新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退」が1月4日に東京ドームで行われる。“…
新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退」が1月4日に東京ドームで行われる。“100年に1人の逸材”として団体を引っ張り、現役を引退する棚橋弘至(49)が運命の1・4を迎える。チケットが全席完売となった大注目の大会を前に、棚橋の激闘10選を10回にわたって振り返る。3回目は2009年1月4日、東京ドームでの棚橋vs武藤。
<棚橋弘至・激闘10選:第3回>◇2009年1月4日◇東京ドーム
師匠を倒し新日本の至宝を奪い返した。IWGPヘビー級選手権試合で、挑戦者の棚橋弘至(32)が王者・武藤敬司(46=全日本)を30分22秒、ハイフライフロー2連発からの片エビ固めで撃破した。棚橋は武藤が新日本在籍時の最後の付け人。プロレス界をけん引する師匠から3度目の対戦で初めてフォールを奪い、1年ぶり3度目の王座返り咲きに成功した。
武藤という大きな壁に向かって、棚橋が飛んだ。右ふくらはぎのけいれんによる痛みをこらえ、東京ドームに舞った。武藤の必殺技シャイニングウィザードからの月面水爆を間一髪かわし、こん身のハイフライフロー2連発。レフェリーの3カウントが鳴り響くと、会場のファンが総立ちになった。「リング上はもっと孤独と思ったが、皆さんの声援が心に染みました」と絶叫した。
02年に武藤が新日本を退団。最後に付け人を務めた棚橋は、「一緒に全日本に行かないか」の誘いを断り、「新日本LOVE」を貫いた。00年に故橋本真也さんが解雇されたのに続くトップ選手の退団で、新日本の興行は苦戦が続いた。そんな中で棚橋は頭角を現した。06年7月に念願のIWGP初戴冠を果たした。4度防衛は武藤退団後では永田の10度に続く長期政権だった。「おれが新日本を支えてきた自負がある」。新日本の菅林社長から外部流出した王座を取り戻すべく次期挑戦者に指名され、打倒「全日本」武藤に燃えた。
妹の由樹子さん(28)の結婚も刺激になった。昨年11月24日、名古屋で行われた披露宴に出席。自ら蝶野、中西、永田、天山らのお祝いコメントをビデオで編集して持参した。「いつも格好いいお兄ちゃんでうれしい」と言われ、涙を流した。この日は師匠超えでの至宝奪還という最高の結末で、観戦した妹に晴れ姿を見せた。
昨年は左ひざ前十字靱帯(じんたい)断裂の影響でスランプに陥った。会場のブーイングに悩んだ日もある。だが、苦難を乗り越えた男に、プロレスの神様はほほ笑んだ。棚橋が手にした同王座は、初代アントニオ猪木から数えて節目の50人目。「すべてをさらけ出した王者になりたい」。プロレス界の世代交代という重責を担い、新王者は笑みを見せた。
<注>当時の記事をリメーク。記事中の年齢、肩書などの表記は当時のものを使用。