蹴球放浪家・後藤健生にとって、サッカー観戦前の「移動」は、いわば前哨戦だ。なでしこジャパン取材のために長崎の新スタジア…

 蹴球放浪家・後藤健生にとって、サッカー観戦前の「移動」は、いわば前哨戦だ。なでしこジャパン取材のために長崎の新スタジアムを訪れる前にも、記憶に残る「出会い」があった。

■長崎への「お得」な交通手段

 11月の末にサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)のカナダとの親善試合を観戦に長崎まで行ってきました(もう一つの目的は、長崎のスタジアムシティの見学でした)。その話は、「蹴球放浪記」の294回にも書きましたが、今回は佐賀から長崎へ移動したときのお話です。

 長崎まで行く安い交通手段を探していた僕は、全日空(ANA)のキャンペーン期間中に佐賀行きの航空券を発見しました。長崎行きより、かなり安い値段だったのです。

 もちろん、佐賀から長崎までの移動にもお金がかかりますが、長崎空港から長崎市内までのバス代もけっこうかかるので、トータルすると佐賀経由で移動したほうがお得ということで佐賀行きに決めました。

 鳥栖市は何度か行ったことがあるのですが、「佐賀市にはまだ行ったことがなかった」というのも大きな理由でした。

■エンジン音の大きい「旧式」

 で、佐賀市内観光をしてからJR佐賀駅内の日本酒バーで佐賀のお酒を堪能したという話は前にも書きました。

 そして、いよいよ佐賀駅からJRに乗車しました。

 しかし、佐賀から長崎まで各駅停車の直行便はありません。ずっと長崎本線なのですが、まず江北(こうほく)行き」乗って江北駅で諫早(いさはや)行きに乗り換え、さらに諫早駅で長崎行きに乗り換えなければなりません。

 で、江北駅に着きました。そして、乗り換えのために階段を登って移動すると、目の前に2両編成の列車が待っていました。ここから先は非電化区間なので「気動車」のようです。「気動車」というのは非電化区間を走るための車両で、一般的には動力としてディーゼル・エンジンが使われています。

 僕たちの世代にとって「気動車」というと旧国鉄(日本国有鉄道)時代の、クリーム色と赤の塗装の「キハ××系」を思い浮かべます(「キ」は気動車。「ハ」は普通車=昔の二等車)。

 大きなエンジン音がする、いかにも旧式の車両といったイメージです。

■車両の前面の「YC」って何?

 ところが、江北駅のホームに待っていたのは、車両の前面にLEDライトがたくさん付いている近代的なデザインの車両でした。

 国鉄民営化で分割されたJR九州(九州旅客鉄道)は、凝ったデザインの車両を走らせて注目を集めていますが、ローカル線を走る新しい気動車もなかなか攻めたデザインの車両でした。

 そして、車両の前面には「YC1」というブルーのロゴが目立っていました。「YC」って何? それは、ロゴの中に小さなローマ字で書いてありました。

「YASASHIKUTE CHIKARAMOCHI HYBRID」

「YC」とは「優しくて力持ち」のイニシャルだったわけです。

 これは「YC1」系という、JR九州が2020年に運用開始した新型車両でした。僕はこれまで九州のローカル線に乗車する機会がなかったこともあって、そんな車両が走っていることはまったく知りませんでした。

「HYBRID」というのは、この新型車両がディーゼル・エレクトリック方式を採用していることを表しています。

 ディーゼル・エンジンの回転で直接車軸を回すのではなく、ディーゼル・エンジンで発電をして、電気でモーターを回転させて走らせるというものです。従来のキハ系と比べて2割ほど燃料消費量が抑えられるそうです。

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