◆第105回全国高校ラグビー 第3日 ▽2回戦 東福岡38―24早実(30日・花園) 2回戦16試合が行われ、シード校の…

◆第105回全国高校ラグビー 第3日 ▽2回戦 東福岡38―24早実(30日・花園)

 2回戦16試合が行われ、シード校の東福岡が初戦に臨み、早実(東京第2)に38―24で勝利した。東福岡でのプレーを夢見ていた兵庫・芦屋市の中学2年生だった大上(おおうえ)稜介さん(享年14)が2023年、不慮の事故で急死。テレビ番組を通じて家族と交流し、高校に入学するはずだった今年4月に新入部員として迎えられた。亡き仲間に花園での勝利をささげた。慶応志木(埼玉第2)は鹿児島実に勝利し、03年度大会の樹徳(群馬)以来となる、初出場で年越しを果たした。両校が1日の3回戦で対戦する。

×    ×    ×    ×

 天国の仲間へ、花園での1勝を届けた。東福岡フィフティーンの前進は、早実の懸命なディフェンスを受けても止まらない。後半29分、WTB礒部聖輝が左サイドでパスを受けると、インゴールまでぐんぐん加速。最後のワンプレーで華麗なトライを奪った。38―24で退け、FB早坂俊吾は「稜介へ勝利を届けられました。それが一番うれしいです」と晴れやかな表情で初戦を振り返った。

 名門・東福岡のラグビーにあこがれていた当時14歳の稜介さんが不慮の事故で23年に急死。テレビ番組を通じて母・直美さん(54)が練習参加したことから大上家とチームの縁が生まれた。今年3月、直美さんに学校側から「(稜介さんを)部員として受け入れようと思います。4月に入部式があるので来られますか」と連絡があった。本来なら高校入学を迎えていたタイミングでもあり、藤田雄一郎監督(53)がコーチや部員に提案し、正式な入部が決まった。

 選手たちは大きなクマのぬいぐるみを「リョウスケ」と呼び、授業や練習に連れていく。この日、1年生で唯一先発入りしたロック・長縄領佑は、同期で同じ名前ということもあり「リョウスケ」と同じ部屋で過ごしている。直美さんは「東福岡の試合は毎年、見ていたけれど、今年はより緊張感がある」と息子のチームメートの戦いぶりを観客席から見守った。

 初戦の2日前(28日)には、兵庫県内での練習後、出場メンバー全員で稜介さんの墓前にこの日の白星を約束していた。「そういう気持ちを持って戦っていただいているのが本当にありがたい」と直美さんは感無量。亡き仲間が夢見た東福岡のゴールはここではない。「自分も憧れて入学してきた立場。3年前に日本一になった世代に憧れた。目標はもちろん全国制覇です」と早坂。天国からの思いも背負い、王者の座を奪還する。(藤田 芽生)

 ◆探偵!ナイトスクープ24年6月28日放送分(関西地区) 23年10月に稜介さん(当時14)を浴室の事故で亡くした母・直美さんが「息子になりたい」と、我が子が生前に入部を希望した東福岡ラグビー部の練習に参加。同部もその思いを受け入れて承諾。決して運動が得意ではない直美さんが息子になり切って同部の厳しい練習をこなし、感動を呼んだ。同番組の「神回」となっている。

 ◆東福岡 1955年創立の私立男子校。ラグビー部も同年創部で、部員数155人。花園は第64回(84年度)が初出場。初優勝は第87回大会で、優勝回数は3位タイの7度。主なOBは村田亙、藤田慶和、布巻峻介(ラグビー)、長友佑都、本山雅志(サッカー)、佐々木健介(プロレス)、村田修一、吉村裕基、田中賢介(プロ野球)ら。サッカーは全国選手権3回優勝、野球、バレーボールも全国レベル。