負傷期間が長引き、満足のいくパフォーマンスを披露できずにいる三笘(C)Getty Images「もっと戻さないとチームの…

負傷期間が長引き、満足のいくパフォーマンスを披露できずにいる三笘(C)Getty Images

「もっと戻さないとチームの力にはなれない」

 ブライトンの三笘薫が、12月13日のリバプール戦(プレミアリーグ第16節)で復帰した。左足首の怪我で長らく戦列を離れていた28歳が負傷したのは、9月27日のチェルシー戦(プレミアリーグ第6節)。以降、戦列復帰までおよそ2か月半を有したことになる。

 10月5日のウォルバーハンプトン戦から今月7日のウェストハム戦まで、プレミアリーグは9試合も欠場した。ウォルバーハンプトン戦後の会見で、ファビアン・ヒュルツェラー監督が筆者の質問に対して、「軽症。すぐに戻ってくる」と答えたことが思い出される。

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 その後も三笘の離脱期間は長引いたが、指揮官は“早期復帰”の可能性をほのめかし続けた。11月22日のブレントフォード戦後には「構造的な問題はないのだが、違和感があるようだ。例えば、ボールを蹴る時に100%の状態で蹴ることができない。私自身の痛みではないから形容できないが、カオル自身が克服しなくてはならない。彼がすぐに復帰してくれることを望んでいる」と説明。なんとも腑に落ちない内容だった。一連の回答はブライトンサポーターに「このミステリーは何だ?」と心配させ続けたくらいだった。

 しかし、前述のとおり、ついにリバプール戦で背番号22は、待望の復帰を果たす。実は、その数日前に、筆者は本人と顔を合わせていた。クラブ側から通訳としての仕事を依頼され、ブライトン郊外のランシングにあるトレーニングセンターに訪れていたからだ。その際に広報に三笘と簡単な質疑応答をさせてもらえないかと頼んでみたものの、「残念ながら、上層部からのOKが出なかった」とのお断りを受けた。

 この時、トレーニングを終えたばかりの三笘とは、インタビュールームに姿を現した際に「お疲れさまです」と明るい表情で挨拶をした。「調子はどうですか?」と聞いてみると、「悪くないです」とだけ答えてくれた。その様子から復帰間近なのではないかと感じたが、わずか4日後、推測どおりに彼はプレミアリーグの舞台に戻ってきた。

 迎えたリバプール戦。64分からピッチに送り込まれた日本代表アタッカーは、久々のピッチの感触を確かめながらアディショナルタイムを含めて約30分もプレー。左サイドで味方と連携して好機を演出する場面はあったものの、昨季のリーグ王者を相手に大きなインパクトは残せず。チームも0-2で敗れた。

 約2か月半ぶりにチームに戻った三笘について、試合後の会見で、ヒュルツェラー監督は「カオルの復帰はとても重要なことだ。長い怪我だったが良い形でスタートできたし、コンディションも悪くなさそうだった」と振り返っている。

 ただ、残念ながら、筆者はこの試合の現地取材が叶わなかった。そのため本人から生の言葉を聞けていないのだが、取材をした同僚の日本人記者によると、三笘は「まだコンディションは戻りきっていない」と述べ、「もっと戻さないとチームの力にはなれない」と話したという。自身の言葉どおり、テレビで観戦していた画面越しからも、完璧な状態からは、程遠いというのが伝わった。

ひとたびピッチに立てば、相手の守備網を切り裂くトリガーとなる三笘。指揮官の信頼も厚い名手は、復帰以降も徐々に存在感を示し始めている(C)Getty Images

“面白味”を失ったチームの希望に

 復帰2戦目は、12月20日に行われた昇格組のサンダーランド戦だった。試合前の定例会見でヒュルツェラー監督は「カオル個人のスキルがチームに大きく役立つはずだ」と期待を込め、次のように続けた。

「1対1で彼を止めに行くのは難しいと相手は分かっている。だから二人がかりで止めに来ることになると思う。となれば、味方にマークの浮く選手が出てくるはず。それだけでもカオルの貢献は特大だ。そして何より、我々には彼のゴールが必要だ。彼はチームでもトップレベルの選手の一人だから、貢献度は非常に大きい」

 そして、この試合でも、前節と同様に後半途中から30分程度ピッチに立った三笘は、スコアレスの状況で懸命にゴールを目指した。動きそのものは前節よりもシャープになったものの、乗り込んできたアウェーチームは指揮官の予想どおり、徹底マークを展開。さらにディフェンスラインを低く設定され、人数をかけた分厚い守備を崩せなかったブライトンは、スコアレスのまま、試合終了の時を迎えた。

