MVP男の大谷は敵地の試合も圧巻のパフォーマンスを残した(C)Getty Images 2年連続の世界一へ向け、ドジャー…

MVP男の大谷は敵地の試合も圧巻のパフォーマンスを残した(C)Getty Images
2年連続の世界一へ向け、ドジャースが圧倒的な強さを見せつけていた2025年の夏。その熱狂は、本拠地のロサンゼルスばかりか敵地さえもホームの雰囲気に変えてしまうほどだった。デンバーで起きた一幕は、「ドジャース一強」とスーパースターの影響力を端的に示す象徴となった。
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現地時間6月26日、敵地で行われたロッキーズ戦に「1番・DH」で先発出場した大谷翔平は2試合ぶりの28号ソロを含む3打数1安打1打点、1四球と活躍した。
1点リードで迎えた7回、二死走者なしの第4打席。大谷はロッキーズ4番手タイラー・キンリーが投じた低めのスライダーを完璧に捉えた。打球速度107.8マイル(約173.5キロ)、飛距離419フィート(約128メートル)で舞い上がった打球は、右中間のドジャースブルペンへと着弾した。
この一発で大谷は今季28号に到達。当時、ナ・リーグ本塁打ランキングで2位につけていたエウヘニオ・スアレス(ダイヤモンドバックス)に3本差をつけ、独走態勢を固めていた。昨季を上回るシーズン55本塁打ペースで量産する偉才の姿に、敵地クアーズ・フィールドはどよめきと大歓声に包まれた。それは敵チームの選手への反応とは到底思えない、異様な熱気だった。
この光景に、複雑な感情を隠せなかったのが現地のメディアだ。地元紙『The Denver Post』のコラムニスト、トロイ・レンク記者は自身のX(旧Twitter)で、「放送によれば、対ロッキーズの31試合目で13発目だ」と、大谷がいかにロッキーズの本拠地、クアーズフィールドを得意としているかを伝えた上で「彼を見るのがただただ楽しい」と、一人の野球ファンとしてその才能を称賛した。
しかし、その「楽しさ」の裏には、地元チームの現状に対するジレンマも。レンク記者は続けて、こう吐露している。
「何が楽しくないかって? まるでドジャースのホームゲームみたいなところだ」
本拠地の試合とは思えないスタンドを埋め尽くすドジャーブルーのユニフォームと、敵選手に向けられる歓声。レンク記者は「誇り高い組織にとっては、恥ずべきことだ」と断じた。
当時、ロッキーズは過去15年間で13度目の負け越しシーズンへと向かっていた。球団が大谷人気によるチケット売上の増加を歓迎しているように見える現状に対し、記者は「あまり気にしていないようだ」と皮肉交じりに指摘したのだ。
同じナ・リーグ西地区にいながら、大きく差が開いた2球団の現状をこぼさずにはいられなかった。結局チームは43勝119敗と歴史的な大敗でナ・リーグ最下位に沈んでいる。
記者として大谷を見る楽しさと、自チームがその引き立て役にしかならない屈辱。このデンバーでの一幕は、2025年シーズンのMLBにおける「ドジャース一強」の構図と、大谷翔平というスーパースターが持つ影響力の大きさを残酷なまでに映し出していた。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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