2025年も残すところ3日。阪神の今年の名シーンを担当記者が振り返る年末企画です。第3回は「驚き」編。◇ ◇ ◇◆「藤川…
2025年も残すところ3日。阪神の今年の名シーンを担当記者が振り返る年末企画です。第3回は「驚き」編。
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◆「藤川監督と新庄監督のパフォーマンス」(6月5日、対日本ハム=エスコンフィールド)メンバー表交換で3日連続で見せた“パフォーマンス”。第1戦で2人は目線を送らず、握手もせず。第2戦では、目線を合わせて笑顔でグータッチ。そして第3戦は審判団とともに手を重ね「エイエイオー」と言わんばかりに、天に手を掲げた。エンターテイナーのライバル指揮官は、現役時代から尊敬する先輩。ゲーム以外でも楽しませる、プロ野球の良さを感じた。【磯綾乃】
◆「デュプランティエがお立ち台でゴイゴイスー!」(5月3日、対ヤクルト=甲子園)
デュプランティエが来日4度目の先発で6回4安打無失点で、ゴロアウト量産のクレバーなピッチングで来日初勝利ゲットした。日本で出会った梅干しが活力源。甲子園での人生初のお立ち台ではお笑いコンビ「ダイアン」の津田篤宏のギャグ「ゴイゴイスー」も披露して、虎党の笑いも取って、心をわしづかみ。「これが最後にならないように頑張っていきたい」と、その後も白星を積み上げた。【伊東大介】
◆「高寺望夢、起死回生のプロ初本塁打」(5月13日、対DeNA=ハードオフ新潟)
土壇場でアーチを描いた。0-1であと1死奪われれば負けの9回2死。148キロ直球を捉えて右翼スタンドへ、プロ初本塁打となる同点ソロとなった。ボールはグラウンドにはね返り、何が起こったかわからなかった高寺は二塁まで全力疾走。初々しいプロ1号だった。地元長野の隣県新潟で家族も観戦する中今季初スタメン。高卒5年目で今季はブレークの兆しを見せた若虎が値千金の1発を放った。【塚本光】
◆「森下翔太の神の手ホームイン」(7月2日、対巨人=甲子園)
0-0の8回2死一、二塁。二塁走者の森下が大山の内野安打を泉口がはじく間に、一気にホームへ。タイミングは完全なアウトだったが捕手・甲斐のタッチをかいくぐり、オーバーラン後にも再び体をよじりながらタッチをよけてベースタッチ。映像でも全く分からないほど微妙な判定。リプレー検証の結果、セーフになると森下はベンチ前でとびはねて喜んだ。
信じがたい身のこなしと必死な姿が胸を打った。プレスルームの興奮ぶりも忘れられない。好スタートを切った7月、一気に加速してライバルを置き去りにした。あらゆる意味で大きなプレーだった。【柏原誠】
◆「ドリスが6年ぶりに古巣に復帰」(7月24日、西宮市内で入団会見)
前回在籍時は球団外国人最多96セーブ、17年には最優秀球宴投手賞も獲得した右腕は、四国IL高知で9キロ減量して106キロのシャープな体で登場した。「タイガースは私のファミリーであり、家に帰ってきたような気持ち」。チーム歳年長の37歳は、スライダーも武器に終盤の優勝争いで、20試合2勝2敗5ホールド、防御率1・93で、ブルペンを支えた。【伊東大介】
◆「中川勇斗、初本塁打に続いて2本目も地元で」(9月3日、対中日=バンテリンドーム)
3回の先頭で中日先発大野雄大の高め134キロカットボールを捉えて先制弾とした。8月7日のプロ初本塁打も同戦で、球界最大級の広さを誇る同球場。愛知出身の中川に後日、2本塁打とも地元で放ったことについて尋ねると「バンテリンだから打てるんですよ」と冗談交じりに笑った。リーグ優勝を果たし、盤石な強さを見せた今季。来季以降に大きな期待のかかる若虎が大器の片りんを見せた1年でもあった。【塚本光】
◆「岩崎優、リンドバーグで胴上げ投手へ」(9月7日広島戦=甲子園)
史上最速でのリーグ優勝決定日。2点リードの9回に岩崎の名前がコールされると、藤川監督が現役時代の登場曲であるLINDBERGの「every little thing every precious thing」が流された。現役時代をともに過ごした藤川監督の就任が決まったときから考えていたという演出だという。
23年のリーグ優勝決定日も通常とは異なる登場曲「栄光の架け橋」を流してマウンドに上がった守護神左腕。同年に28歳でこの世を去った元同僚、横田慎太郎さんの使っていた曲だった。想いを込めた一曲で球場をひとつにし、再び歓喜の瞬間を導いた。【波部俊之介】
◆「原口文仁が引退試合で約4年ぶりマスク」(10月2日、対ヤクルト=甲子園)
引退試合で虎党の涙を誘った。7回に代打で出場して現役最終打席は中飛。8回は一塁を守ったが、9回は公式戦では約4年ぶりの捕手の守備に就いた。大歓声の中で1打席限りの同学年左腕、岩貞祐太とのバッテリー。「座ってみて本当にいい景色が見られたのでうれしかった」。一度育成契約を結んでからの支配下昇格後のシンデレラストーリー、大腸がんからの復活と多くの人を勇気づけてきた虎戦士は最後までりりしく戦った。【塚本光】