◆プロボクシング「THE RING V:ナイト・オブ・ザ・サムライ」 ▽WBA・WBC・IBF・WBO世界スーパーバンタ…
◆プロボクシング「THE RING V:ナイト・オブ・ザ・サムライ」 ▽WBA・WBC・IBF・WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇4団体統一王者・井上尚弥(判定)アラン・ピカソ●(27日、サウジアラビア・リヤド、ムハマド・アブド・アリーナ)
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が、無敗の挑戦者アラン・ピカソ(メキシコ)を3―0の大差判定で下し、王座防衛に成功した。世界戦27連勝と、向かうところ敵なしを改めて証明。それでも「今夜は良くなかった」と試合内容には不満を口にした王者だが、本紙評論家の元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏は、内容含め圧倒的な勝利だったと解説した。
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尚弥の試合の度に思うことだが、今回も予想通りに強かった。ピカソは圧倒的不利といわれる中、想像以上の力を発揮した。ガードをがっちりと顔の前で固め、徹底して頭を左右に振り続けた。それを初回から12ラウンドまで、尚弥のパンチを受けても続けたのだから、相当な覚悟を持って臨んことが見て取れた。尚弥のジャブ、ボディーブローを浴びても、簡単には下がらなかった。ピンチになった時は接近して立ち位置を変えるなど、頭の良さを感じさせた。
そう感じたのだが、だからといってピカソにチャンスがあったかと言えば、ほぼ無かったに等しい。主導権は常に尚弥にあった。圧巻だったのは入場からだ。ものすごいオーラを放ちリングへと向かい、『私のショーにようこそ』という空気を感じさせた。初回のゴングが鳴り自信に満ちあふれた姿は、すでにピカソを飲み込んでいた。不思議なことに尚弥と対戦した選手は、負けても倒されなければ「よく頑張った」と評価される。ピカソは最終12ラウンド終了のゴングに満足げに両手を上げていた。採点では完敗と分かりながらも、倒されなかったことへの満足感があったのだろう。パウンド・フォー・パウンド(全階級を通して最強ランキング)1、2位を争う尚弥とは、もはや対戦相手にはその域のボクサーなのだ。
次戦は来年5月に東京ドームでの(中谷)潤人とのスーパーファイトになるだろう。この日の2人の試合を見て思った。完勝の尚弥に対し、辛勝だった潤人。2人の評価がこれまで以上に開いた気がした。(元WBC世界バンタム級王者)