得点圏打率.247は規定145人中101位…満塁では10打数1安打 ドジャース・大谷翔平投手は今季も3年連続4度目のMV…
得点圏打率.247は規定145人中101位…満塁では10打数1安打
ドジャース・大谷翔平投手は今季も3年連続4度目のMVPに選ばれるなど、誰もが認める成績を残した。一方でシーズン中は「勝負弱い」との声も一部で聞かれた。その根拠とされたのは、規定打席到達者145人中101位に沈んだ「得点圏打率.247」という数字だ。では、大谷は本当にチャンスで打てなかったのだろうか。
大谷は今季自己最多の55本塁打を叩き込んだ。本塁打王こそ1本差で逃したが、OPS1.014、146得点、長打率.622、89長打、380塁打、20敬遠、ISO.340などはリーグトップと、まさに“最強打者”たる数字を残した。しかし、8月に記録した「12打席連続ソロ本塁打」や、満塁機での10打数1安打という結果が、一部の「チャンスに弱い」という印象を増幅させたのは否定できない。
もっとも、こうした成績はあくまで“一側面”に過ぎない。例えば、大差がついた場面でのタイムリーと同点で打ったサヨナラ弾は、記録上はいずれも「1打点」だが、その重みは全く異なる。そこで注目したいのが、試合展開を加味して勝利への貢献度を測る「WPA(Win Probability Added)」という指標だ。
僅差の場面での一打などが高く評価され、本当の意味での“勝負強さ”を示す「WPA」において、大谷はメジャー全体1位の「5.99」を記録。2位のアーロン・ジャッジ(5.61)を抑え、世界で最もチームの勝利を呼び込んだ打者であることを証明した。さらに特筆すべきは緊迫した局面「ハイ・レバレッジ(High Leverage)」での成績で、大谷はこのシチュエーションで打率.326、出塁率.492、メジャー1位のOPS1.143をマーク。ランナーが二塁にいるか否かという単純な条件を超え、試合が動く“ここぞ”の場面で、誰よりも凄みを増していたのだ。
振り返れば、4月に放った今季3号は劇的なサヨナラ弾だった。記録上の打点は「1」だが、その価値が1点以上の重みを持つことは論を俟たない。また、12本もの先頭打者本塁打は、すべてが先制打や同点弾であり、チームに計り知れない勢いを与えた。ポストシーズンでも、初戦となったワイルドカードシリーズの初回に放った豪快な先制弾で、世界一への道を切り拓いたのは記憶に新しい。
データと文脈を総合的に鑑みれば、大谷が「勝負弱い」という批判は、一部の偏った数字のみを切り取った誤解であると言えるだろう。(新井裕貴 / Yuki Arai)