11月にノルウェーで開かれた最終予選で1位となり、ミラノ・コルティナ・パラリンピックの出場を決めたパラアイスホッケー日…

 11月にノルウェーで開かれた最終予選で1位となり、ミラノ・コルティナ・パラリンピックの出場を決めたパラアイスホッケー日本チーム。銀メダルを獲得した2010年のバンクーバー大会以降、直近の3大会のうち2大会で出場を逃すなど「暗黒時代」を経て、再び輝きを取り戻しつつある。その裏には、若手の発掘や、選手の意識改革、チームを支えるベテランの姿があった。

 11月6日、ノルウェー・イエスハイムであった最終予選2戦目のスロバキア戦。日本チームは第1戦で韓国に逆転負けし、この試合も終了直前まで1―2と敗戦の危機に立たされていた。6チームのうち2チームしか出場権を得られない。ここで負けるとほぼ絶望的になる状況だった。

■残り1分からの逆転勝利

 ピンチを救ったのは、19歳と20歳の若手と、ベテラン勢の連係だった。

 残り1分5秒で、FW伊藤樹(いつき)(20)が同点ゴール。タイムが終わって、試合が再開する直前、ベテランFW三沢英司(52)は若手のFW鵜飼祥生(19)から声をかけられた。「英司さん、自分が(フェースオフで)パックをとったらダンプ(相手陣地のコーナー深くにパックを放り込むこと)するんで行ってください」

 普段、口数が少ない若手の言葉が頼もしかった。鵜飼がパックを放つと同時に、全力で敵陣に突っ込んだ。

 三沢と伊藤が相手にプレッシャーをかけ、パックを奪った伊藤がゴール前にパス。相手キーパーがはじいたところを主将の熊谷昌治(50)が右サイドへ回り込み決勝ゴールを決めた。残り1分から逆転勝利した日本は、4チームが3勝1敗で並んだ最終戦でノルウェーに8―2で勝ち、パラリンピック出場を決めた。

■チームを支えてきたベテラン

 これまで日本チームはベテラン勢がずっと支えてきた。

 三沢の競技歴は約30年。98年の長野大会に出場。製紙会社に勤めながら競技を続けてきた。最終予選に出場した吉川守(55)、須藤悟(55)らとともに今も現役だ。ここ十数年は成績低迷が続き、競った試合でも「また負けてしまうのでは」というネガティブな感情が湧き、終盤に逆転されることも多かった。それを打ち破ったのが、10代、20代の若手選手だった。

■技術を学んだ若手選手が合流

 エースに成長した伊藤は、幼稚園のころから健常者のアイスホッケーをやっていた。9歳の時に交通事故で脊髄(せきずい)を損傷。翌年からパラアイスホッケーを始めた。地元大阪のチームで経験を積み、中学1年生から日本代表合宿に参加するようになった。