ヤクルトジュニアで8年連続指揮…度会博文監督の流儀 NPB12球団などが小学生のジュニアチームを結成して日本一の座を争う…
ヤクルトジュニアで8年連続指揮…度会博文監督の流儀
NPB12球団などが小学生のジュニアチームを結成して日本一の座を争う「NPBジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」の大会2日目が27日、横浜スタジアムと神宮球場で行われた。度会博文監督率いる東京ヤクルトスワローズジュニアは、横浜スタジアムで中日ドラゴンズジュニアに対し4-3で6回サヨナラ勝ち。大会1日目に続いて連勝を飾り、29日の準決勝への進出が決定。5年ぶり4度目の優勝へ一歩近づいた。
「あき、いいコースだったぞ」「いと、その振りでOKだ」
度会監督は攻撃中も守備中も1球1球、ベンチから自チームの選手へ向けて声をかけている。名字でなく下の名前で呼ぶのも、指揮官の流儀だ。
ヤクルトジュニアの指揮を執るのは実に8年連続。今大会では埼玉西武ライオンズジュニアの星野智樹監督と並び最長である。しかも2019年と2020年に連覇を達成した他、準決勝にも2度進出しており、輝かしい実績を誇っている。DeNA・度会隆輝外野手の父でもある。
現役時代は千葉・八千代松陰高、中央学院大を経て、1993年ドラフト3位でヤクルト入りし、内外野どこでも守れるユーティリティプレーヤーとして15年間活躍した。現役引退後に球団広報、球団営業を務めた経験もあってか、常にさわやかな笑顔を絶やさず、生き馬の目を抜く勝負の世界で生きてきたとは思えないほど、人当たりがやわらかい。それがそのまま小学生への対応にも生かされている。
「毎年8月にジュニアチームを結成して4か月間、僕のやり方としては、楽しくやらせてあげたいなと思っています。もちろん楽しくやるのと、ふざけるのは全く違いますが、それを理解した上で、4か月しかない時間を楽しく過ごして、その先へ進んでほしいのです」と穏やかな表情を浮かべるのだ。
今年のチームについては「出場メンバー16人みんなが仲良しで、元気がいい」と評し、「“本チャン”(大会)は楽しくわいわいやってもらえればいいと思っていて、僕も負けじと元気にやっています」と声を弾ませる。
スワローズの選手たちも「度会さん、僕らは子どもたちの後でいいです」
本番で選手にプレッシャーを与えない心遣いのお陰か、ヤクルトジュニアは大会1日目の西武ジュニア戦で、練習試合では6戦全敗と歯がたたなかった相手に、3-2で逆転勝ちを収めた。エースの太田暁希(あき)投手(6年)は「距離が近い感じがする監督です」と表現し、新井一翔(いと)内野手(6年)は「しゃべりやすくて面白いです。その場の雰囲気に合わせてくれます」と笑った。
確かに、目線を下げて子どもに接し、無意識に言葉使いまで子どもたちに近づいていることがある。「戦いづれえなと感じていたのですが、選手たちの成長を見ていたら、ガチで行けば何とかなるかなと思えました」など……。そして、2023年大会の準決勝で敗退した際、報道陣の前で耐え切れず「この子たちを勝たせてやれなかった」と号泣したほどの熱い思いがある。
大会2日目の中日ジュニア戦も、「ミスはつきものですから、落ち込む必要はない。取り返すチャンスはいくらでもあります」と強調する度会監督らしい立ち居振る舞いを見せた。2点を先行したが、4回の守備でセカンドの寺田大智内野手(6年)のエラーをきっかけに3点を奪われ逆転される。青ざめる寺田くんに「エラーして落ち込んでるんじゃねえよ」とゲキを飛ばしたのが度会監督だった。
4回に前出の新井くんがセンターへ同点ソロ。そして最終回の6回、1死満塁でライト前にサヨナラ打を放ったのが、リベンジに燃える寺田くんだった。
そんな度会監督は、スワローズのサポート体制に対して感謝を強調する。ヤクルトジュニアは毎週末の練習を、2軍本拠地のヤクルト戸田球場(埼玉県戸田市)で行っている。「練習場を探すのに苦労しているチームが多い中、室内練習場とメイン球場を使わせてもらっています。隣でスワローズの選手が打撃練習をしたり、キャッチボールをしたりしていることもあって、そういう時には子どもたちに見学させます。見て覚えることも多いですから」と最敬礼。
「逆にスワローズの選手たちが『度会さん、僕らは子どもたちの練習が終わってからでいいですから、続けてください』と気を遣ってくれることもあるんです」とも。球界最年長選手となった45歳の石川雅規投手は毎年、「子どもたちに配ってあげてください」とTシャツやパーカーを差し入れてくれるという。
周囲がそういった協力をしたくなるのも、度会監督の人柄が大きく関わっていると見て間違いなさそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)