ピカソを終始圧倒した井上(C)Getty Images 攻勢を緩めず、最後まで主導権を握り続ける貫禄の戦いだった。 現地…

ピカソを終始圧倒した井上(C)Getty Images

 攻勢を緩めず、最後まで主導権を握り続ける貫禄の戦いだった。

 現地時間12月27日、ボクシングの世界スーパーバンタム級の4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は、サウジアラビアの首都リヤドでWBC世界同級2位アラン・ピカソ(メキシコ)との防衛戦に臨み、3-0で判定勝ち。1976年のWBA・WBC世界ヘビー級王者モハメド・アリ以来49年ぶりとなる年間4度の防衛を果たした。

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 勇敢な挑戦者に付け入る隙は与えられなかった。序盤から鋭いオーバーハンドや、強烈なボディなど足を止めて強打を見舞っていった井上。「倒しにいく」という意図が強く感じられるファイトスタイルで、耐え抜きながら反撃の時を待ったピカソを凌駕した。

 ひるまず立ち向かい、一度のダウンもないまま12ラウンドを戦い抜いたピカソも見事ではあった。ただ、総パンチ数の差(158発)が示すように、眼前に立ちはだかったモンスターに総合力で圧倒されたのは、火を見るよりも明らかだった。

 ゆえにスコアシートの内容が一部で物議を醸した。試合後に公表された内容を見ると、120-108、119-109、117-111というもの。ジャッジの1人がピカソに3ラウンドものポイントを与えているのだ。

 致命的な一打を浴びもしなかった井上だけに、その採点には識者からも異論が飛んだ。米著名ボクシング・ジャーナリストのダン・ラファエル氏は自身のXで「ジャッジの一人がピカソに3ラウンドのポイントを与えた。まるで、お笑いの金メダルだ」と皮肉。また、元米スポーツ専門局『ESPN』の記者で、世界で最も権威ある米専門誌『The Ring Magazine』のマイク・コッピンガー記者も「リングサイドの判定は120-108の完封勝ち。しかし、なぜ一人のジャッジがピカソに3ラウンドも与えたのかは私には分からない」と苦言を呈した。

 もっとも、井上も試合後に自身SNSで「自分自身納得のいく内容ではなかった」と発信。消化不良の内容に対する不満も吐露しているだけに、ピカソにポイントが入ったのも“妥当”なのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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