元世界3階級制覇王者の中谷潤人(M・T)が、スーパーバンタム級転向初戦で辛勝した。無敗のWBC世界同級10位セバスチャ…
元世界3階級制覇王者の中谷潤人(M・T)が、スーパーバンタム級転向初戦で辛勝した。無敗のWBC世界同級10位セバスチャン・エルナンデス(メキシコ)の手数と接近戦に苦しみ、プレッシャーを受け後退するシーンが目立ちながらも3―0の判定勝ち。本紙評論家の元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏は、苦戦の要因を解説した。
潤人(中谷)にとっては、勝ったとはいえほろ苦いスーパーバンタム級初戦になった。スタートはよかった。相手と絶妙の距離を保ち、長いリーチをいかして自分のリズムで動いていた。接近してもアッパーで先手を取り、バンタム級と何ら変わらない、いつもの姿を感じさせた。
だが、中盤からエルナンデスがより攻撃的になってくると、流れが変わった。潤人は今まで自分よりサイズの大きな選手との対戦はあまりなかったはずだ。今回のエルナンデスは体格でほぼ同じか、やや大きな相手。強引に前に出る馬力、手数の多さに苦しめられた。これまでは体格のアドバンテージから生まれるパワーの差で、接近戦になっても押し負けずにパンチを打ち込み、KOまで持っていくことができた。しかし、この日は体格差のない相手に後退を強いられた。下がりながらも巧みに手を出し、ポイントは取っていたと思うが、ここまで後退させられる潤人を見たのは初めてだ。
ひとつ言えることは、階級を上げた初戦としては厳しい相手だったと思う。20戦全勝、そのうち18がKOという実力者。3階級制覇を達成した潤人でも、今まで以上に階級の壁を感じたはず。個人的には潤人の体格からスーパーバンタム級が最適な階級だと思っている。次戦は来年5月の(井上)尚弥戦だろうが、この5か月間でよりフィジカルの強化に励めば、階級にフィットした肉体ができるはず。いい勉強になった苦戦だったと思う。(元WBC世界バンタム級王者)