初詣スポットとして多くの参拝者でにぎわう、東京・神田明神。今年は「午年」ということもあり、“馬”にまつわる話題が競馬…

 初詣スポットとして多くの参拝者でにぎわう、東京・神田明神。今年は「午年」ということもあり、“馬”にまつわる話題が競馬ファンにとどまらず注目を集めている。実はこの神社には「御神馬」として本物の馬が暮らしていることを皆さんは知っているだろうか。今回は神田明神の加藤哲平権禰宜に、競馬とのつながりとここで暮らすポニーの「あかりちゃん」に関するお話を聞いた。(取材・文=netkeiba編集部)

 初めに神田明神とは、正式名称を神田神社といい、神田・日本橋・秋葉原・大手丸の内という東京の中心を氏子区域としている。創建は天平2年(730年)で、江戸時代には「江戸総鎮守」と定められ、1200年以上にわたって人々に寄り添ってきた。「繋ぎ馬」の家紋を掲げ、相馬野馬追の始祖とされる平将門も1309年にご奉祀され、境内の灯籠にも馬の紋を見ることができる。

 このように馬とも縁深い場所だが、冒頭に紹介した「御神馬」とは一体何なのか。それは神様が乗る馬として、古代から神聖視されている由緒ある存在。ただ、管理には手間や費用もかかるため、絵馬や像として置き換わっていることが多く、現代で御神馬がいる場所は数少ない。そんな中、なぜ神田明神は1頭のポニーを迎えたのか。そのきっかけは先代の宮司である大鳥居信史氏の発案。義理の息子で当時神田神社の権禰宜であった千島俊司氏が、かつてJRA競馬学校の教官を務めていた経歴から、「神田神社にぜひ馬を迎えよう」と動き出したという。ちなみに千島氏は兼務する立石・熊野神社で、御神馬として3頭のポニーを繋養している。

 あかりちゃんは芦毛の15歳。信州・佐久高原生まれで、性格は穏やか。早朝には散歩に出て運動をしており、主食は牧草だが、フルーツなど甘いものが好物だ。取材時はのんびりと寝ていたが、リンゴを与えられると、ゆっくりと味わうように食べる姿が可愛らしかった。あかりちゃんに関するグッズも人気で、ぬいぐるみや持ち塩のほか、「先月開催された特別企画展『あかり15歳記念展 神田明神と神のうま』は大きな反響がありました」と語った。

 ジョッキーたちを育てた千島氏の縁から、JRA関係者の参拝も多いという。「特に勝守が人気です。神田神社は徳川家康公が関ヶ原の戦いの前に戦勝祈願をされた場所で、そのご縁から置かれています」と紹介した。一方で、ファンに人気の御守を尋ねると、紫色のおしゃれなデザインが特徴の「レース御守」だという。当初は可愛らしさを重視して制作されたが、布の“レース”と公営競技の“レース”を掛けて、男女問わず手に取られているそうだ。

 初詣に訪れる人々に向けて、「手水をしてから本殿の神様にまずご挨拶いただき、その後はご自由に境内をお周りください。なお、あかりちゃんへの餌やりはご遠慮いただいておりますので、お気持ちは柵に設置しているお賽銭箱へお願いいたします」と呼びかけた。商売繁盛の御利益を求める人々はもちろん、アニメファンやIT関係者など、幅広い層が訪れる神田明神。競馬ファンも、午年の初詣に足を運べば、より良い1年が過ごせるかもしれない。