<プロボクシング:IBF世界フライ級王座統一12回戦>◇27日◇愛知国際展示場◇観衆2800人IBF世界フライ級王者の矢…
<プロボクシング:IBF世界フライ級王座統一12回戦>◇27日◇愛知国際展示場◇観衆2800人
IBF世界フライ級王者の矢吹正道(33=緑)が壮絶な打ち合いを制し、初防衛に成功した。同級1位で元IBF世界ライトフライ級王者のフェリックス・アルバラード(36=ニカラグア)と対戦し、最終12回1分59秒、KO勝ち。食い下がる挑戦者を落ち着いた戦いで倒し、次に狙う統一王座や3階級制覇王者への道を切り開いた。
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王者矢吹が経験を生かした冷静な戦いでベルトを守った。
1回からアルバラードが距離を詰め、激しく打ち合う展開となったが、リング上の矢吹は落ち着いていた。打ち合う度合いを「想定の範囲内」とし、「自分の中で結構余裕があるつもりで戦っていたから、そこまで焦らなかった」と戦況を見きわめた。
序盤は「早くこっちの流れにしたいなと力んだ部分があった」と、果敢に前に出る挑戦者と打ち合うことになった。それでも「このハイテンポに付き合っていたら、自分が苦しい展開になる」と判断すると、4回からはペースダウン。「コツコツ当てることを意識した」という言葉通り、持ち前の高速ジャブやボディー、アッパーでの有効打を増やし、1度もダウン経験がなかったアルバラードを11回と12回に2度リングに沈めた。3月のアヤラ戦に続く最終12回でのKO勝利。会見場にアルバラード陣営の帽子をかぶって現れた王者は、目立った傷のない顔で「これが12ラウンドの世界戦っていう感じ」と胸を張った。
「立ち位置が問われる試合」と臨んだ防衛戦は「全然ダメですね。良かったのは結果だけ。首の皮1枚つながった感じ」と満足のいくものにはならなかった。それでも「伸びしろはある」と自身への期待も感じられた。
初防衛の先に目指すのは、フライ級での統一王座か、中谷潤人(27=M・T)以来となる日本人8人目の3階級制覇だ。この日の時点では「いい話があれば、どっちでもいい」とターゲットの明言は避けたが、新たなチャレンジへの意欲は隠さなかった。
この日は所属ジム松尾会長の誕生日だった。「知ったのは試合前だった」と笑ったが「勝ったら言おうと思っていた」という通り、試合後には会場に集まった観衆に78歳を祝う拍手を求めた。KO勝利という最高の結果を届けた人情味あふれる王者の道は、まだまだこれから。さらに大きなプレゼントをするための準備を進めていく。【永田淳】