今春の全国大会で登板した近大・北見隆侑(りゅうすけ)投手(4年)は、最後の秋の公式戦を前に右ひじが悲鳴をあげた。今年7月…
今春の全国大会で登板した近大・北見隆侑(りゅうすけ)投手(4年)は、最後の秋の公式戦を前に右ひじが悲鳴をあげた。
今年7月1日にトミー・ジョン手術を受け、秋はベンチを外れた。4年春までに通算14勝をマークしたリーグの中心選手が、苦渋の決断に至った。「みんなと大学で最後まで野球をやりたかったけど、将来の方が長いので」。
今年10月のドラフト会議で指名を受けた主将で広島3位・勝田成(なる)内野手(4年)とは下級生からともに主力。秋開幕前、勝田は「北見の分も」と気合を入れていた。
176センチ、88キロ。憧れの投手は、多彩な変化球を操り「目標とする抑え方をする」菅野智之だ。
四死球の少ない類いまれな制球力が光る北見。「球速がない分、コントロールで打者を打ち取るタイプです。試合前に捕手と話し合うので、試合で首を振ることはほとんどないですね」。持ち味の臨機応変さも駆使して幾多の窮地を乗り切ってきた
公立・乙訓(京都)のエースで20年秋に近畿大会初戦で天理(奈良)の達孝太(現日本ハム)と投げ合った。右腕の景色が変わったのは「進学後」。2年春にベンチ入りし“人生初全国”に出場。「神宮球場の通路に入る前が一番緊張して。入ってしまえば、そこまで緊張しませんでした」。関西の5連盟の選手が対戦する5リーグオールスターにも選出され、最終学年になる前にリーグの中心選手の立ち位置に上り詰めた。 3年春に最優秀投手に輝いた逸材。2年春から3年秋までの4季中、2季は関大の金丸夢斗(現中日)がベストナインを獲得。「やっぱりベストナインが取りたかった。金丸さんがいたので、上には上がいると痛感しました(笑い)」。
他大学のライバルながら、金丸と意気投合した。「小さな手の僕とは手の大きさが違う」と謙遜したが、金丸からボールの握りを学び、強さの秘訣(ひけつ)を学んだ。4年秋に同期4人がプロ志望届を提出。北見は会見場で、勝田と楽天7位阪上翔也外野手の指名を見届けた。
北見は来春、東海地区の強豪社会人チームで野球を継続する予定だ。「一度リセットして、社会人野球で再びスタートします」。4年秋はベンチ外でリーグ戦2位と心残りもあったが、巧みな投球術を生かし、アマチュア最高峰の舞台で白星を積み上げる。【中島麗】