一塁で大谷とゲレーロJr.が笑顔を見せた(C)Getty Images 大歓声よりも、敵意に満ちたブーイングの方が忘れ難…

一塁で大谷とゲレーロJr.が笑顔を見せた(C)Getty Images
大歓声よりも、敵意に満ちたブーイングの方が忘れ難い夜がある。ドジャースの2025年シーズンを振り返るとき、ワールドシリーズ開幕戦の大谷翔平が見せた笑顔は、その象徴だ。重圧と野次を正面から受け止めながら、どこか楽しむように振る舞った姿は、ドジャースの主砲が“本物の勝負の舞台”を手に入れたことを強く印象づけた。
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現地時間10月24日、カナダ・トロント。ワールドシリーズという最高の舞台で、ドジャースは宿命とも言える地、ロジャース・センターに乗り込んだ。そこで待っていたのは、地鳴りのようなブーイングと、異例の合唱だった。
しかし、その敵意の渦中で、大谷翔平が見せたのは意外な「笑顔」だった。彼がかつて求めた“ヒリヒリ”する環境の答えが、そこにはあった。
2023年12月のFA狂騒曲。「オオタニがトロント行きのプライベートジェットに乗った」という誤報に踊らされたブルージェイズファンの傷跡は、1年以上が経過しても癒えてはいなかった。
ワールドシリーズ第1戦、4万4000人を超える観衆で埋まったスタンドから浴びせられたのは、強烈な野次とブーイング。特に9回、ドジャースの大敗が濃厚となった場面での第5打席には、スタジアム全体から「We don’t need you!(俺たちにお前はいらない!)」という大合唱が巻き起こった。
ディフェンディングチャンピオンの主砲として、そしてかつてトロントを「振った」男として、大谷はこれ以上ないほどの敵意にさらされた。
しかし、この異様な光景に誰よりも余裕を持って応じたのが、大谷本人だった。四球を選んで一塁へ歩くと、相手の主砲ブラディミール・ゲレーロJr.に対し、イタズラっぽく笑いながらこう語りかけたのだ。
「They don’t want me(俺のこと、いらないらしいよ)」
その模様が全米中継のカメラに映し出されると、SNSは即座に反応。「この状況でジョークを飛ばせるのか」「メンタルが異次元」と驚きの声が広がった。敵であるはずのゲレーロJr.も思わず爆笑し、殺伐とした空気が一瞬にして和やかなものへと変わった。
ブルージェイズのジョージ・スプリンガーが「まぁ、ショウヘイ・オオタニだからね」と苦笑いした通り、その存在感はもはやブーイングすらも演出の一部に変えてしまうほど圧倒的だった。
かつてエンゼルス時代、勝利から遠ざかるチームの中で大谷は「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」と漏らしていた。
2025年、彼はその言葉通り、あるいはそれ以上の環境を手に入れた。ワールドシリーズ初本塁打を放ってもなお大敗する厳しさ、そして敵地のファンから一斉に敵意を向けられる孤独。しかし、それを「面白い」と言わんばかりに笑い飛ばす姿は、彼が単なるスター選手ではなく、勝負の極限状態を愛する真のプロフェッショナルであることを証明していた。
この試合、ドジャースは4-11で大敗を喫したが、大谷が見せたあの笑顔は、チームが決して精神的に屈していないことを示す無言のメッセージでもあった。
あのワールドシリーズを振り返る時、我々は改めて気づかされる。大谷翔平が求めていたのは、称賛ばかりの舞台ではなく、こうした剥き出しの感情がぶつかり合う「本物の勝負」だったのだということに。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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