新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退」が1月4日に東京ドームで行われる。“…

新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退」が1月4日に東京ドームで行われる。“100年に1人の逸材”として団体を引っ張り、現役を引退する棚橋弘至(49)が運命の1・4を迎える。チケットが全席完売となった大注目の大会を前に、棚橋の激闘10選を10回にわたって振り返る。5回目は2011年1月4日、東京ドームでの小島戦。

<棚橋弘至・激闘10選:第5回>◇2011年1月4日◇東京ドーム

棚橋弘至(34)が、師匠と兄弟子超えを同時に果たした。IWGPヘビー級選手権試合は、挑戦者の棚橋が21分57秒、ハイフライフロー2連発からの片エビ固めで王者小島聡(40=フリー)を撃破。至宝を奪回して、武藤敬司(48)を上回る歴代2位の5度目の戴冠を達成した。

東京ドームで受ける勝ち名乗りは、格別だった。両手を広げ、棚橋が4万2000人の拍手と歓声を浴びた。「チャンピオンになったぜー!」。昨年12月の前哨戦では、小島のラリアットを食らって声が出ないほどダメージを受けた。その恨みとばかりに、美声をとどろかせた。

ラリアットで勝ち続けてきた小島に、なりふり構わぬ戦いを仕掛けた。序盤から低空ドロップキックに、フットスタンプ3連発。すべて右腕に集中させた。「泥くさく。オレらしくなくても勝てればいい」。右腕を破壊するイメージで戦った。人気テレビゲームからアイデアを得た「モンハン作戦」。怪物を討伐するゲームから発想を得て、腕の破壊力を鈍らせた。最後はハイフライフロー2連発で仕留めた。

IWGP戦線から一時的に遠ざかりながら、自ら勝利を積み重ねることでつかんだ王座挑戦の舞台が、20回目の新春ドーム大会となった。節目のビッグイベントのメインで、体は自然に硬くなった。その心をほぐしたのは、初心に返った練習だった。入門当時の恒例だったスクワット1000回を連日のように敢行。「何度もやってると、感覚がなくなって無になるんです。少しは緊張からも解き放たれる」。苦しかった練習に、心を救われた。

小島に対して特別な感情はない。それでも、ともに武藤を師匠とする遠い兄弟弟子の関係だ。02年、全日本へ移籍する武藤に、2人とも誘われた。応じた小島とは対照的に、棚橋は断った。「新日本で成功したい」という思いからだった。前日会見でも「新日本で戦い抜いてきた意地を見せる」と、ここまでのレスラー生活の集大成の戦いを強調していた。

これで5度目の戴冠。武藤を抜き、藤波辰爾の6回にあと1回と迫った。「これからのプロレス界、おれに任せてもらえませんか?大丈夫。おれは既に未来をつかんでいる」。泥くさい戦いの後は、ナルシストな男らしくカッコ良く締めた。

<注>当時の記事をリメーク。記事中の年齢、肩書などの表記は当時のものを使用。