<プロボクシング:4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇27日◇サウジアラビア・リヤド4団体統一スー…

<プロボクシング:4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇27日◇サウジアラビア・リヤド

4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥(32=大橋)が防衛に成功(WBAスーパー、IBF6度目、WBC、WBO7度目)した。WBC世界同級2位アラン・ピカソ(25=メキシコ)の挑戦を受け、3-0(122-108、119-109、117-111)で判定勝ちを収めた。2戦連続判定は自身初。世界戦27連勝は元世界ヘビー級王者ジョー・ルイス、元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(ともに米国)を超え、世界新記録となった。

試合後のインタビュー冒頭では「今夜はよくなかった。なんだかな、よくなかった。こんなんじゃまだまだ。1位にふさわしい選手になりたい」と険しい表情を見せた。

計画中の中谷戦に向けては「今夜、無事に互いに勝利できたことでまた来年はいろんな報告を含めて交渉したい。でも、日本の皆さん、期待はしていてください」と呼びかけた。

年間4度防衛成功は「偉業」となる。日本男子として具志堅用高が79年のWBA世界ライトフライ級王者時代に成し遂げて以来、46年ぶり2人目の記録。世界主要団体をすべてまとめた統一王者としても76年の元WBA、WBC世界ヘビー級統一王者ムハマド・アリ(米国)以来、49年ぶりのこと。またサウジアラビアと縁も深い創刊103年の歴史がある米老舗専門誌ザ・リング認定ベルトの年間防衛回数も83年の元WBC世界ヘビー級王者ラリー・ホームズ(米国)に並ぶ、42年ぶりの快挙となった。

32歳を迎え、体のメンテナンスには時間をかけている。サウジアラビアに帯同した専属トレーナーの山岸大介氏から現地入り後に連日、2時間30分ものマッサージを受けてきた。“過去最長”の時間をかけ、井上本人が選んだ粘度の良いマッサージオイルも使用し、最終調整してきた。今年4月10日の誕生日には「まだ32歳は若い。ここから3年が本当にピークに持っていける時期」と言う通り、年齢を超越したスピード、瞬発力、耐久力を保ちながら同級最強を示した。

ボクシング界の新たな中心地として世界中から注目されるサウジアラビアで、日本人世界王者初勝利も成し遂げた。同国総合娯楽超のトゥルキ・アラルシク長官(44)から挑戦者として指名されたピカソを撃破したことも大きい。同庁が推し進める政府直轄プロジェクトとなるリヤドシーズンとは推定30億円の複数年スポンサー契約を結んでいる。「来年も、そして年1回はサウジアラビアで試合をしたい」と井上。「中東決戦」でも最強の存在感を放ってみせた。

次戦は来年5月、自身2度目の東京ドーム参戦という大舞台が待っている。対決を約束してきたWBA、WBC、WBO世界同級1位中谷潤人(27=M・T)と拳を交えるのか。それともフェザー級に上げ、世界歴代3位タイで、日本男子初となる世界5階級制覇を達成するリングになるのか-。いずれにしても26年の井上からも目が離せない。

各ラウンドVTRと記者採点は次の通り

【1回】

ピカソはガードを高く掲げて、じりじりと前にでる。井上は軽快に足を使って、相手の動きを確認。左ジャブを多めに出した。ピカソは手数少なく、じっくりと距離を測った。井上10ー9ピカソ

【2回】

1回と一転して、激しいパンチの応酬となった。井上は鋭くパワフルなフックを放って、ピカソをガードの上から揺らす。ワイルドな右フックを何度も打ち込んだ。ピカソも左フック、右ストレート対抗。井上がピカソのバランスを崩すようなパンチを多く繰り出した。井上10ー9ピカソ

【3回】

井上は相手のガードの外側から右フック、そしてガードの間を抜く右ストレートを力を込めて打ち込む。ピカソは高いガードを崩さずに、鋭い左フックを上下にうちわけて応戦した。井上はアッパーを連打に差し挟み、角度を変えたコンビネーションを見せた。井上10ー9ピカソ

【4回】

井上がじりじりと前に出る。右フックから左ボディーフックを放った。左ボディージャブから右アッパーのコンビネーションも際どくピカソの顔面をかすめた。ピカソはガードを高くして、ストレートで応戦した。終盤には打ち合いも見せた。井上10-9ピカソ

【5回】

井上は左ボディーフックを効果的にヒットした。右フックと右ストレートを打ち分けて、ピカソのガードを崩しにかかる。ピカソはじりじりと前に出るが、ガードを高く掲げていて、なかなか手が出せない。井上は両手を腰あたりまで下げて、自在にパンチを放った。井上10-9ピカソ

【6回】

井上は序盤にピカソをロープにつめて連打。右フックをえさにして、右ストレートでガードの真ん中を打ち抜いた。左ジャブも鋭く伸ばして、ピカソの顔面をヒット。ピカソはワンツー、左フックで反撃するが、井上にあまりダメージを与えられない。井上はピカソのロープに詰めて連打する場面が増えた。井上10-9ピカソ

【7回】

井上はガードを下げて、じっくりと相手を見る。ピカソは左ジャブを重ねて、ボディーに右ストレートを伸ばす。井上は右フック、左ジャブを見せるが、動きが比較的少なくなった。井上10-9ピカソ

【8回】

井上はワンツーから左アッパー。左フックから左アッパーと多彩なパンチで攻めた。ピカソはガードを高くして防御を固めるが、その分、パンチが出なくなった。井上の右ストレートの打ち終わりに左フックをカウンターで当てたが、大きな影響はなし。井上は終盤に左ボディーフックを強烈に打ち込んだ。井上10-9ピカソ

【9回】

井上はロープにつめて4連打。ピカソはじりじり下がるが、機を見て左フックを放つが、井上にかわされる。井上は左ボディージャブ、右アッパー、左ボディーフックのコンビネーション。終盤には右ボディーフックを2発、左ボディーフックを3発きめた。井上10ー9ピカソ

【10回】

井上はアッパー3連発、左ボディーフックで攻めた。ピカソはわずかにバードを下げて、攻撃に出る。左ジャブをついて、左フックを上下に打ち分けた。空振りを気にせず、手数を多く出した。ピカソ10-9井上

【11回】

井上は左ジャブをついて前に出る。ジャブ→ワンツーを放つ。両手のガードを下げて、相手のパンチを上体の動きでかわした。終盤にはピカソと井上が打ち合いを展開。ともに鋭い防御勘で接近戦ながら、クリーンヒットはない技術の応酬となった。井上10-9ピカソ

【12回】

井上は、ロープを背負ったピカソにワンツーを打ち込んだ。ピカソは鋭い左ボディーフックを連発して圧力をかけていく。左フックを井上の顔を上げる場面もあった。最後はともに手数を出して打ち合いを展開。ピカソが手数を多く出して、最終のゴングを聞いた。ピカソ10-9井上

★井上の世界戦記録アラカルト★

◆連続勝利 27連勝で単独1位に到達。ジョー・ルイス、フロイド・メイウェザー(ともに米国)が26連勝で2位に並ぶ。

◆通算勝利 27勝で単独3位に。フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)が31勝で1位。オマール・ナルバエス(アルゼンチン)が28勝で2位。

◆最短KO 18年10月のパヤノ戦でマークした70秒(1分10秒)は日本男子歴代1位。

◆年4度防衛 79年の具志堅用高に並ぶ日本男子記録。統一王者としては76年の統一ヘビー級王者ムハマド・アリ(米国)以来、米老舗専門誌ザ・リング認定ベルトの年4度防衛も83年のラリー・ホームズ(米国)以来の歴代1位タイ。