白鷗…
白鷗大学の2年ぶり3度目となる優勝で幕を閉じた『第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)』。2026年1月29日に『Bリーグドラフト2026』が初開催されることもあり、今大会は次代のBリーグを担う逸材たちが自らの価値を示す重要な舞台となった。
勝敗を左右する場面で存在感を放ち、プロスカウトの視線を引き寄せた選手は少なくない。本稿では、Bリーグドラフト2026にエントリーした選手の中から、とりわけインカレで印象的な活躍を見せた5名をピックアップし、それぞれの強みと可能性に迫る。
取材・文=小沼克年
■佐伯崚介(白鷗大学)
白鷗大学が誇る3&D。大学では2年と4年次にインカレの頂点に立ち、いずれの大会もスターティングファイブの1人として日本一に貢献した。
佐伯崚介のストロングポイントは、高精度の3ポイントシュートと粘り強いディフェンス。2025年のインカレ決勝では17得点7リバウンド3アシストをマークし、第4クォーター終盤には決定打ともいえる3ポイントを射抜いた。
「今年はチームを引っ張る存在になろうと思っていました。オフェンスでは積極的に攻めて、もし自分が攻められなくても周りに得点を取れる選手がそろっているので、リバウンドなどの泥臭いプレーで貢献するという意識でプレーしました」
優勝後にそう話したシューティングガードは、4年間で大学屈指のディフェンダーへと成長を遂げ、相手から恐れられる存在となった。自身の守備力について「大学では通用したと思います」と口にしたが、Bリーグでも通用するプレーヤーになるべく、さらなる進化を見据えている。
「やっぱりBリーグになると体の大きさも違いますし、外国籍の選手もたくさんいるので、もっとフィジカルレベルを上げて日本人選手だけじゃなく外国籍選手も守れる選手になりたいと思います」
■岩屋頼(早稲田大学)
高いバスケットIQを持つフルスペックガード。今シーズンはキャプテンとして先頭に立ち、早稲田大学を57年ぶりの1部リーグ制覇とインカレ準優勝に導いた。大学3年からは3人制にも挑戦しており、3x3U23男子日本代表にも選出された経歴の持ち主でもある。
洛南高校時代は星川開聖(宇都宮ブレックス)などの得点を量産できる選手がいたため、ゲームメイクやアシスト役に回ることが多かったが、大学では高い得点力を存分に発揮。今シーズンのリーグ戦では得点ランキング3位となる平均16.8得点をマークした。
岩屋頼はシューティングガードのポジションでも問題なくプレーでき、「2番でプレーするなら得点を取らないと試合に出ている意味がない」と、ドライブと3ポイントシュートを武器に内外から果敢にリングを狙う。劣勢の場面や勝負どころで好プレーを見せる点も魅力。チームを落ち着かせるシュート、ディフェンスでは鋭い読みからスティールを奪うなど、攻守にわたって勢いと安定感をもたらす。
所属チームでは、ミニバスから大学までキャプテンを務めてきた。リーダーシップにチャンスメイク、得点、守備と冷静にコートを支配する司令塔は、Bリーグでも勝利の確率を上げる重要なピースとなるはずだ。
■泉登翔(日本大学)
2024-25シーズンには広島ドラゴンフライズの特別指定選手としてBリーグデビュー。高校、大学の両カテゴリーでチームを日本一へ導いた泉登翔は、3ポイントシュートを最も得意とするシューティングガードだ。
思い切りよく放つ打点の高いシュートは次々とリングに吸い込まれ、果敢なドライブからも得点を重ねる。2連覇を狙った今年のインカレではベスト8で涙をのんだが、準々決勝ではゲームハイとなる26得点。3ポイントは11本中6本成功の高確率で沈めた。大学ではハンドラーのスキルも大きく向上。自らボールプッシュし、ピック&ロールから攻撃の起点となる場面も多々あり、ポイントガードをサポートできる点も強みの1つだ。
戦術理解に優れるプレーヤーでもあり、大学ラストイヤーとなった今年はプレーヤー兼コーチのような立ち位置でチームをけん引。ベンチでは作戦ボードを手に戦術を整理し、仲間を鼓舞し続けた。
自らを「なんでも言っちゃうタイプ」と称する闘志むき出しのプレーは必見。その感情が時にレフェリーに向いてしまうこともあるが、ルーキーイヤーからコート内外で着火剤となる可能性は十分にある。
■田中流嘉州(大東文化大学)
「多分、僕が転んでるの見たことないですよね?」。そう笑って話すのは大東文化大学の田中流嘉州だ。194センチ95キロのパワーフォワードは、大学随一のフィジカルの持ち主。ゴール下での力強い得点とリバウンドに加え、スクリナーとして味方を援護する献身性も兼ね備えている。
大学2年次に右ヒザの大怪我を負って長期離脱を強いられたが、「プロになる」という目標を胸に、リハビリやトレーニングに励み自らを鍛え上げてきた。
屈強な外国籍選手がひしめき合うBリーグでは、日本人のインサイドプレーヤーは出場機会に恵まれないのが現状だ。しかし田中は、「フィジカルには自信があるので、アジリティの部分を意識してトレーニングしています」と大学生活を通してプレーエリアを拡大。外角からのドライブやシュートアテンプトを増やし、今年のインカレでは2試合で3本の3ポイントシュートを決めるなど確かな成長を示した。
明るいキャラクターでムードメーカーとしての一面もあり、コート外でもスタッツに表れない貢献が期待できる。まずは外国籍選手にも対等に渡り合うディフェンスとハードワーク、チームを活気づけるポジティブなエナジーで存在感を示してくれそうだ。
■赤間賢人(東海大学)
志望届の申請締切が2日後に迫った12月17日、“サプライズエントリー”をしたのが赤間賢人だ。20歳のシューティングガードは、大学2年ながらプロ選手へのチャレンジを決断した。
地元の直方市立植木中学校(福岡県)から藤枝明誠高校(静岡県)へ進学した赤間は、高校2年次にインターハイとウインターカップでベスト4を経験。当時から類まれな得点能力で会場を沸かし、全国にその名を轟かせてきた。高校時代には恩師の金本鷹コーチによる「将来がすごく楽しみな選手ですので、将来を見据えて」という考えのもと、ポイントガードにも挑戦。得点のみならず周りを生かすプレーを磨いた。
東海大学でも早々にプレータイムを勝ち取り、今シーズンは優勝を果たした「第65回関東大学バスケットボール新人戦」で最優秀選手賞を受賞。4位で終えたインカレではチームトップとなる計4試合で平均14.3得点の活躍を見せた。
感情をあまり表に出すタイプではないが、コートに立てば黙々と得点を刻む負けず嫌いのスコアラーへと変貌する。フィジカルやディフェンス面の強化は、避けては通れない壁となるだろう。しかし、赤間の将来性とポテンシャルは“ドラ1候補”に相応しい魅力を秘めている。