第102回東京箱根間往復大学駅伝(=箱根駅伝)が来年1月2、3日に行われる。毎年、各校の実力選手が火花を散らす大学3大駅…
第102回東京箱根間往復大学駅伝(=箱根駅伝)が来年1月2、3日に行われる。毎年、各校の実力選手が火花を散らす大学3大駅伝の最終戦。年々、レースの高速化が進むように各スポーツメーカーによるシューズの開発競争も激化している。「厚底」が主流となった今、メーカーの狙いや選手の声を聞いた。
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前回箱根路のトップシェアは、36%のアディダス社(同社調べ)。2021年はわずか2%だったが、4年で大幅に回復し、初の国内首位に立った。箱根2連覇の青学大、3位の国学院大、7位の創価大を活躍を後押しした。
11月の全日本大学駅伝では全8区間のうち4区間で同社製品「ADIZERO EKIDEN COLLECTION」を着用した選手が区間賞を獲得。全出走216選手のうち33%の72人が着用し、学生駅伝トップの地位を固めた。
同社は23年9月に当時史上最軽量となる片足138グラム(27センチ)を実現。そこにより反発力のある素材や凹凸で摩擦のある靴底を取り入れたことで、足の接地時の加速をさらに高めるものに改良した最新シューズを今年4月に発表した。
これまで主に3種類のシューズが使用されており、商品説明を担当した寺部雅哉氏は「選手は細かなフィッティング、反発クッションにもこだわっている。常に最新のモデルが最速ではなく、この3つのシューズを最適化した中で選手を支えられている」。来年の箱根駅伝ではシェア率50%を目指しているという。
1万メートル27分台のチーム歴代記録を持つ国学院大・野中恒亨(3年=浜松工)は当時の最新モデルを着用し、11月の全日本3区で留学生に競り勝ち区間賞を獲得した。
「靴と会話をする」と独特な表現をした野中だが、「今日の体の状態を靴に伝えて、今一番体にとって練習負荷が高くなるような、いい質を求めてくれる靴を選んでいる」と言う。普段は練習の強度によって2種類の靴を履き分けている。
アディダス社の対抗となりそうなのが、前回箱根で2番手の25・7%だったアシックス社(同社調べ)。9月の世界選手権東京大会では女子マラソンの小林香菜(24=大塚製薬)の7位入賞に貢献するなど大会トップシェアとなった勢いがある。
アスリートとの対話を通じて作り上げた「METASPEED」は、ランナーの特性に合わせてストライド走法型とピッチ走法型の2つのモデルにカーボンプレートを搭載。7月にはシリーズ史上最軽量の片足129グラム(27センチ)の最新作を発売した。
21年の箱根駅伝では着用率0%という暗い過去もあった。しかし、開発担当の竹村周平氏は「日本の駅伝は各社注力している中で、我々の強みは『彼ら(選手)の声を聞くこと』。フィードバックによる商品開発などその辺のいいスパイラルが回ってきている」と手応えを口にする。
箱根5区の山登りで有名となった「山の名探偵」こと、早大・工藤慎作(3年=八千代松陰)が全日本8区で30年ぶりに日本人最高タイムをマークしたのも、大きな宣伝効果だろう。
工藤自身も「(山を走る上で反発を使って)結構乗り込んでいくイメージが自分は結構好き。厚底でダメージも押さえられるし、本当にアップダウンのあるコースとかでも真価を発揮すると思う」とうなずく。
17年にナイキ社の厚底が登場して以降、各社で開発競争が激化。しかし、前回箱根はかつて「1強」と呼ばれたトップメーカーが3番手に失速したように10年で状況は様変わりした。
第102回の優勝争いと同じように「足元の戦い」もさらに加熱しそうだ。【泉光太郎】