議直後:80点
10年後:95点
1位では社会人ナンバーワンの呼び声高かった山岡泰輔(東京ガス)の単独指名に成功。2位の黒木優太(立正大)も150キロを超える本格派右腕で、上位指名には納得の印象だ。4位の山本由伸(都城)も個人的には外れ1位指名もあったと思っていただけに、投手の指名についてはかなり成功した印象で高得点としている。
プロ入り後も山岡は期待通り1年目から先発として活躍。ここ数年は少し調子を落としているが、ここまで通算48勝をマークしている。黒木も故障に泣いたが、1年目から55試合に登板して存在感を示した。そして何よりも大きかったのは山本の成長だ。
2年目に中継ぎとして1軍に定着すると、3年目には先発に転向し、最多勝と最高勝率3回、最優秀防御率と最多奪三振4回、沢村賞3回など球界最高の投手となった。周知の通り、2023年オフにドジャースに投手の史上最高額となる12年総額3億2500万ドル(約495億円=当時のレート)で移籍しているが、在籍期間中に残したプラスは計り知れないものがある。
オリックスとしては、3位の岡崎大輔(花咲徳栄)がほとんど戦力になれなかったのは誤算だったが、6位の山崎颯一郎(敦賀気比)も中継ぎとして大成しており、限りなく満点に近い点数をつけられるだろう。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。
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