静かに、そのときを待つ。侍ジャパン井端弘和監督(50)が、3月のWBCを前に新年のインタビューに応じた。昨年11月にドジ…

静かに、そのときを待つ。侍ジャパン井端弘和監督(50)が、3月のWBCを前に新年のインタビューに応じた。昨年11月にドジャース大谷翔平投手(31)から直接電話で出場表明の報告が届いた。その舞台裏とともに、就任から2年、選手選考の苦悩や敗北の記憶、集大成となる大舞台へ向かう覚悟を語った。列島が注目するWBC開幕まで63日。結果がすべて。その覚悟を胸に、井端ジャパンが世界一を見据える。【取材・構成=小早川宗一郎】

吉報は何げない朝の日常で届いた。11月のとある日。井端監督はいつも通り午前6時に起床し、のんびりとした時間を過ごしていた時だった。

「確か朝7時台か8時くらいだったと思うんですよね。ご飯を食べながらボーッとして(外に)出る…さあ、これからという時に一気に目が覚めましたね」

いきなりスマホに着信が入った。相手はドジャースの大谷翔平。しかし、置いていたスマホに手を取って出る寸前で着信が止まった。

「出られなかったので折り返しました。鳴って取りかけたというか、気付いたら切れてしまって、すぐ折り返した感じですね」

やりとりはシンプルだった。だが、そこに大谷の侍ジャパンへの思いもにじむ。

「『これから発表します』という連絡を頂きました。細かいことはこれから詰めていこうかなということは言いましたけど、それくらいでしたかね」

その後、ほどなくして自身のインスタグラムで前回大会の写真とともに、日本語で「日本を代表して再びプレーできることをうれしく思います」と投稿した。

「まずはメジャーリーガーの中で表明していただけるというところで、ホッとは一瞬したかなと思いますけど、試合ではないのでとりあえず一安心はしたくらいで。すぐに『ではどうしよう』という考えが出てきたというところでは、発表してくれてちょっと前には進めたかなと思っています」

大谷の出場表明が与える影響は大きい。NPB選手はもちろん、メジャーでプレーする選手たちにとっても、大谷とチームメートになることは間違いなく1つのモチベーションになる。

「来てもらえるのは非常にありがたいと思っています。まずはプレーで引っ張っていってもらえるのは理想かなと思っています。どこから合流するかというのはここから詰めようと思っていますが、早く合流して、30人がそろってから、『さあ』という気持ちになれたらいいなと思っています」

ここに至るまでにも長い道のりがあった。侍ジャパンの監督を務めてから2年。苦しかったときとは。

「苦しい…苦しいのはずっと苦しいですよね。だけど選手選考というところでは、すごく悩んできた3シーズンかなと思います。いろいろなコーチの意見や、いろいろな人が本気で考えてくれていた部分があったと思います。コーチ、スタッフにはすごく感謝していますし、そういったところを大会で花開けたらいいかなと思っています」

代表の肝といえる選手選考。プレミア12でも負傷などによる辞退が相次いだ。再考に次ぐ再考に見舞われ、結果的に決勝で台湾に敗戦。日本代表を背負った中での「敗北」を現実として突きつけられた。

「(メンバーに)決まったと思っていてもケガをして…というところもありました。そういったところで、誰をどうするかはかなり意見がぶつかったところもあります。これは自分がコーチの時もそうだった。それだけ選手が1試合、1試合、全力でやっている成果なのかなとも思いますので、致し方ない点はいっぱいあるのかなと思っていますけど、ホッとする時がなかったです。決まって『もうよし大会』という中でもあったので。そういったところが一番、苦労したというか、うまくいかないなと思っていましたね」

1つの集大成といえるWBC。日の丸を背負う覚悟を持ってここまでやってきた。

「(侍ジャパンの監督をやって)プラスになるかどうかは分からないですけど、日本を代表する選手を率いることができる。そういったところは、なかなかできる経験ではないのかなと思っています。そういったところは一番大きいかなと」

23年のWBC前回大会はまるでドラマのようなシナリオを描いて世界一に輝いた。列島は歓喜し、野球熱がぐっと高まった。

「前回同様、野球ファンだけではなく日本国民の皆さんに喜んでもらえるような試合を、内容を見せたいなと思います。やっている方としては目先の1勝を目標にやっていこうかなと思います」

同時に、井端監督の背中には列島中からの期待という名の重圧がのしかかることになる。注目度と期待感は増すばかり。しかし心の中は整理されていた。

「重圧というより、勝つだけだなと。負けたらみんな目の色変えてみんなが来るし、それはそう。結果が全ての世界で生きてきているので」

そう言って自ら続けた。WBCを終えた後、どうなっているのか。何をするのか。

「当然、この大会で辞めるんですけど、(負けたら)今後一切野球界に関わらない方がいいのかなとか。こちらが納得したとしても世間は分からない。どうなるかは自分でも分からないですよ。勝ったとしても、もう野球いいわってなるかもしれないし、またやりたいなと思うのか…。でも、今話しててふと思いましたけど、勝ったとしたら、逆にもういいかなと思う気持ちが強いかもしれないですね。どちらかといったら反骨心でやってきたような野球人生だったので。スター街道じゃなく、何この野郎って思って、もう1回やってやろうって思ってやってきたので」

全ての答えあわせは、決着がついてから。前回大会の記憶を塗り替えるような、伝説が生まれるかもしれない。勝っても負けても語り継がれる、そんな大舞台が63日後に迫っている。