圧倒的な手数でピカソを凌駕した井上(C)Getty Images 豪快なKO勝利とはいかず、本人からも反省の言葉が漏れた…

圧倒的な手数でピカソを凌駕した井上(C)Getty Images

 豪快なKO勝利とはいかず、本人からも反省の言葉が漏れた。

 世界スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)は、現地時間12月27日にサウジアラビアのリヤドで行われた同級4団体統一タイトルマッチ12回戦で、WBC世界同級2位アラン・ピカソ(メキシコ)に判定勝ち(3-0)。相手に付け入る隙を与えない貫禄の試合内容で、激闘続きだった2025年のラストマッチを白星で飾った。

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 試合前にKO宣言もしていた井上は、タフなピカソを前に決定的な一打を放ち切れず。相手を158発も上回る総パンチ数328と手数で凌駕し、ポイントこそ奪い続けたが、どこか消化不良の感は否めなかった。実際、本人も試合後に独占生配信を行っていた『Lemino』のフラッシュインタビューで「ちょっと集中力に欠けるというか。まぁ自分自身は全く納得していない内容ではあります」と漏らしている。

 それでも負けなかった事実に変わりはない。しかも、井上はこれが年間4戦目。自ら「正直、疲れました」(『Lemino』のフラッシュインタビューより)と語る異例の過密日程をこなしきっての“完封勝ち”は、十分に評価すべきではないだろうか。

 もっとも、“ボクシングの本場”では、ピカソ戦を終えて、井上の評価が揺るぎないものへと昇華した印象もある。米ボクシング専門ポッドキャスト番組『Inside Boxing Live』でホストを務めるダン・カノッビオ氏は、「一部の人々は、ナオヤ・イノウエを、なおも批判し続けるだろう」と切り出した上で「だが、そんな連中は無視しろ。2025年に4戦全勝だ。彼ほどの脅威となる選手など存在しない」と貫禄の結果を絶賛した。

 また、フィラデルフィア在住のベテラン・スポーツライター、アダム・アブラモビッツ氏も、ほぼ休みなく戦い続けた25年の井上を、次のように評している。

「この試合の姿は、いわばイノウエの最新モデルだ。今は動きの方がずっと効率的なように思える。多少打たれてもあまり気にしない。戦いっぱなしで動き続けるのは負担が大きすぎるからだろう」

 本人の言葉からしても理想的な形での勝利ではなかった。それでも評価が大きく様変わりしないのは、井上の凄みを物語ってもいる。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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