■高か…

■高かった福大大濠の壁


 インターハイとの夏冬連覇を狙った今回の「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。鳥取城北高校(鳥取県)の前に立ちはだかったのは、またしても同じ相手だった。

 チームは苦しみながらも準決勝まで勝ち進んだ。2年連続の決勝進出をかけて激突したのは福岡大学附属大濠高校(福岡県)。試合は残り2分を切って66-69と息詰まる攻防を繰り広げた。だが、その後は互いに得点が生まれず、3点差のまま試合終了のブザーが鳴った。

 鳥取城北にとって福大大濠は、高く厚い壁だった。昨年はインターハイの準々決勝で敗れ、ウインターカップでは初の決勝へ辿り着いたものの、20点差をつけられて準優勝。今年の公式戦では「U18日清食品トップリーグ2025」でも敗れている。

「みんな上手いですよね。やっぱり一つひとつの精度が高いですし、そういった点ではうちのチームはまだまだ足りないなと思います」と、河上貴博コーチは相手の強さを素直に認めた。

「大濠に4連続で負けました。本当に一番勝ちたい相手は大濠だったと思います」と口にしたのは、ハロルド アズカ(3年)。ナイジェリア出身の留学生は「みんながディフェンスをすごいがんばってます。苦しいシュートもいっぱい打ってるけど、決める。僕たちもディフェンスをすごくがんばったけど、最後はシュートが入る。今日はそれが嫌だった」と福大大濠について話した。

 高校生活最後の試合は18得点20リバウンド。ターンオーバーは6つ、9本放った3ポイントシュートは3本の成功にとどまったが、アズカは穏やかな表情で試合を振り返る。

「あまりスリーが入ってなかったですけど、アズカの100パーセントを出しました。エースとして、キャプテンとして、3年生として(チームを引っ張る)、それがアズカの仕事です」

■万全ではなくとも示した成長の証


 昨年から攻守の要を担ってきたアズカだが、高校ラストイヤーは右ヒザのケガに悩まされた。「本人は痛くても痛くないと言うので、こちらがコントロールをしてあげないといけない」と河上コーチが言うように、万全とはいえない状態でもコートに立ち続けた。エース、大黒柱、キャプテンとして持てる力をチームに注ぎ、8月には史上初の日本一を鳥取城北にもたらした。

「プレー面以外でもみんなを鼓舞したり、リーダーシップをとったりとチームにすごくいい影響を与えてくれました。人間性の部分でこんなに成長するとは想像していなかったですし、本当に3年間よくやってくれたなという思いですね」

 河上コーチは目を細めながらアズカの成長を称えた。「城北に来て、アズカもすごく成長できたと思います」と背番号28も胸を張り、「Bリーグの選手になりたいし、NBA選手になりたい」と今後の将来の夢を述べた。

 アズカの夢はそれだけではない。「バスケット以外では、もっといい人になりたいです」と口を開き、こう続けた。

「バスケだけじゃなくて、この人生で、この世界で違う人がいっぱいいるじゃないですか。いい人も悪い人もいるから、アズカはもっといい人になりたいと思いました」

 一生懸命に日本語を紡ぐアズカに尋ねた。「みんなをハッピーにするということですか?」。アズカは「そうです」と満面の笑みで、深くうなずいた。

「アズカだけじゃなくて周りの人も元気になったら『アズカの勝ち』って思います。学校でも、みんなは朝は寝起きで元気じゃない。アズカは寝起きの時でも元気だから、みんなからウザいウザいって言われるけど、多分アズカがいなくなったら寂しいと思う(笑)」

 アズカの横顔は、いつの間にか晴れやかな笑顔だけが残っていた。鳥取城北を高みへ押し上げたオールラウンダーは、新しいステージへと踏みだす。これからも彼が振りまいた笑顔の先に、数えきれないほどの幸福が咲き誇るだろう。

文=小沼克年

【動画】ウインターカップ2025準決勝…鳥取城北vs福大大濠のハイライト映像