ピカソに付け入る隙を与えず圧倒した井上(C)Getty Images ド派手なKO劇とはならなかった。 現地時間12月2…

ピカソに付け入る隙を与えず圧倒した井上(C)Getty Images

 ド派手なKO劇とはならなかった。

 現地時間12月27日、サウジアラビア・リヤドで行われたスーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチで、王者の井上尚弥(大橋)は、WBC世界同級2位アラン・ピカソ(メキシコ)に3-0の判定勝ち。前人未到の世界戦27連勝を飾った。

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 KOを狙う強い意志は、相手の懐に入り込んで、足を止めて強打を見舞う姿勢に表れていた。しかし、そんな井上の強打にひるまなかったピカソもタフネスもあり、試合は判定決着に。勝者となった“モンスター”だが、試合後には「ちょっと集中力に欠けるというか。まぁ自分自身は全く納得していない内容」と吐露。仕留め切れなかった己のパフォーマンスを悔いた。

 井上が「攻略できなかったのは自分の弱さ」とも漏らした防衛戦だったが、客観的に見れば、「完勝」と言っていい内容だった。ましてやトップファイターとしては異例とも言える年間4試合目という事実を加味すれば、その価値は俄然高まるはずだ。

 実際、“ボクシングの本場”では、貫禄の勝利を飾った井上に対する称賛が飛んだ。専門メディア『Boxing Scene』で論客を務める名物トレーナーのスティーブン・エドワーズ氏は自身のXで「イノウエはパッキャオのように進化している」と指摘。世界6階級制覇王者となった“傑物”マニー・パッキャオ(フィリピン)との比較を展開した。

「今のイノウエは以前までの荒っぽいボクシングは見られない。相手に捕まってKOされそうな顔をしているのに、実際にはそんなこと絶対に起こらない。つまり、イノウエは素晴らしいファイターということだ。126ポンド以下の階級では、間違いなく歴史上トップ10に入る」

 以前から井上を「誰よりも破壊力がある」と評価してきたエドワーズ氏は、「イノウエが過小評価されている部分」を訴えている。

「モンスターは、背も高くなく、腕も長くない。だから誰も彼が優れたジャブを打つことを連想しない。しかし、イノウエは現代で最高のジャブを持っている。それは速く、コンパクトで、一貫性があり、頭部からボディまであらゆる箇所に打ち込める変化にも富む。それはあまりに見過ごされすぎている」

 ピカソ戦でも161発のジャブを浴びせ、主導権を握り続けた井上。そのブレない強さは、猛省した本人の考えとは裏腹に確かな評価を受けているようだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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