【リヤド(サウジアラビア)27日=藤中栄二】IBF世界スーパーフライ級6位寺地拳四朗(33=BMB)が世界挑戦のドタキャ…

【リヤド(サウジアラビア)27日=藤中栄二】IBF世界スーパーフライ級6位寺地拳四朗(33=BMB)が世界挑戦のドタキャンに涙を流した。27日、サウジアラビア・リヤドで挑戦予定だった同級王者ウィリバリド・ガルシア(36=メキシコ)が26日午後の公開計量後、体調を崩して入院し、試合中止が発表された。これで寺地の世界3階級制覇挑戦はいったんご破算となった。試合会場となるムハマド・アブド・アリーナで取材対応した寺地はあふれた涙をぬぐった。

コンビを組む加藤健太トレーナーとともに報道陣の前に姿をみせた寺地は「まあショックです。ここで腐ってもしようがない。がんばるしかない」と消え入りそうな声で心境を明かした。前夜の午後10時には陣営に連絡が入り、同11時に寺地本人にも試合中止が伝えられたそうだ。

試合会場で興行を運営する英プロモート大手マッチルーム社やサウジアラビアのボクシングコミッションから王者ガルシアが脱水症状だったと説明を受けたという。加藤トレーナーは「前夜はマッチルームからの連絡は『試合ができなくなった』だけしかなかった。多分、こちらの憶測で(ガルシアが)脱水症状になったのだろうと想像した。計量後のリカバリーで失敗なら脱水か食中毒しかないだろうと。今の説明だと吐いたりもして脱水症状だったということだった」と話した。

サウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官(44)が寺地の試合中止を避けるため、中東地域にいる代替選手を探していたが、公式計量をしていない選手との対戦は危険が伴うため、加藤トレーナーは「具体的な試合の提案はなかった。(アラルシク長官の)お気持ちはありがたく受けとりましたが、現実的ではないし不可能。うかがいだけはきましたが、ルール的にも難しかった」と状況を説明した。

まだ寺地は気持ちの整理がついていない。「いろいろな気持ち。悔しいし、練習したことも出せない。もやもやが残るだけではある。落ち込んでもしゃあないしポジティブでいたんですけど、会場に来るとね、やっぱり…。いろいろ思いが出てしまう」と言葉を詰まらせた。

今後、サウジアラビアのボクシングコミッションを通じ、IBFには今回のてん末を説明する見通しだという。ガルシアの選択試合として組まれた世界戦。来年、再びマッチーメークされるかは今後のIBFの判断となる。寺地は「どう整理しても意味がないし、もうやるしかない。試合がきまればやりますし。待つだけかな」と胸の内を明かした。

◆寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)1992年(平4)1月6日生まれ、京都・城陽市出身。奈良朱雀高-関大。ボクシングは中3から。14年に元日本ミドル級王者の父・寺地永のBMBジムに入り、同年8月にプロデビュー。17年5月にWBC世界ライトフライ級王座を獲得し、その後8度防衛。21年9月に初めて王座陥落するも22年3月に矢吹正道にリベンジを果たして王座奪還。同年11月にはWBAスーパー、WBC同級王座統一。24年10月にWBC世界フライ級王座を獲得し、25年3月にはWBA、WBC世界同級王座統一し、井上尚弥に続く日本人2人目の2階級統一王者となったが、7月にサンドバルに敗れて王座陥落していた。