また1つ、ゴルフ界最高峰の米国男子ツアー(PGA)の歴史に名を刻んだ。25年1月のザ・セントリーで、松山英樹(33=LE…
また1つ、ゴルフ界最高峰の米国男子ツアー(PGA)の歴史に名を刻んだ。25年1月のザ・セントリーで、松山英樹(33=LEXUS)が72ホールでのツアー最少スコアとなる通算35アンダーを記録。22年の同大会でキャメロン・スミス(オーストラリア)がつくった従来の記録を1打更新し、PGA通算11勝目を挙げた。21年マスターズでアジア人初優勝を飾り、25年は世界初の通算35アンダーに到達。新たな道を切り開き、進化を続ける日本の第一人者が、25年を総括、26年への思いを語った。
【取材・構成=高田文太】
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25年は年明け早々、米ハワイから快挙を日本に届けた。松山は1月2日に開幕したザ・セントリーの4日間で、通算35アンダーのPGA新記録を樹立した。最終日の最終18番パー5で、2メートルのバーディーパットを沈め、従来の記録を1打更新する勝負強さ。アジア勢最多を更新するツアー通算11勝目を挙げた。年末に行われたインタビューでは、笑顔で当時を振り返った。
松山 (ザ・セントリーから)ほぼ1年経つので、ちょっと忘れていますけど(笑い)。35アンダーというのは、なかなか出るものでもないですし、PGAの記録を出せた。これから塗り替えられるかもしれないですけど、とりあえず1年は記録を保てたというのはうれしいなと思います。
新記録を出せた要因については「それは誰も分からないですよ」と、明確な理由や特別な手応えなどを持って、試合に臨んだわけではないという。年末に現地入りし、大みそかも元日も練習。さらにオフ明けの開幕戦という、調整の難しさが予想されるが「それはないですよ」とさらり。ベースの高さを物語っていた。
だからこそ自負がある。26年は金谷拓実、久常涼、中島啓太、平田憲聖らもPGAに参戦するが、日本人の第一人者の地位を脅かすとは思っていないし、譲る気もないと語気を強めた。
松山 (他の日本人を)「怖い」と思うことはないです。やっぱり上位にいれば、負けたくないですし。自分のベストのパフォーマンスを出せれば、負けるつもりはないので、今は。彼らが、自分のベストを出した時に負けるような感じになってくれれば、怖くなってくるんじゃないですか。
「そうなることを待っているのですか」と問われると、一段と語気を強めた。
松山 いや、待つつもりはないです。自分は、その先に行けばいい話なので。
先頭を走り続ける決意がにじんだ。だからこそ、開幕戦で最高の結果を残しながら、トップ10入りも、その1試合にとどまった25年は歯がゆい思いも残った。
松山 25年は「セントリー」で優勝してからスタート。その後、なかなかいいプレーができなくて、苦しい時間も長かったんですけど、最後に「ヒーロー」で優勝することができて、いい締めくくりもできましたし、今シーズンのきっかけもつかめたかなという感じで終われました。気分的には、いい気分で終わったかな、という感じですね。
12月にタイガー・ウッズ(米国)がホストを務める慈善大会ヒーロー・ワールドチャレンジで優勝した。PGA非公式も、一流の招待選手だけが出場する、ハイレベルな4日間大会だ。
松山 最後に追いつかれて、プレーオフになりましたけど、そこで、いいセカンドショットを打って勝てたのはよかったなと思います。ここ何年間か、ああいう厳しいピンポジションの時に、思い切って振り抜いて打つことができていなかった。その中でしっかり、ピンに向かって構えて打てたということは、ここ何年間かで、なかったことだったと思うので、率直にうれしいなと思います。それをあのプレーオフのセカンドで打てたということは、今後につながっていくんじゃないかなと思っています。
シーズンの年間王者を争う8月のツアー選手権後に「かなり変えないといけない」と、開幕戦以降は上位に進出できず、スイングなどを見直すと誓っていた。
松山 スイング的にも変えましたし、ストローク的にも変えていた部分はあるんですけど、それが、なかなか、うまいこと、いったり、いかなかったり。でもそれが最後の「ヒーロー」の時に、つながってきたかなというのはありました。変えていったことで、最後につながったという感じですね。今シーズンにつないでいけるかどうかは、まだ謎ですけど、そのままいければなと期待してます。
昨年から日本開催のPGAの試合が、ZOZOチャンピオンシップから、ベイカレント・クラシック・レクサスに替わった。コースも変わったが、変わらず駆けつける多くのファンに恩返しをしたい思いは強い。
松山 やっぱり結果を出して、最終日に優勝争いしているところを見てもらえるように頑張らないといけない、っていう感じです。
だからこそ“練習の虫”と称されるほど、クラブを振り続ける松山は、練習から自信をつける姿勢を変えない。「練習量をこなさないと、技術は伴わないと考えているのですか」と問われると、持論を展開した。
松山 そうですね。「伴わない」というわけでもないですけど、した方が自信にもつながります。やる内容によっては、無駄なことも多いですけど、それも含めて練習って大事なんじゃないかなって思いますね。
PGAに本格参戦して12シーズンが経過した。本場の米国で一流と認められ、現地のファンからリスペクトもされるという点では、野球の大谷翔平と通じる。ただ松山は共感する部分があるか問われると「ないですよ。あそこまでいくと。『すごいな』と思っています」と、苦笑交じりに話した。どこまでも謙虚。だからこそ、最初と最後を優勝で飾っても、昨年の自己評価は「50点ぐらいじゃないですか」と厳しい。裏を返せば、まだまだ、伸びしろも感じているということ。その上で次の夢、目標を聞くと迷いなく語り始めた。
松山 やっぱり、もう1回、メジャーで勝つことですし、優勝の回数をもっと増やすこと。まずは早めに優勝して(4月の)マスターズに、いい状態で挑むということが、第1の目標です。悔しいのは優勝以外、毎週です。プレッシャーのかかる場面で、プレーすることが大事だと思います。
求めているのは、ヒリヒリするような緊張感と次の新境地。1月15日にハワイで始まるPGA開幕戦のソニー・オープンで、26年の松山の戦いの幕が開ける。
◆松山英樹(まつやま・ひでき)1992年(平4)2月25日生まれ、松山市出身。4歳でゴルフを始め、高知・明徳義塾高で全国優勝。東北福祉大2年だった11年マスターズ27位で、日本人初のローアマ獲得。同年11月の三井住友VISA太平洋マスターズでアマチュア優勝。プロ転向の13年に国内ツアー賞金王。同年秋から米ツアーに本格参戦し、14年初優勝。21年4月のマスターズで日本人男子初のメジャー優勝。五輪は21年東京大会4位、24年のパリ大会銅メダル。最新の25年12月28日付世界ランキングは日本勢トップの17位。180センチ、90キロ。