 そこから1週間後、敵地でのアーセナル戦にブライトンは挑んだ。試合前からシーガルズ(ブライトンの愛称)のサポーターやチーム関係者の多くが、このタイミングでの日本代表MFの先発出場を期待していた。しかし、蓋を開けてみれば、三笘はクリスマス期間中に体調不良となり、この日はスカッドにさえも含まれなかった。ノースロンドンでの試合後、ヒュルツェラー監督は「病気だ。長引くことなく、30日に行われるウェストハム戦での復帰を期待している」と言葉を振り絞った。

 開幕から11月までのブライトンは、苦戦を強いられながらも勝点を重ね、一時はチャンピオンズ・リーグ枠獲得圏内となる4位にまで上昇した。一方で、試合内容を見てみると攻守に安定感を欠き、面白みのないサッカーが悪目立ち。加えて12月に入ってからは0勝2分3敗(ウェストハム戦前まで)。プレー自体に覇気がなく、順位も13位にまで急降下している。それだけに、三笘の完全復活が待ち遠しく、チームにとっては“希望”にさえなりつつある状況だ。

 そして、アーセナル戦から中3日で訪れたウェストハム戦で三笘はスカッドに返り咲いた。ベンチからのスタートとなり、投入されたのは、58分。1点を追う場面だった。

 ピッチに上がった直後から、三笘は積極的に仕掛けた。「途中から出る選手が勢いに乗せないといけないなと思ってましたし、ビハインドだったんで、やることも決まってたかなと思います」とは、試合後の本人の弁である。

 59分には左サイドから左足でクロスを放り込み、直後の60分には果敢にドリブルを仕掛ける。対峙したウェストハムの右サイドSBカイル・ウォーター=ピータースとFWジャレッド・ボーウェンが二人がかりで止めに入り、ボックス内でボーウェンに足をかけられたと思われたが、ビデオ判定の結果、PKは与えられなかった。

 さらにその数十秒後には、三度、三笘は仕掛けて、左足で上げたクロスは敵DFに当たってコーナーキックを獲得。ブライトンはこのCKをジョエル・ヴェルトマンの同点ゴールへと繋げた。

半年後に迫るワールドカップを冷静に見定める三笘の語った目標とは(C)Getty Images

なぜバイエルンでの「新たな挑戦」を選択しなかったのか

 これらはすべて、三笘がピッチに送り込まれてからわずか3分の間に起こったことだ。28歳は「試合にはうまく入れた」と振り返った刹那、「……けど、最後のところでちょっと決めきれなかったところと、チーム全体として最後のとこ押し込んでたんで、勝ち切らないといけない」と続けた。

 反省した言葉とは裏腹に、動き自体にはキレがあり、この数週間で大幅にコンディションが上がっているのは確か。そのことを本人にぶつけると、「90分通しては、まだわかんないですけど。30分でできる限りはやりました」と、ある程度満足しているようだった。一方で、「でも、全然まだまだです」と吐露。三笘“らしい”答えが直後に続いた。

 本人にとっても、ワールドカップを控えた今後の半年間は、非常に重要な期間となる。

 考えてみれば、昨シーズン終了前後から「移籍濃厚」とみられていた28歳がイングランド南部の中堅クラブに残留した最大の理由が、出場機会の減少を危惧したからだとされている。今シーズン第2節のエバートン戦前、クラブ関係者と三笘が移籍しなかったことについて話した際に、「報道にあった通りで、移籍の話はあったがレギュラー確約ではなかったようだ」と言われたことが思い出される。

 フットボーラーとして高みを目指し、常に高い意識を持つのが三笘という選手だ。移籍先として挙がっていた最有力候補が、バイエルン・ミュンヘンだったことを考えると、普段であれば、欧州屈指のトップクラブでの「新たな挑戦」を、もろ手を挙げて歓迎していたことだろう。しかしながら、今回は状況が異なった。今夏のワールドカップ出場への影響も考慮する必要があったからである。

 ウェストハム戦で、ついに2025年の最終戦を終えた。自身の一年を振り返った三笘は、次のように話している。

「自分の成長曲線的にはもっと上に行きたかったですけど、うまくいかないなってところは感じながらの2025年でした」

 さらに新年に向けては、「来年はワールドカップもあるんで。時間もないですし、まずはブライトンで、今の中位は厳しい状況なので、ここで勝点を拾っていかないとなと思ってます。ワールドカップについては代表に選ばれること。そしてチームとしてヨーロッパカップ戦出場権獲得をしっかりと狙っていけるようにと思ってます」

 わずか半年後に迫るワールドカップに向けて、26年の前半戦が、三笘にとって大きな意味を持つ6か月になるのは間違いない。

[取材・文:松澤浩三 Text by Kozo Matsuzawa]

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