日本のサッカー界でも、さまざまなことが起きた2025年。J1では鹿島アントラーズが9年ぶりにタイトルを手にし、そしてJ…
日本のサッカー界でも、さまざまなことが起きた2025年。J1では鹿島アントラーズが9年ぶりにタイトルを手にし、そしてJ2では「番人」とまで言われた水戸ホーリーホックが史上初となるJ1昇格を果たした。一方、日本代表はワールドカップ出場への準備を進める中、史上初めてブラジル代表に勝利し、なでしこジャパンは新監督の下、苦戦を強いられている。ワールドカップが開催される2026年に向けて、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之と後藤健生が2025年の日本のサッカー界を「総括」。そして、2026年の「展望」を語り合った!
■鹿島を「9年ぶり」の優勝へ導いた力
――柏レイソルが素晴らしかったとのことですが、優勝した鹿島アントラーズはどういう点で柏を上回ったのでしょうか。
後藤「鹿島は去年も下位に沈んだわけじゃなく、もともと優勝できるだけの力があるチームだったわけでしょ。だから、9年ぶりの優勝はすごいことだけど、柏の躍進ほどの驚きを提供したわけじゃないよね」
大住「やはり目立ったのは勝負強さだね。負け試合を引き分けに持ち込み、引き分けてもおかしくない試合を勝ちにつなげるという強さがあったよね。これが伝統なのかな、と感じた。J1での成績は23勝7分け8敗なんだけど、23勝のうち16勝が1点差での勝利なんだよね。これはすごいことだよね。鬼木達監督の、川崎フロンターレで優勝を積み重ねてきた経験による采配の力もある。それから、忘れてはいけないのが早川友基の存在だったと思うよね。リーグ年間MVPに選ばれたのは当然だと思うよね」
■鬼木監督は鹿島の「何」を変えたのか?
――もともと力のあるチームで、鬼木監督は何を変えたのでしょうか。
後藤「鬼木監督は最近よくインタビューで、勝たなければいけないではなく勝ちたいと、選手たちが自分で思うように仕向けるのが大変だったと話している。鬼木監督は戦術で勝とうとするより、うまく選手の気持ちを良い方向へ持っていこうとするタイプなんじゃないかな。フロンターレでJ1を4度制したけど、まったく違うタイプのチームを率いて1年目で優勝したんだから、大したものだよね」
大住「フロンターレでも、監督に就任した最初のシーズンで優勝したからね」
後藤「そうそう。シーズン前、鹿島をフロンターレみたいにするんだろうかとか言われていたけど、全然そうじゃなかった」
大住「一度、そうしかけたけどね」
後藤「そこが、僕にもちょっと分からないところなんだよ。最初はフロンターレのようにしようとしていたけど方針を急転換したのか、当初からおそらくそうなるだろうと思いつつ、いろいろなことを試していただけなのか。本人に聞いてみたいね」
■鹿島と広島の「差」、京都の優勝も
大住「あり得ないことだけど、全選手が良いコンディションのままサッカーを続けられたら、今年一番力がありそうだと思ったのはサンフレッチェ広島だったんだよね。得点力、守備力など総合力を考えたら、広島が一番力がありそうだったけど、選手層の問題が大きかったと思うけど、浮き沈みがあった」
後藤「ミヒャエル・スキッベ監督が来てから、広島はずっと良いチームで、いつか優勝するだろうと思っていたら、カップ戦は別として、リーグ優勝しないまま終わっちゃった。スキッベ監督は良いチームをつくったけど、鬼木監督のような勝負強さとか勝負へのこだわりはなかったんだろうね」
大住「それに、やはりACLが問題になったと思う。Jリーグの優勝争いには、ACLが大きく影響する。そう考えると、力のあるヴィッセル神戸や広島がACLで難しい時期を迎えたことは、鹿島が優勝するのに大きく影響したと思う。優勝を独占していた頃の川崎と横浜F・マリノスは、そりゃあ優勝するだろうな、というチームだったけどね」
後藤「何試合か残して優勝を決めていたもんね」
大住「だけど今年は、そういうリーグじゃなかった。ひとつ違う結果に転んでいたら、京都サンガF.C.が優勝していてもおかしくなかったよね」
後藤「鹿島戦で最後の最後に追いつかれて引き分けに終わったり、ラファエル・エリアスがケガすることがなかったら、とかね」
大住「そう考えると、やはり突き抜けたスーパーチームがいない団子状態のリーグだった。最後に鹿島が上回ったという感じかな」
後藤「本来のJリーグの姿ですね」
大住「そうかもしれないね」