静岡ブルーレヴズのSH北村瞬太郎選手(文:大友信彦)NTTジャパンラグビー リ…

静岡ブルーレヴズのSH北村瞬太郎選手
(文:大友信彦)
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26は開幕から熱戦が続いている。
開幕節で話題を呼んだのは2連覇中の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)が初戦で埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)に0-46というビッグスコアで敗れたことだ。昨季はディビジョン1(D1)ではプレーオフトーナメントを含めて完封ゲームが1試合もなかった。D1の完封ゲームは2023-24シーズンの第8節、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)がリコーブラックラムズ東京(BR東京)を62-0で破って以来だった。このシーズンは第2節にクボタスピアーズ船橋・東京ベイが75-0で三重ホンダヒートを、第2節に埼玉WKが花園近鉄ライナーズを49-0で破っていて、完封ゲームは3試合あった。今季はまた完封ゲームが出現するかどうか?
さて、当コラム的には、開幕からの2節で、ひそかに生まれていた大記録を紹介したい。それは静岡ブルーレヴズ(静岡BR)のSH北村瞬太郎による連続試合トライ記録だ。
北村は昨季第15節のBL東京戦から第16節の横浜キヤノンイーグルス(横浜E)戦、第17節の浦安D-Rocks(浦安DR)戦、第18節のコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)戦、プレーオフトーナメント準々決勝の神戸S戦と5試合連続トライを続けたままシーズンを終えていて、今季も開幕の横浜E戦では後半2分に、第2節のBL東京戦では前半28分にトライ。連続試合トライ記録を「7」に伸ばした。
これは、リーグワンにおける連続試合トライの「最長タイ記録」だ。

NTTリーグワン2023-24シーズン ネイサン・ヒューズ選手(BR東京/当時)
筆者の調べでは、リーグワンのこれまでの最長記録は、2022-23シーズンから2023-24シーズンにかけてBR東京のNO8ネイサン・ヒューズが記録した「7」だった。
ヒューズは22-23シーズン第12節の静岡BR戦で2トライ、続くBL東京戦で1トライを挙げると、続く埼玉WK戦とトヨタヴェルブリッツ(トヨタV)戦は途中出場でそれぞれ1トライ、2トライをあげ、最終節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)戦では3トライのハットトリック。シーズンをまたぎ、2023-24シーズン初戦のトヨタV戦、続く相模原DB戦でも連続トライを続けた。ヒューズはフィジーにルーツを持ち、イングランド・プレミアシップのワスプス、ブリストル、バースで活躍、イングランド代表でも22のテストマッチに出場。BR東京では2022-23シーズンから活躍し、昨季(2024-25シーズン)は新たに導入されたシーズン途中の期限付き移籍で浦安DRへ移り、そこでも入替戦を含む3試合連続トライを決めた決定力の持ち主だが、リーグワンの連続試合トライ記録も持っていたのだ。

NTTリーグワン2022 ディラン・ライリー選手(埼玉WK)
実はリーグワンで7試合連続トライを達成した選手はもうひとりいる。埼玉WKのCTBディラン・ライリーは、リーグワン初年度となった2022シーズン、埼玉WKの初戦となった第3節の横浜E戦、続く第4節の神戸S戦で連続トライ。ライリーはその前年、ジャパンラグビー トップリーグ最後のシーズンにリーグ戦最後のヤマハ発動機ジュビロ戦、順位決定戦の近鉄ライナーズ戦、キヤノンイーグルス戦、準決勝のトヨタ自動車戦、決勝のサントリーサンゴリアス戦で連続トライを決めていて、トップリーグからリーグワンにかけて、7試合連続トライを達成していたのだ。ちなみにライリーの連続記録は2022シーズン第5節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(浦安SA)戦のノートライで途切れたが、その後再び4試合連続トライをあげていた。浦安SA戦で1トライをあげていれば、12試合連続トライと言うとてつもない記録が生まれていたことになるのだ…。

「トライは、たまたまスペースが空いた時に押さえただけですから」(北村瞬太郎選手)
北村は第2節のBL東京戦のあと、連続試合トライがリーグワン記録に並んだことを伝えられると「そうですか、知りませんでした」と言うと「トライは、たまたまスペースが空いた時に押さえただけですから。レヴズの躍動があっての自分のトライだと思っています」と、自身の記録についてはクールに反応した。北村は静岡BRに入団した昨季当初は自分でトライを取ってアピールしようとしていたが「自分でトライを取って目立とうとするようなヤツは一生使わない」と藤井雄一郎監督に強烈なダメ出しを食らい、トライ狙いを封印してレギュラーポジションを獲得。しかし実際に試合に出始めると、狙うのをやめたはずのトライを量産したというのが面白い。
「藤井さんには『パスをさばいていればそのうちスペースが空くから』と言われて、そんなことあるか? と思っていたら、本当にそうでした」
その気持ちは今も変わっていないというから、本人は連続試合トライ記録の更新にも関心はなさそう。だが一応、上の記録も紹介しておく。トップリーグ時代の連続試合トライ記録は、2009年度にサントリーサンゴリアスの小野澤宏時が樹立した「9」があった。今回北村が達成した「7」は、トップリーグ時代は2010年度に小野澤が、2012年度に山田章仁(パナソニック ワイルドナイツ)とジャック・フーリー(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)が、2017年度にホセア・サウマキ(キヤノンイーグルス)が、2019年度から20年度にかけてマロ・ツイタマ(ヤマハ発動機ジュビロ)が達成している。前述のヒューズとライリーの記録も「7」で止まっているところを見ると、連続記録において「7」はなかなか超えにくい数字なのだと感じてしまう。かつて国内シーンで黄金時代を築いた新日鉄釜石、神戸製鋼の日本選手権連覇記録も「7」でピリオドを打った。他競技を見ても、プロ野球の連続試合ホームラン記録は1972年の王貞治選手、1986年のランディ・バース選手の「7」が最多。Jリーグの連続試合ゴール記録は1997―1998年にかけて横浜Mのフリオ・サリナス選手が達成した「8」だが、以後8選手が1差まで迫ったものの「7」で止まっている。
連続記録の大きな壁である「7」。静岡ブルーレヴズの北村選手がその壁を突破できるか? そして小野澤のトップリーグに迫ることができるか?
神戸Sの山下裕史選手の通算200試合出場という偉業達成が期待されるリーグワン2025-26第3節の隠れたトピックである。