ラグビーは「番狂わせが少ないスポーツ」と言われている。体格や経験の差が結果に出やすいからだ。 それでも第105回全国高…

 ラグビーは「番狂わせが少ないスポーツ」と言われている。体格や経験の差が結果に出やすいからだ。

 それでも第105回全国高校ラグビー大会では、慶応志木(埼玉第2)、名古屋(愛知第2)、岐阜聖徳学園の3校が高い壁を突破して初出場を決めた。

■岐阜聖徳学園「牛歩のように」、慶応志木「未経験者でも」

 岐阜聖徳学園のラグビー部は2003年に創部した。佐藤剛史監督は「17年は部員が1人になった」。中学生のクラブに飛び込んだり、在校生を熱心に勧誘したりと「本気で声をかけ続けた」。

 徐々に部員は増えていき、今年は34人に。「牛歩のように小さく刻みながら、確実に成果を上げていくやり方でした」。県大会決勝では全国大会出場43回を誇る関商工を28―17で破って、花園への切符をつかんだ。

 大会初日の27日、1回戦で隣県の強豪、中部大春日丘(愛知第1)と対戦した。

 試合開始直後に主将のCTB坂部遼河(3年)が右ひざを痛め、前半3分で途中交代を強いられた。

 双子の兄のWTB坂部太河(3年)は「今まで引っ張ってくれたキャプテンがいなくなったのはでかかった。でも、僕がお兄ちゃんなので、少しでも鼓舞できたら」と声を出し続けた。

 0―12で迎えた前半11分。40メートルのペナルティーゴールを決めて、チームとして全国初得点を刻んだ。

 主将の弟は「入ると思って安心して見ていた」。結果は3―69で敗れ、涙が止まらなかったが、「歴史を変えられたと思う」。

■慶応志木、部員の大半はラグビー未経験者

 創部68年目の慶応志木。部員43人のうち、4分の3ほどがラグビー未経験での入部だ。

 1回戦。青森山田を相手に、得意のモールでじりじりと攻め込む。

 竹井章監督は「走ったり、タイヤを引いたり、地道な体力トレーニングをすごくやる。それを我慢できるのは受験戦争で努力して結果が出るという成功体験をしているから」と分析する。

 「先輩を見て、きつい練習を嫌がらない文化ができた」。慶大からも練習サポートを受け、技術と知識を蓄えていった。

 ラグビー経験者で主将のCTB浅野優心(3年)は「同じ学年の仲間とは普段からラグビーの話をたくさんしてきた。未経験者でも自分で考えて動画を見てくれて、本当に成長しようとするところがある。逆に自分が学ばせてもらって、お互いに成長を支え合えた」と話す。

 慶大と同じ黒と黄のジャージーをまとって挑んだ初めての花園は、卒業生ら大応援団もかけつけ、観客席からあふれるほどに。後輩たちの背中を声援で押した。

 48―12での勝利に、竹井監督は「できすぎな感じ」と喜びをかみしめた。「(埼玉で)負け続けたことが大きかった。100点を取られても、少しずつ食らいついていくことをやってきた」。新しい歴史をつくり、しみじみと語る。

 浅野は「僕たちの目標は2勝。また対策を練って、強みのディフェンスとモールで戦いたい」。初の全国大会を年越しまで見据えていた。(室田賢)