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 ウインターカップ決勝の舞台で、誰よりも得点を積みあげ、誰よりもリバウンドをもぎ取った。

「自分は1年生の頃からスタートで出させてもらっていたんですけど、先輩たちを日本一にさせてあげることができなくて悔しかったです。最後の自分たちの代では、絶対に自分が薫英を日本一にするという思いが強かったですし、今日の試合も40分間しっかりやりきることができたと思います」

 勝てば史上初の冬の日本一となる「SoftBankウインターカップ2025令和7年度第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」女子決勝戦、大阪薫英女学院高校(大阪府)は今夏のインターハイを制した桜花学園(愛知県)と激突した。大黒柱を担う三輪美良々(3年)は、この大一番でもインサイドで輝きを放ち、合計30得点13リバウンド。悲願達成の立役者となった。

 チームとしては理想的なオフェンスを展開できずに苦しんだ。豊富な運動量と選手層を誇る相手ガード陣のプレッシャーに押され、強みの3ポイントシュートが封じられたからだ。大阪薫英は京都精華学園高校(京都府)を破った準決勝では27本中11本の3ポイントを沈めたが、この試合は13分の2。試投数、成功率ともに振るわなかった。

 それでも桜花学園に食らいつくことができたのは、背番号5が体を張り続けたことが大きかった。主にマッチアップを繰り広げたのは、2年生で名門のエースを務める勝部璃子。三輪は同じ177センチの勝部に対しフィジカルと気迫で勝り、攻守にわたって優位に立った。

「自分のポジションで勝っていた部分がありましたし、(安藤香織)先生も『コツコツ2点を積みあげていけばチャンスはある。相手がファウルをしてくれたら3点プレーも生まれるから』とおっしゃってくれていました。自分は3年生で相手は2年生だったので、3年生が気持ちで負けていられないと強気でプレーし続けたのがよかったと思っています」

 大阪薫英は第3クォーターから仕掛けた変則的なゾーンディフェンスが功を奏し、後半20分で相手を17得点に封じる鉄壁の守りを披露した。

「今日はガチンコ勝負でしたのでマンツーマンディフェンスで臨みましたが、前半は守りきれませんでした。後半は前からのゾーンプレスとゾーン気味のマッチアップを仕掛けたことで相手のドライブ、リバウンドを抑えることができたと思っています」と振り返ったのは安藤コーチ。

 インサイドの攻防では第4クォーター序盤で勝部を3ファウル、水林夢翔(2年/177センチ)を4ファウルへ追いこみ、リバウンド本数も43対37で上回った。大阪薫英はディフェンスから逆転劇を呼び、悲願の頂点に立った。

「今年のテーマは、楽しむ」。そう話した安藤コーチだが、今大会は初陣のウォーミングアップの時点から選手たちに硬さが見られ、不安を覚えた。「これじゃダメだと思って雰囲気を変えました」と、指揮官は「とにかく楽しもう」といった声を選手たちにかけ続けたという。

 すると、試合を重ねるごとに選手たちの表情が変わり、本来のプレーを取り戻していった。3回戦ではインターハイ準優勝の日本航空高等学校北海道(北海道)に3点差で勝利。準決勝では京都精華学園に反撃の隙を与えず、最後はインターハイで敗れた桜花学園にもリベンジを果たした。

「先生からは『楽しんだもん勝ちや』ってずっと言われてきました。楽しまなかったら絶対に後悔するし、今までも自分のプレーができずに負けたこともたくさんあったので、この大会は途中からになってしまいましたけど、楽しむことができたと思います」

 3年間の苦しみは、最後にようやく報われた。楽しむことを忘れなかったチームが、最後に笑うことができる。エースを中心に栄冠をつかんだ大阪薫英の笑顔は、どのチームよりも眩しかった。

文=小沼克年

【動画】大阪薫英が逆転勝利を収めたウインターカップ決勝ハイライト映像