強豪相手にも結果を残してきた日本代表は、本大会でも躍進できるか(C)Getty Images 日本代表を率いる森保一監督…

強豪相手にも結果を残してきた日本代表は、本大会でも躍進できるか(C)Getty Images

 日本代表を率いる森保一監督は、2026年北中米ワールドカップで「優勝」を目標に掲げている。

 大志を抱くのは結構だが、さすがに風呂敷を広げ過ぎだろう。過去7回のW杯出場で、まだ一度もベスト16の壁を破ったことがない日本が、階段を一段飛ばし、いや三段飛ばしで駆け上がり、いきなり世界の頂点に立てるとは正直思えない。

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 W杯の優勝経験国はたったの8か国。しかも自国開催以外で初優勝を成し遂げたのは、古くは西ドイツ(1954年スイス大会)とブラジル(58年スウェーデン大会)、近年ではスペイン(2010年南アフリカ大会)の3か国だけだ。

 やはり現実的な目標は、過去最高のベスト8だろう。ただし大前提として、今大会から出場国が従来の32か国から48か国に増えることを忘れてはならない。仮にグループステージを突破しても、決勝トーナメントはベスト32からスタートする。つまりベスト8にたどり着くには、世界の列強国を相手に2勝が必要なのだ。これまで決勝トーナメントで一度も勝ったことがない日本にとっては、かなり高いハードルだ。

 それでも、グループステージは突破できると見ている。オランダ(FIFAランク7位)、チュニジア(同41位)、そして欧州予選プレーオフに回ったウクライナ(同28位)、ポーランド(同31位)、スウェーデン(同43位)、アルバニア(同63位)のいずれかと対戦するグループFは、アジア勢でFIFAランク最上位(18位)の日本にとって、それほど難易度が高いとは思わないからだ。

 初出場のキュラソーやカーボベルデといった明らかな格下がおらず、実力差がさほどないグループとはいえ、日本が苦手とする南米勢や、圧倒的なフィジカルを有するコートジボワール、セネガルといった西アフリカ勢を回避できたのは大きい。個ではなく、組織と戦略の勝負になりそうな欧州の2か国、アフリカ勢ながら欧州的なスタイルのチュニジアとの対戦には、十分な勝算が見込める。

 実際、このグループで本命視されるオランダにしても、前回大会で日本が撃破したドイツやスペインと比較すれば、総合力はワンランク落ちると見ていい。

 CBのフィルジル・ファン・ダイク、中盤のライアン・フラーフェンベルフ、前線のコーディー・ガクポというリバプールトリオを筆頭に、各セクションにワールドクラスがひしめくものの、そうしたタレント力を戦術に落とし込めず、最大化できない指揮官のロナルド・クーマンこそが、このチームの最大の弱点だ。柔軟性を欠き、自らの考えに固執するクーマンが、墓穴を掘る可能性は十分にある。

 おそらく、まだチームとしての足並みがそろっていないであろう初戦で対戦できるのは、暑熱対策や時差対策など、準備段階でのきめ細やかさで優る日本にとっては逆に好都合だ。

 むしろ警戒すべきは、過去の対戦成績が5勝1敗と相性のいいチュニジアとの第2戦かもしれない。アフリカ予選を無失点で突破し、11月の親善試合ではブラジルをPKによる1失点に抑え込んだ(1-1のドロー)堅守に手を焼き、仮にここで勝ち点を失うようなことがあれば、グループ突破に一気に暗雲が立ち込める。前回大会でも初戦でドイツから金星を挙げた後、続くコスタリカ戦で相手の守備ブロックを崩せず、よもやの敗戦を喫している。

 もっとも、4年前の苦い経験を糧とする森保ジャパンが、同じ轍を踏むとも考えにくい。オランダ戦を最低でもドロー、そしてチュニジア戦で勝ち点3を積み上げることができれば、グループ1位通過も十分にあると見ている。

 ただし、ベスト8を目指した戦いは、ここから一気に難易度がアップする。

 ラウンド32で待ち構えるのはグループCの1位か2位で、順当ならブラジル(FIFAランク5位)かモロッコ(同11位)となる。どちらも一筋縄で倒せる相手ではない。10月の対戦で日本に歴史的初勝利を献上したブラジルが、王国の威信にかけてW杯本番で同じ失敗を繰り返すとは思えないし、そして前回大会でアフリカ勢初のベスト4入りの快挙を成し遂げたモロッコは、いま世界で最も勢いのある国の1つだ。

 このラウンドで、そのいずれかとぶつかるのは不運だが、しかし最低でもベスト8入りを目指すのであれば、こうした強国の壁は遅かれ早かれ乗り越えなくてはならない。

 前回大会開幕時のFIFAランクが22位で、それまで一度しかベスト16入りを果たしたことのなかったモロッコの成功は、日本にも大きな希望を与えるだろう。実を言えば4年前のモロッコには、いわゆるメガクラブに在籍する選手が、世界最高峰の右SBアシェラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン)を含めてわずか3人しかいなかった。それは4年後の現在も大きくは変わらず、むしろ欧州5大リーグでプレーする選手の数は日本のほうが多くなっている。

 それでもカタールの地でモロッコが快進撃を遂げられたのは、絶対的な守護神ボノを中心とした強固なディフェンスがあったからだ。彼らはトーナメント仕様とも言える堅守を支えに、ラウンド16でスペインを、準々決勝でポルトガルをシャットアウトしてみせた。

 4年前と比べてもタレント力が劇的に高まった現在の日本代表は、「史上最強」と呼ぶにふさわしい。得点源であり、チームリーダーの1人でもあった南野拓実が12月22日に左膝十字靱帯を断裂し、W杯出場が絶望的になったのは間違いなく大打撃だ。それでも2列目には堂安律、久保建英、鎌田大地、三笘薫、中村敬斗、伊東純也と多士済々の実力者がそろい、さらに決定力不足という積年の課題も、上田綺世の台頭で解消された。

 しかし、だからこそ浮き彫りになるのが、守備陣への不安だ。ここにきてCBに鈴木淳之介や渡辺剛といった新戦力が台頭しているものの、やはり前回大会を経験した冨安健洋、伊藤洋輝の故障による停滞、そしてアジア最終予選で3バックの一角を担った町田浩樹の長期離脱(24年8月に左膝前十字靭帯を断裂)が、最終ラインの選手層と信頼性に暗い影を落とす。

 左手の複雑骨折で、早くても復帰は来年2月と言われる守護神・鈴木彩艶も含め、彼らが本大会までにどれだけコンディションを回復できるかは、とりわけ守備力が問われるW杯の決勝トーナメントにおいて、重要な鍵を握りそうだ。

 森保ジャパンが「4年前のモロッコ」になれるかどうか──。その試金石が、まさしくラウンド32のモロッコ戦になる可能性は大きい。

[文:吉田治良]

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