サッカーで一番盛り上がるのはゴールシーンであり、点を取る選手にスポットライトが当たりがちだ。だが、今季のJリーグMVP…

 サッカーで一番盛り上がるのはゴールシーンであり、点を取る選手にスポットライトが当たりがちだ。だが、今季のJリーグMVPは得点を防ぐGKだった。サッカージャーナリスト大住良之が深掘りすると、強いチームとGKの切っても切れない関係が浮かび上がってきた。

日本代表の実力を証明

 ともに今季フルタイム出場でチームを支えた4位サンフレッチェ広島大迫敬介と5位ヴィッセル神戸前川黛也は2人とも日本代表歴があり、「エリートGK」と言っていい。前川は父・和也も日本代表で1992年のアジアカップ初優勝時の「優勝GK」。大迫は日本代表でも鈴木彩艶(パルマ)とポジションを争う実力派として知られ、Jリーグを代表するGKと言っていい。日本代表がアウェーでドイツ代表に4-1で勝った試合(2023年)では、大迫がゴールを守っている。

 6位FC町田ゼルビアでは、谷晃生が安定感のあるGKとして大きく成長した。日本代表の座を大迫と争っていた谷だが、今年のパフォーマンスならば代表に呼び戻されても不思議はない。7位浦和レッズ西川周作は、1986年6月18日生まれ、今季のJ1のレギュラークラスのGKでは最年長だが、2022年から指導を受けたスペイン人GKコーチ・ジョアン・ミレッの下で大きく成長し、まったく衰えは見えない。

 8位川崎フロンターレでは昨年町田から期限付き移籍し、今季は完全移籍となった山口瑠伊が昨年までのレギュラーだった鄭成龍(チョン・ソンリョン)を押しのけ、シーズンを通じてゴールを守った。フランス人を父に持つ山口は、FC東京のアカデミーで育ち、フランスとスペインのクラブで経験を積んだ後にJ2の水戸ホーリーホックに移籍、昨年は町田に所属した。

■下位チームに共通する悲劇

 9位のガンバ大阪一森純は、セレッソ大阪のアカデミーから関西学院大学を経てプロになり、JFL、J3、J2を経由して2020年にG大阪に移籍。しかし、絶対的守護神の東口順昭の牙城を崩せず、横浜F・マリノスへの期限付きを経て、ようやく昨年レギュラーとなった。現代のGKとしては「小さな」選手だが、闘志あふれるプレーはG大阪のスタイルによく合っていた。

 10位以下のチームでGKを固定できたファジアーノ岡山(スベンド・ブローダーセン)と東京ヴェルディマテウス)を除くと、下位チームでは多くが固定したGKで戦えなかった苦しさを露呈した。11位FC東京はレギュラーだった野澤大志ブランドンをシーズン半ばの欧州への移籍で失い、6月にサウジアラビアのアルシャバブから獲得した金承奎(キム・スンギュ)のコンディションが整うまで苦労を余儀なくされた。

 湘南ベルマーレは昨年半ばに川崎から移籍した上福元直人に「守護神」の座を託したが、6月にアキレス腱断裂という大ケガで離脱し、同時期にDF鈴木淳之介や畑大雅といった主力の流出もあって降格を余儀なくされた。

 昨年まで7シーズンにわたってゴールを守り続けてきたミッチェル・ランゲラックを失った名古屋グランパスは、ベルギーから日本代表GKシュミット・ダニエルを獲得してその穴埋めをしたはずだった。しかし開幕前に右膝を負傷して計算が外れ、19歳のピサロアレクサンドレ幸冬堀尾が代役に立ったものの、FIFA U-20ワールドカップ出場でチームを離れたのが痛かった。

■GKの進化の証明

 全般的に見れば、今季のJリーグは、GKのレベルが一段と高くなった印象がある。ゴールキックからのビルドアップに加わるなど、10年前と比較すると攻撃面のタスクが格段に増えている現代のGKだが、そうした「足元」の技術だけでなく、「本職」のゴールを守るシーンでも、早川友基で見るように、高いレベルで基本どおりのプレーが実行されるようになっているのだ。

 今季全380試合で生まれた得点は911。1試合平均2.397は、J1リーグでは過去最少である。昨年は合計1013点、1試合平均2.666点だったから、大幅な減少と言える。その背景は単純ではなく、3バックの増加、ポゼッションスタイルの減少など、さまざまな要因が考えられるが、「GKの進化」も無視することのできない要素だったはずだ。

 2025年のJリーグにおいてGKがいかに大きな要素であったか―。そして、そのシーズンの年間最優秀選手が鹿島アントラーズGK早川友基であったことの必然性を、あらためて思うのである。

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